「DELL AW3423DW」は世界初のQD-OLEDパネル採用の湾曲ゲーミングモニターです。
ついに来ました、量子ドット + OLEDゲーミングモニター。34インチのUWQHDで最大175 Hz、応答速度0.1 ミリ秒、OLEDなのに3年保証・・・限りなく最強に近いスペックです。
(公開:2022/4/15 | 更新:2023/2/1)
「DELL AW3423DW」の仕様とスペック
今までOELDゲーミングモニターといえば「LG OLED CX(レビュー記事)」を買うしかない状況でした。
しかし、今回レビューする「DELL AW3423DW」の登場により、やっとOLEDゲーミングモニターのマトモな選択肢が増えます。
AW3423DWはSamsung製の「QD-OLED(量子ドット + OLED)」パネルを採用し、既存のOLEDパネルを上回る高性能と長寿命を可能にします。
スペックはほぼ最強に近いです。OLEDパネルの性質により、応答速度0.1 ミリ秒と無限のコントラスト比をアピール。最大175 Hzのリフレッシュレートで「ぼやけ」も徹底的に抑えます。
HDRは「Display HDR True Black 400」認証を取得。性能としてはHDR 400相当ですが、OLEDパネルは完璧な黒色を出せるので実際の見え方はHDR 400を超える可能性も考えられます。
なお、最新ゲーム機(PS5 / Xbox Series X)とAW3423DWの相性はイマイチです。
AW3423DWにはHDMI 2.1端子がないですし、解像度もゲーム機が対応していないUWQHD(3440 x 1440)です。PCゲーマー向けすぎる仕様は数少ないデメリットかもしれません。
「QD-OLED」と「白色OLED」の違い
比較 | QD-OLED | 白色OLED |
---|---|---|
イメージ | ||
色域(DCI P3) | 123% | 94% |
白色輝度 | 1500 cd/m² | 1000 cd/m² |
保証期間 | 3年 | 1年 |
SamsungのQD-OLEDは、青色しか出せない有機EL層に、量子ドットフィルターをかぶせて三原色(RGB)を取り出す方式です。
つまり、OLED(有機EL)とQuantom Dot(量子ドット)技術を組み合わせたパネルです。作り出した三原色をムダにせず、効率よく取り出すためにトップエミッション方式も採用。
LGの白色OLEDと比較して、表示できる色の広さはDCI P3で94%から123%に増加、画面のピーク輝度は1000 cd/m²から1500 cd/m²と1.5倍増を実現します。
効率よく光を取り出せる設計と青色有機EL層の多層化により、耐久性も大幅に改善されています。実例で確認しましょう。
比較 | DELL AW3423DW (QD-OLED) | LG OLED C1 (白色OLED) |
---|---|---|
保証期間 | 3年保証 | 1年保証 |
LGのOLEDテレビは1年保証に対して、今回レビューするDELL AW3423DWが3年保証です。焼き付きリスクのあるOLEDパネルで「3年保証」は驚異的な進歩です。
DELL AW3423DWを開封レビュー
開封と付属品のチェック
AW3423DWは横幅95 cmの大きなパッケージで届きました。梱包重量は13 kgを超えるため、開封するときにうっかり落として壊さないように注意しましょう。
開封しやすい見開き式の梱包です。中身は2段式で、1段目に付属品、2段目にパネル本体とモニターアームが入っています。
パネル本体は発泡スチロール製の頑丈な梱包材で厳重に保護されています。
付属品は簡素な内容です。
- HDMI 2.0ケーブル(長さ1.8 m)
- Display Port 1.4ケーブル(長さ1.8 m)
- USB 3.2 Gen 1ケーブル(長さ1.8 m)
- VESA変換アダプタ
- I/Oカバー
- 電源ケーブル
3本の映像出力ケーブルが付属します。HDMI 2.0ケーブルは最大UWQHD(3440 x 1440)の100 Hzまで、DP 1.4ケーブルなら175 Hzまで表示可能です。
USB 3.1 Gen 1ケーブルはUSBポート(4個)を使うために必要です。パソコンとつなぐと、4個あるUSBポートが使えるようになります。
付属のレポートは「キャリブレーションレポート」です。DELL AW3423DWは出荷時にキャリブレーションを行い、色の精度をΔE < 2.0に調整済み(※sRGBとDCI P3準拠)。
