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「おむすび」結(橋本環奈)からの逆プロポーズ【65回】

続・朝ドライフ

「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら

2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。

平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第65回を紐解いていく。

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翔也が糸島へ

スナックひみこで永吉(松平健)の「君といつまでも」を聞いて、「幸せ」について考えた結(橋本環奈)。夕食を自分で作ると申し出ます。

佳代(宮崎美子)は豚肉と玉ねぎのにんにく炒めを希望。それは、高校時代、結がはじめて作った料理でした。翔也(佐野勇斗)のために何かしたいと思って、スタミナをつけたいという彼の希望に合った料理にしたのです。なつかしいですね。回想の丸刈りの翔也も初々しい。

サラダにはトマトを。それは翔也とはじめて会ったとき、結が持ち歩いていた、家でとれたものでした。
ドレッシングはヨーグルトにイチゴジャムを混ぜます。イチゴは翔也が栃木の実家から送ってくれたものを結に大量にくれた思い出があります。糸島もイチゴの産地ですが、翔也は栃木のイチゴ推しでした。

料理をしながら、翔也との思い出がめくりめく結。すると思わず涙が出てきて……。

と、そこへ、永吉が帰ってきたと思ったら、翔也が立っていました。
傍らで微笑む佳代。たぶんこれも歩(仲里依紗)が仕組んだことなのではないでしょうか。
大阪のバーで歩に喝を入れられ、パラパラを踊り、ギャル魂をようやく理解したらしい翔也は結ともう一度向き合おうと糸島にやって来たのです。情熱的〜。翔也ってもともとは短絡的で熱血タイプですからね。

気を利かせた佳代が永吉を迎えに行くと席を外し、結と翔也がふたりきり。
結は翔也に怒った理由をしみじみ長々と語り、
「うちと…結婚してください」と逆プロポーズします。

結がなぜ翔也にムカついたかといえば、翔也が一方的に、結を幸せにできないから別れると考えたことでした。男性が女性を幸せにすると決まっているわけではなく、ふたりで幸せになりたい。それに、プロポーズが男性からと決まっているわけではない。だから結から改めてプロポーズしたわけです。

そこに至る前に結は、永吉の歌と佳代ののろけ(第64回)をさんざん聞かされ(さらにその前に陽太と恵美の幸せオーラにも当てられています)、ふたりで寄り添う幸せという形に洗脳されていますので、いろいろあってもふたりで幸せというイメージに飲み込まれています。
これまでの自分がいかに未熟な態度であったかも反省し、言語化し、見事にポジティブな方向へ舵を切りました。

翔也は翔也で、男が女性を経済的に面倒みる(幸せにする)という昔ながらの考え方から、経済的に不安だと結婚できないという思い込みを、歩の言葉で払拭し、いまを楽しむという発想に切り替えているので、ふたりで幸せになりたいと言われて満たされたことでしょう。

結の翔也に対する感情を理路整然とさせたい欲求はありますが、理屈では片付かないものなので、諦めます。感情ってあっちいったりこっちいったり、からまっているものですから。
この瞬間、めでたしめでたし、であればそれでいい。これぞギャル魂?

結が並べた、永吉、佳代、結の3セットのお皿のセットに、もうワンセットお皿が食卓に増えて、家族が増えることを暗示するような画面になりました。
このあと、永吉と佳代と結と翔也、4人でおいしく楽しくご飯を食べたんだなと想像すると、心あたたまります。

たぶん作り手側は、この回、ジェンダー平等を描いていてすばらしい! 結の自立心やよし! とSNSで盛り上がると予想していたことでしょう。そして、経済的不安によって結婚を躊躇する若い世代に、そんなこと気にしないで、結婚し子どもを作ろうという啓蒙もできたと満足したことでしょう。
幸せな気分で24年が締めくくれたと思ったことでしょう。

余談ですが、「ギャル魂」とか「ギャルなめんな」というワードを聞いて、「刑事(デカ)魂なめんな」(「SPEC」)を思い出しました。こういうワードは永遠なのだと思います。

