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10月28日、イランの首都テヘランで行われた抗議デモ  Photo by WANA (West Asia News Agency) via REUTERS

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ニューヨーク・タイムズ(米国)

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Text by Roger Cohen

「セックステープ流出事件」で中傷の標的にされた後、イランを離れてフランスに亡命したザール・アミール・エブラヒミが、祖国で拡大する女性たちの抗議運動について語る。

抵抗の血が流れることになるけれど


「その恐怖や屈辱を私は知っています」

今年のカンヌ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞したザール・アミール・エブラヒミ(41)は言う。

「イランでは、男性が権力を使って女性を黙らせていることを私は知っています」

パリでインタビューに応じたザール・アミール・エブラヒミ   Photo by Elliott Verdier/The New York Times


イラン人のエブラヒミは2008年に自身の性生活をめぐって中傷の標的にされ、祖国を離れる決意をした。フランスに亡命し、現在はパリで暮らしている。

いまイランの女性たちが国の抑圧に抗議してスカーフを燃やすなか、エブラヒミ自身の経験と、カンヌ受賞作『Holy Spider』(原題)で彼女が演じた役柄が強烈に交錯しているようにみえる。

調査報道ジャーナリストのラヒミを軸に展開する同作品は、男性の暴力に直面した女性の抵抗の物語だ。その脚本は、イランの宗教都市マシャドで実際に起きた、売春婦を狙った連続殺人事件に基づいて書かれた。犯人サイード・ハナエイの罪を覆い隠す男たちの世界に入り込もうとするラヒミを、果敢に、時に痛ましいほど密に描き出している。

「私たちはこの物語を終わらせる必要があります」と、パリで行われた75分間のインタビューで、エブラヒミは淡い色の目を情熱的に輝かせて言った。

「このイスラム共和国を終わらせなければなりません。今の女性は自分の権利を知っています。生きることや表現の自由が何であるかを知っています。時間がかかり、血も流れることになりますが、それ以外に方法はありません」


セクシュアリティに取りつかれている


デンマークのコペンハーゲンを拠点に活動するイラン亡命者のアリ・アッバシが監督を務めた『Holy Spider』の制作も、時間がかかり、柔軟な対応を迫られた。イランでの撮影は政府から敵視されていたため不可能で、トルコで数ヵ月にわたって撮影準備をしたが、イランから圧力を受けたとみられるトルコ当局に妨害され、無駄に終わった。

さらに、ラヒミ役に決まっていたイラン人の若手女優は、ヨルダンでの撮影が始まろうとしていた矢先、報復を恐れて突然出演を辞退した。

「彼女にとても腹が立ちました」と、当初は同作のキャスティングディレクターだったエブラヒミは話す。「私が怒りを爆発させた夜に、アリが私のなかに何かを見たのだと思います」

そうした追い詰められた状況で、2000年代前半にイランのソープオペラで人気を得たエブラヒミが主役を引き受けることになった。

監督のアッバシは、イランとその指導者の「神権主義的で感情を表に出さず、非常に保守的」というイメージに挑戦したかったと語る。より深いレベルでは「彼らはセクシュアリティに取りつかれている」とアッバシは言い、イランという国は当局が「女性を辱めることにある種の快感を得ている」と指摘する。

「(イラン・)イスラム共和国のあらゆる側面に、フェティシズム的で抑圧されたセクシャリティという、デビッド・リンチ的な底流があります」
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