わざわざカラーメーターを買ってソフトウェア校正をせずとも、最初から色が合っています。実際に色があっているかどうかは、後ほど測定してチェックします。
インターフェイス類とモニター本体
モニター本体の裏側から、各種インターフェイスにアクセスできます。奥まった位置にあるせいで若干ケーブルが挿しにくいです。
インターフェイスは全部で10個。
- USB 3.2 Gen 1(PC接続用)
- USB 3.2 Gen 1
- USB 3.2 Gen 1
- HDMI 2.0(UWQHD @100 Hz)
- HDMI 2.0(UWQHD @100 Hz)
- Display Port 1.4(UWQHD @175 Hz)
- スピーカー端子(3.5 mm)
- USB 3.0(充電可:0.9 A)
- イヤホン端子(3.5 mm)
- USB 3.2 Gen 1
- USB 3.2 Gen 1(充電可:0.9 A)
映像出力端子はHDMI 2.0(UWQHD @100 Hz)が2つ、Display Port 1.4(UWQHD @175 Hz)が1つです。USB 3.1 Gen 1ポートは合計4つあり、内1つがUSB充電に対応。
PS5のコントローラの充電や、スマートフォンの充電に使えます。
リフレッシュレートの対応状況を実機で確認。パソコンはDisplay PortでUWQHD 175 Hzまで映ります(10 bit表示は144 Hzが上限)。
PS5はフルHDの60 Hzと表示されますが、
EDIDを見る限り「1920 x 1080 at 120 Hz」に対応しています。120 Hzに対応したゲームでオプションから120 Hzが選択可能になるはずです。
画面の中央下部にボタンが配置されています。
- OSDを操作する5方向ボタン
です。
5方向ボタンは操作が直感的でラクです。
画面右下に電源ボタンがあります。
付属のモニタースタンドには、ケーブルホールが空いています。ごちゃごちゃしやすい配線類をまとめやすいです。付属のI/Oカバーで配線隠しもできます。
付属のVESA変換アダプタを取り付けると、スタンダードな100 x 100 mm規格のVESAマウントを使えます。
スタンドを含まないパネル本体の重量は約7 kg(6.92 kg)ですので、エルゴトロンOEMのAmazonベーシックモニターアームで軽々と持ち上げられます。
パネルの表面加工は、目が疲れにくい「ノングレア」・・・のような、どちらかといえば「グレア」に近い表面加工に見えます。
グレア方式はいわゆるハイエンドテレビで広く採用されており、テレビユーザーからすると見慣れた存在です。
一方、ゲーミングモニターではノングレアが圧倒的多数です。PCゲーマーだと初めてグレアを見る人も少なくないと予想されるため、賛否両論の原因になりそうです。
ベゼル幅は10 mmです。34インチにしては可もなく不可もなく、普通なベゼル幅です。メインとサブで役割をきっぱり分けるマルチディスプレイ環境なら問題なく使えます。
組み立てはシンプル
DELL AW3423DWの組み立ては他のゲーミングモニターと同じく、シンプルで簡単なドッキング方式です。
うっかりパネルを割りたくないので、箱にパネル本体を入れたまま組み立てを行います。
モニター本体にスタンドを挿し込み、
スタンドを取り付けて土台のネジを固定します。ネジに指で回せるフックが付いているので、プラスドライバーは不要です。
パネルを保護している薄い梱包を外します。
さらにプチプチ梱包が貼ってあるので剥がします。
以上でDELL AW3423DWの組み立てが完了。ツールレス(道具不要)なデザインのおかげで、組み立ては3分くらいで終わります。いつもどおり簡単です。
エルゴノミクスをチェック
リフト(昇降機能)は11 cmです。下の方までグイグイと下げられるので、目がラクな見下ろす角度に調整できます。
なお、下の方までグイグイと下げるとUSBポートを挿し込むスペースが限られてしまうのは微妙な設計かも。場合によってはL字に屈折したUSBケーブルが必要です。
左右スイベル(首振り)は20°対応で、左右あわせて40°の首振りが可能です。湾曲型モニターだから使う機会はほとんどないでしょう。
前後チルト(角度調整)は、上方向へ21°、下方向へ-5°まで対応。
中途半端なピボット機能もあります。左右に5°ずつ、合計10°の傾き調整ができます。