25年も朝ドライフを楽しめますように。良いお年を。

(文:木俣冬)

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–{「おむすび」第13週あらすじ}–

「おむすび」第13週あらすじ

第13週「幸せって何なん?」 12/23-12/27
翔也は怪我でまともに投球できなくなり、結がいる関西を離れ実家の栃木へ帰る。聖人(北村有起哉)からそっとしといてやれと言われ、結は翔也を気にしないよういつもより仕事に集中するが、1週間経っても翔也から何の連絡も来ない。そんな折、立川が結に、栄養士の視点で献立を作ってレシピを見直すよう言う。同僚の原口 は、結の頑張りがようやく評価されたと喜び、二人で新たな仕事に邁進していく。

–{「おむすび」作品情報}–

「おむすび」作品情報

放送予定
2024年9月30日(月)より放送開始

出演
米田結(よねだ・ゆい)/ 橋本環奈
『おむすび』の主人公。平成元年生まれ。 自然豊かな福岡県・糸島で、農業を営む家族と暮らしている。 あることがきっかけで、人々の健康を支える栄養士を志すようになる。

【結の家族・米田家の人々】

米田歩(よねだ・あゆみ)/ 仲里依紗
主人公・結の8つ年上の姉。
福岡で“伝説のギャル”として知られる。 奔放な振る舞いで米田家に波乱を巻き起こすが、ギャルになった裏にはある秘密が…。
主人公・結の父。 娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田聖人(よねだ・まさと)/ 北村有起哉
主人公・結の父。
娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田愛子(よねだ・あいこ)/ 麻生久美子
主人公・結の母。
結の祖母・佳代と家事をしながら、聖人の営む農業を支えている。 絵を描くのが得意。

米田永吉(よねだ・えいきち)/ 松平健
主人公・結の祖父。
野球のホークスファンで、自由奔放な“のぼせもん”。 困っている人がいたら放っておけない、情に厚い性格。

米田佳代(よねだ・かよ)/ 宮崎美子
主人公・結の祖母。
古くから伝わる先人たちの知恵に明るく、結が困った時の良きアドバイザーでもある。

【福岡・糸島の人々】

四ツ木翔也(よつぎ・しょうや)/ 佐野勇斗
福岡西高校に野球留学中の高校球児。
四ツ木という姓と眼鏡姿から「福西のヨン様」と呼ばれている。 糸島に練習場があり、結と時々出くわす。栃木県出身。

古賀陽太(こが・ようた)/ 菅生新樹
結の幼なじみで高校のクラスメイト。野球部員。
父は糸島の漁師だが家業を継ぐ気はなく、IT業界を目指している。 ある約束により、結のことを何かと気にかけている。

風見亮介(かざみ・りょうすけ)/ 松本怜生
書道部の先輩。
結にとって憧れの存在。 書道のイメージを一新するような書家を志している。

宮崎恵美(みやざき・えみ)/ 中村守里
結のクラスメイトであり、高校での最初の友達。
結を熱心に書道部へと誘う。 派手なギャルが苦手。

真島瑠梨(ましま・るり)<ルーリー>/ みりちゃむ
結の姉・歩が結成した「博多ギャル連合」(略してハギャレン)の、現在の総代表。
ハギャレンの復興を目指している。

佐藤珠子(さとう・たまこ)<タマッチ>/ 谷藤海咲
ハギャレンのメンバー。
子どものころからダンス好きで、ハギャレンではパラパラの振付を担当。 筋が通らないことを良しとしない、一本気タイプ。

田中鈴音(たなか・すずね)<スズリン>/ 岡本夏美
ハギャレンのメンバー。
結と同い年で、いつもスナック菓子を食べている。 手先が器用で、ネイルチップ作りが趣味。

