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僕らの世界が交わるまで

   88分 | 2022年 | G

「ソーシャル・ネットワーク」「ゾンビランド」シリーズなどの俳優ジェシー・アイゼンバーグが長編初メガホンをとったヒューマンドラマ。アイゼンバーグがオーディオブック向けに制作したラジオドラマをもとに自ら脚本を手がけ、ちぐはぐにすれ違う母と息子が織りなす人間模様を描く。

DV被害に遭った人々のためのシェルターを運営する母エブリンと、ネットのライブ配信で人気を集める高校生の息子ジギー。社会奉仕に身を捧げる母と自分のフォロワーのことで頭がいっぱいのZ世代の息子は、お互いのことを分かり合えず、すれ違ってばかり。そんな2人だったが、各々がないものねだりの相手にひかれて空回りするという、親子でそっくりなところもあり、そのことからそれぞれが少しずつ変化していく。

「アリスのままで」のジュリアン・ムーアが母エブリン、ドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シリーズのフィン・ウルフハードが息子ジギーを演じた。「ラ・ラ・ランド」「クルエラ」の俳優エマ・ストーンが製作に名を連ねる。

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映画レビュー

牛津厚信

PRO

軽やかな語り口を持った愛すべき作品

牛津厚信さん | 2024年1月27日 | PCから投稿

かつて『イカとクジラ』(05)で弟役を演じたオーウェン・クラインが長編監督デビューを果たした2022年、兄役のジェシー・アイゼンバーグもまた、こうなることが運命付けられていたかのように初監督作を完成させるのだから驚きだ。主人公はネット生配信で投げ銭を得ている青年ジギーと、その母親にして福祉事業家のイヴリン。ジギーはこの年代の男の子の常で、自分の聖域に母親が入ってくるだけで汚されたような気分になるし、自立した性格のイヴリンは息子と少しでも交流を持とうとするあまりつい口煩くなってしまう。かくも二つの世界は交わらず、互いを分かつ壁も高い。しかしどちらも決して完璧ではなく、彼らは暗に痛みや不安を感じつつ、常にもがいている。こういった出口なき母子関係を決して重く引きずらず、軽やかなテンポを維持しながら心地よく描いて見せるのは稀有な才能だ。最後に待ち構える落とし所も観客をフッと笑顔にさせてくれるはず。