- チルト(前後):+21 ~ -5°
- リフト(昇降):110 mm
- スイベル(首振り):左右20°
- ピボット(垂直):左右5°
湾曲型ゲーミングモニターにとって十分なエルゴノミクス機能です。
デザインと外観(写真)
クリックすると拡大します | |
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見た瞬間にエイリアンウェアと分かる、あまりにも個性的なデザインです。曲線を活かしたある意味生態的なデザインは見ていてちょっと感心しましたが、万人向けとはいいづらいです。
背面のLEDライティングはOSD画面から色の設定ができます。消灯(無点灯)も可能です。
DELL AW3423DWの性能を検証
X-riteのプロ向けキャリブレーションツールに付属する分光測色計「i1 Pro 2」を使って、DELL AW3423DWのパネル品質や液晶モニターとしての性能を検証します。
ゲーミングモニターのレビューでは「目で見て色がキレイ。」など、とにかく主観的な感想が目立つので、ちもろぐでは実際に計測を行い客観的な評価を行います(※色の見え方は個人差あるので計測あるのみです)。
色の正確さとコントラスト比
モニターの性能でかなりの人が気にしているのが「パネルの発色」です。発色の良さは正しくは「色の正確さ」と呼ばれ、規格どおりの色が出ているかどうかを「色差(ΔE)」という単位で表現します。
ΔEが平均値で2.0以下なら「正確」です。
色の正確さ(発色の良さ)※クリックで画像拡大します | |
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グレースケール | カラー |
|
|
コントラスト比 | |
|
AW3423DWの色精度はデフォルト設定そのままだと全体的にあざやかでズレてます。グレーの色差は最初からΔEが1.0未満で非常に正確です。
正確さを重視するなら「sRGBモード」を使うといいでしょう。グレーとカラーどちらもΔEが1.0未満に抑えられており、出荷時にキャリブレーションされているのが明らかです。
色温度はおおむね6500K前後(6450~6550K)に調整されていてバランスのいい白色が出ます。
画面の明るさ(輝度)
「標準」モードでOSDからモニターの明るさを10%ずつズラしながら、画面の明るさ(輝度)を計測しました。
一番暗い状態(0%設定)で「28.7 cd/m2」、最大設定(100%設定)で「264.2 cd/m2」、カタログスペックの最大250 cd/m2をやや上回るスペック通りの明るさです。
設定値42%で目にちょうど良いとされる「120 cd/m2」に一致します。
色域カバー率
色域カバー率※クリックで拡大します | ||
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規格 | CIE1931 | CIE1976 |
sRGBもっとも一般的な色域 | 100% | 100% |
DCI P3シネマ向けの色域 | 99.1% | 99.4% |
Adobe RGBクリエイター向けの色域 | 93.5% | 97.1% |
表示できる色の広さを「色域カバー率」と呼び、モニターの品質をあらわす指標として使われています。
DELL AW3423DWの色域カバー率は、もっとも一般的な規格「sRGB」で100%をカバー。HDRコンテンツで重要なシネマ向けの規格「DCI P3」では99.4%をカバーします。
AdobeRGBですら97.1%もカバーしており、表示できる色が非常に広いです。
分光測色計でスペクトラムを分析してみた。RGB(赤緑青)それぞれのピークが互いに混じらず、ハッキリと出ています。
RGBそれぞれのピークが明瞭に出てくる、量子ドットならではの特性です。
一般的な白色OLEDのスペクトラムがこちら。緑と赤のピークが弱く、隣同士でやや混じっています。表示できる色の広さはQD-OLEDが圧倒的に有利です。
パネルの均一性
「均一性」は要するに同じ色を表示したときの「色ムラ」の程度です。
グレー(5%)の均一性にまったく問題なし。
もっと明るいグレー(50%)の均一性も、ほとんど色ムラが見られません。
OLEDパネルはLEDバックライトを使わない自発光型パネルゆえ、EIZO製品のようなユニフォーミティー対策を施さなくても極めて高い均一性をかんたんに実現できます。