柚木理沙(ゆずき・りさ)<リサポン>/ 田村芽実
結のクラスメイト。
学校では校則を守るおとなしい女子高生だが、実は隠れギャル&ハギャレンメンバーでもある。ギャルの歴史を本にすることが夢。

ひみこ / 池畑慎之介
糸島の「スナックひみこ」の店主。
年齢、性別、経歴、すべてが不詳の謎の人物。 糸島の住人一人一人の事情をなぜか把握している。

草野誠也(くさの・せいや)/ 原口あきまさ
糸島の商店街で陶器店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

古賀武志(こが・たけし)/ ゴリけん
結の幼なじみ・陽太(ようた)の父親。
糸島で漁師をしている。

大村伸介(おおむら・しんすけ)/ 斉藤優(パラシュート部隊)
糸島の商店街で薬店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

井出康平(いで・こうへい)/ 須田邦裕
結の父・聖人(まさと)の幼なじみ。
糸島の農業を何とかしたいと日々奮闘している。

佐々木佑馬(ささき・ゆうま)/ 一ノ瀬ワタル
結の姉・歩と行動を共にする“自称・米田歩のマネージャー”。

大河内明日香(おおこうち・あすか)/ 寺本莉緒
結の姉・歩と対立していた、元天神乙女会のギャル。

飯塚恭介(いいづか・きょうすけ)/ BUTCH
福岡県博多のカフェバー「HeavenGod」の店長。


根本ノンジ

音楽
堤博明

主題歌
B’z「イルミネーション」

ロゴデザイン
大島慶一郎

語り
リリー・フランキー

制作統括

宇佐川隆史、真鍋 斎

プロデューサー
管原 浩

公式サイト

振り幅が広すぎる「韓国産ホラー映画」おすすめ5選<『怪談晩餐』公開中!>

金曜映画ナビ

ここ数年のホラー映画ブームは目を見張るものがあり、復調の兆しを見せるJホラーだけでなく、ハリウッドや台湾、タイなど世界各地のホラー譚が観客を震え上がらせている。

7月19日に公開を迎えた『怪談晩餐』も、お隣り韓国からやってきたホラー映画。韓国映画といえばノワールアクションや『パラサイト 半地下の家族』のようなサスペンス映画が定番だが、以前からホラー映画の良作も多い。

そこで今回は、『怪談晩餐』も含めて夏の夜にぴったりな「韓国産ホラー映画」5作品を紹介していこう。

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1:『怪談晩餐』

■「恐怖」の方向性が異なる6つの物語

(C)2023[TOYOU’S DREAM INC.& STUDIO TOYOU.] All Rights Reserved.

カカオウェブトゥーンで連載され、Z世代やα世代から絶大な支持を得たホラー漫画を原作に、6つの物語が映画化された本作。

“願いが叶うダンス”に頼るあまり禁忌に手を出してしまった若者の悲劇を描く「ディンドンチャレンジ

ドッペルゲンガーに教わった“成績アップの秘訣”が残酷かつ驚愕の結末へと導く「四足獣

“いわくつき”のモーテルにたどり着いた“ワケあり男”の顛末を見届ける「ジャックポット

“ある事故”をきっかけに、絶対に破ってはいけないルールが設けられた「入居者専用ジム

危険なウイルスに感染した消防士に課されたリハビリ…… やがて残酷な真実が明らかになる「リハビリ

大食い配信者同士の思惑が醜いほどに絡み合い、生理的嫌悪感を誘発する現代ホラー「モッパン

いずれの作品もそれぞれに個性を打ち出しており、似たようなストーリーはひとつとしてない。ゴア描写も辞さないエピソードもあり、クラシカルホラーから現代の寓話、SF的な設定までテーマ性は幅広い。言うなれば韓国版「世にも奇妙な物語」といったところか。

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また本作はホラーという共通項以外に、登場人物たち(主人公あるいはサブキャラクター)の「エゴ」が根底にある点にも注目してほしい。身勝手な行動が悲劇を招くことがあれば、傲慢さが悲劇を生むこともあるのだ。

いずれも気合の入った力作ばかりだが、個人的に「短編で終わらせるのはもったいない」と感じたのが「四足獣」。過剰な描写には走らず観客に想像させる血糊表現、主演シン・ウンスの闇堕ちしていく怪演ぶり、そしてタイトルを回収する終盤のウンスの仕草に思わずぞくりとしてしまった。

2:『オクス駅お化け』

■日本からホラーマスター・高橋洋&白石晃士参戦!

(C)2023, MYSTERY PICTURES & ZOA FILMS, ALL RIGHTS RESERVED

お世辞にも清潔感があるとはいえない、むしろ薄汚れた感のある地下鉄駅。人気のないホームに立つ体を反り曲げた人物。もうポスタービジュアルの段階でおどろおどろしい。

本作は『リング』シリーズでお馴染み高橋洋が共同脚本を手掛け、『貞子vs伽椰子』の白石晃士が脚本協力として参加した日韓合作ホラー。『オクス駅お化け』というタイトルも怪談に慣れ親しんだ日本人にとって絶妙なネーミングといえるだろう。

2011年に発表された短編ウェブトゥーンを原作にした本作。「オクス駅」とはソウルに実在する駅であり、本編でも描かれる地下の廃駅も実在しているという点が生々しい肌触りを生み出している。

(C)2023, MYSTERY PICTURES & ZOA FILMS, ALL RIGHTS RESERVED

物語はキム・ボラ演じる記者ナヨンが“ある人身事故”の取材を始めたことがきっかけで動き出し、「線路に子供がいた」という目撃証言や「口にしてはいけない数字」といった不可解な情報が次々と提示されていく。やがてオクス駅にまつわる怪異をめぐり、思わぬ“根源”へたどり着くことに……。

さすが高橋洋脚本とあって、大元の都市伝説に「呪い」「凄惨な死」「謎解き」「呪いを回避するルール」といった『リング』にも通じる要素が散りばめられているところに思わずニヤリとしてしまう。

もちろん韓国映画らしさもしっかり出ており、Jホラーのようであり韓国ホラーでもあるハイブリッドな作品となった。

▶︎『オクス駅お化け』を観る

3:『ワーニング その映画を観るな』

■呪われたホラー映画がもたらす終わらない恐怖

(C)2019 THE CONTENTS ON All Rights Reserved

映画の中で映画が描かれる作品といえば、名作『ニュー・シネマ・パラダイス』や伊藤万理華主演の『サマーフィルムにのって』、スマッシュヒットを記録した『今夜、ロマンス劇場で』など挙げ出してみると意外に数は多い。

主にドラマ作品で効果を発揮する劇中作の仕掛けだが、実はホラー映画こそ最も効果を発揮するジャンルではないだろうか。本作も『その映画を観るな』というタイトルが示すとおり、作中では「呪われたホラー映画」がひとつのテーマとなる。

ある学生が監督したその作品は、上映時に観客の大半が逃げ出し心臓発作で死人まで出たと伝えられているほど。そんなホラー映画に新人映画監督ミジョンが(よせばいいのに)興味を抱き、新作映画のネタにと調査を開始したことから、禁断の扉が開いてしまう。

(C)2019 THE CONTENTS ON All Rights Reserved

本作はソ・イェジ演じる主人公が映画監督であること、呪いの映画をテーマにしていること、さらに映画館が要所要所で舞台となることから、“映画好き”にこそ楽しんでほしい1本。Jホラー『女優霊』にも通じるところで、「映画づくりの雰囲気を知っている」からこそ、その恐怖を身近に感じられるはずだ。

イェジはその後サスペンスミステリー『君だけが知らない』でも好演を見せ、呪いの映画を監督した男を演じるチン・ソンギュは『エクストリーム・ジョブ』や『マイ・スイート・ハニー』のコメディ演技でもお馴染み。

本編尺86分と比較的短い作品ながら、その分ぎゅっと凝縮された恐怖をじっくり味わってみてはいかがだろう。

▶︎『ワーニング その映画を観るな』を観る

4:『カル』

■この謎は一度観ただけでは解けない

南北朝鮮の緊張を描いた『シュリ』の爆発的ヒットで改めて注目を集めた韓国映画。その『シュリ』で主演を務めたハン・ソッキュが主人公のチョ刑事を演じた『カル』では、ソウルで発見された複数のバラバラ死体が観る者を出口の見えない迷宮へと誘っていく。

直接的なゴア描写や出血描写が多く、振り続ける雨が事件の真相を押し流してしまうような、『セブン』にも似た雰囲気のハードゴア・スリラーだ。

事件の鍵を握る人物として浮上するのは、シム・ウナ演じる儚げな美しさを湛えたチェ・スヨン。見つかった被害者が全員スヨンと恋愛関係にあったことが判明する一方、犯行動機が読めなかったり被害者の欠落した部位が見つからなかったりと、警察の捜査は行き詰まることに──。

連続バラバラ猟奇殺人を描いた本作は、「ある程度の輪郭」こそ真相編で明かされるものの、すべての「答え」が提示されるわけではない。そのモヤモヤ感が本作の評価を分けてもいるが、繰り返し観ることで真相にたどりつくというチャン・ユニョン監督の思惑がなんとも心憎い。

少なくとも超常現象やオカルト要素はないので“そういった類のホラー”ではないものの、やはり猟奇殺人を主題としたゴア描写や作品全体を支配する陰鬱な雰囲気はホラー映画に通じるものがある。

我こそはというミステリファンは、ぜひ真相解明に挑んでほしい。

5:『箪笥<たんす>』

■悲哀感が漂うクラシカル・ホラーの秀作

精神科病棟の少女。湖畔に佇む屋敷を訪れたふたりの姉妹。屋敷に現れる幽霊。継母による虐待と噛み合わない父娘の会話。そして、箪笥──。韓国の古典怪談を原作にした本作ほど、悲劇的で哀しいホラー映画はないのではないだろうか。

本編冒頭こそ精神科病棟から始まるものの、物語はスミとスヨンの姉妹が父親の住む屋敷を訪れたことから動き出す。スミは継母ウンジュに対して嫌悪感をあらわにし、スヨンは箪笥から現れた幽霊を目にすることに。屋敷全体を包む不気味な雰囲気に飲み込まれながら、観客は父親・継母・姉妹が生む歪な空気感に否応なく気づかされるはずだ。

本作はホラー映画でありながら、数々の伏線とミスリードを周到に張り巡らせたテクニックが実に鮮やか。いわゆる2度目の鑑賞以降は物語の捉え方がガラリと変わるタイプの作品で、いかに脚本に細心の注意を払い、いかに一つひとつの演出が繊細だったか驚くことになる。

いずれにせよ、血を浴びた姉妹の姿が印象的なメインビジュアルが示すとおり、本作はハッピーエンドが訪れるような作品ではない。なぜ父と娘の会話にズレが生じるのか。なぜ継母ウンジュは虐待を行うのか。

本作に散りばめられた「疑問」がひとつの答えにたどり着いた時に押し寄せる悲壮感は、いつまでも観る者の心に残り続ける。

▶︎『箪笥<たんす>』を観る

まとめ

韓国産ホラー映画では、他にもPOVホラー『コンジアム』やマ・ドンソクを一躍有名にした『新感染 ファイナル・エクスプレス』、國村隼の怪演ぶりが話題の『哭声/コクソン』などが有名。

ホラー映画にしていずれもテイストがまったく異なっており、それだけ韓国映画におけるホラー作品の振り幅が広いという何よりの証拠でもある。

今後どのようなタイトルが映画ファンの注目を集めることになるのか、ぶるぶると身を震わせながら待ちたい。

–{配信サービス一覧}–

配信サービス一覧

『オクス駅お化け』

『ワーニング その映画を観るな』

『箪笥<たんす>』

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