IPSパネルと比較すると、QD-OLEDパネルの優れた均一性がよく分かります。
色ムラの平均値はAW3423DWがわずか0.12%、G3223Qは13.6%でした。
OLEDパネル+湾曲型で視野角は広い
ただでさえ視野角が広いOLEDパネルに曲率1800Rのおかげで、非の打ち所がない完璧な視野角です。(参考:液晶パネルの違いを解説するよ)。
入力遅延をチェック
「Input Lag Tester」の信号を表示できないため、「Raspberry Pi 4」を使ったカスタム入力遅延テスターを使って、DELL AW3423DWの入力遅延をテストします。
60 Hz時の入力遅延は16.2 ミリ秒。目標の16 ミリ秒をわずかに超えていますが、120 Hz時の入力遅延は8.6 ミリ秒で実用上の問題はありません。
他のゲーミングモニターと比較します。ほとんどのゲーミングモニターは16 ミリ秒を下回ります。16 ミリ秒を超えるモニターはまれです。
フリッカーフリーの動作検証
画面の明るさを25%ずつ変更しながら、オシロスコープを使ってフリッカーの有無を測定した結果です。
リフレッシュレートの更新ごとに、ほんのわずかですが画面の明るさが下がっています。幸い、下落幅が小さすぎて目視でわかるほどのフリッカーは見えないです。
AW3423DWは実質的にフリッカーフリーです。
しかし、起こっている現象としてはフリッカーと判断できます。DELLが公式サイトでフリッカーフリーについて一言もアピールしないわけです。
DELL AW3423DWの応答速度を検証
こちらの記事で詳しく解説している通り、光の明るさをμs(マイクロ秒 = 1000分の1 ミリ秒)単位の細かさで検出する「光ディテクター」と、ミリ秒単位の計測には間に合う「USBオシロスコープ」を使ってモニターの応答速度を実測します。
個人差によってかんたんに左右されてしまう主観的な評価を徹底的に排除し、客観的な測定を行うことで、ゲーミングモニターの一貫した性能評価とレビューが可能です。
175 / 144 Hzの動作チェック
応答速度の前に、リフレッシュレートがちゃんと出ているかどうか「UFO Test」を撮影してチェック。
スライダーショット(追尾撮影)で残像を撮影します。リフレッシュレートが上がるにつれてUFOのりんかくがハッキリと映り、残像が減っているのが分かります。
定点撮影も問題なし。リフレッシュレートが高いほど、UFOの数が増えています。
144 Hz時の応答速度
まずは普通にリフレッシュレートを144 Hzに設定して応答速度を計測します。
DELL AW3423DWの応答速度144 Hz / オーバードライブ:なし | |
---|---|
平均値 | 0.40 ms |
最速値 | 0.27 ms |
最遅値 | 0.64 ms |
明るく | 0.39 ms |
暗く | 0.40 ms |
応答速度 | 0 | 50 | 100 | 150 | 200 | 255 |
---|---|---|---|---|---|---|
0 | – | 0.49 ms | 0.44 ms | 0.37 ms | 0.40 ms | 0.41 ms |
50 | 0.64 ms | – | 0.31 ms | 0.41 ms | 0.35 ms | 0.38 ms |
100 | 0.55 ms | 0.34 ms | – | 0.39 ms | 0.42 ms | 0.43 ms |
150 | 0.40 ms | 0.37 ms | 0.27 ms | – | 0.35 ms | 0.40 ms |
200 | 0.40 ms | 0.38 ms | 0.37 ms | 0.34 ms | – | 0.35 ms |
255 | 0.41 ms | 0.40 ms | 0.40 ms | 0.38 ms | 0.36 ms | – |
エラー率 | 0 | 50 | 100 | 150 | 200 | 255 |
---|---|---|---|---|---|---|
0 | – | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % |
50 | 0.0 % | – | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % |
100 | 0.0 % | 0.0 % | – | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % |
150 | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | – | 0.0 % | 0.0 % |
200 | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | – | 0.0 % |
255 | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | – |
144 Hzの応答速度は平均わずか「0.4 ミリ秒」です。平均値で1 ミリ秒をあっさりと下回ります。UFOのりんかくはまるで静止画のように、クッキリ明瞭に映ります。
UWQHDの湾曲型ゲーミングモニターとして、おそらく最速の応答速度です。
175 Hz時の応答速度
リフレッシュレートを175 Hzに設定して、応答速度を計測します。
DELL AW3423DWの応答速度175 Hz / オーバードライブ:なし | |
---|---|
平均値 | 0.40 ms |
最速値 | 0.21 ms |
最遅値 | 0.50 ms |
明るく | 0.41 ms |
暗く | 0.38 ms |
応答速度 | 0 | 50 | 100 | 150 | 200 | 255 |
---|---|---|---|---|---|---|
0 | – | 0.50 ms | 0.42 ms | 0.47 ms | 0.43 ms | 0.41 ms |
50 | 0.21 ms | – | 0.35 ms | 0.38 ms | 0.45 ms | 0.39 ms |
100 | 0.38 ms | 0.40 ms | – | 0.39 ms | 0.38 ms | 0.43 ms |
150 | 0.46 ms | 0.42 ms | 0.30 ms | – | 0.43 ms | 0.40 ms |
200 | 0.42 ms | 0.40 ms | 0.36 ms | 0.34 ms | – | 0.39 ms |
255 | 0.40 ms | 0.39 ms | 0.39 ms | 0.38 ms | 0.39 ms | – |
エラー率 | 0 | 50 | 100 | 150 | 200 | 255 |
---|---|---|---|---|---|---|
0 | – | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % |
50 | 0.0 % | – | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % |
100 | 0.0 % | 0.0 % | – | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % |
150 | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | – | 0.0 % | 0.0 % |
200 | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | – | 0.0 % |
255 | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | 0.0 % | – |
175 Hzの応答速度は、平均「0.4 ミリ秒」です。
一般的にリフレッシュレートが速いほど応答速度も短縮される傾向がありますが、自発光型パネルのQD-OLEDは例外です。リフレッシュレートに関係なく、常に一貫して瞬時の応答速度を維持します。
よって、応答速度を高速化するオーバードライブ機能がAW3423DWには実装されていません。・・・OLEDパネルにオーバードライブは不要だからです。
応答速度の比較
ちもろぐで検証した他のゲーミングモニターとの比較をまとめます。比較できるデータはかなり増えていて、DELL AW3423DWの応答速度がどれくらいの位置づけなのかが、客観的に分かりやすいです。
120 ~ 165 Hzのゲーミングモニターで比較しました。
言うまでもなくAW3423DWの応答速度は最強格です。もっとも優秀なTNパネルですら平均1ミリ秒台がやっとなのに、OLEDパネルはいとも簡単に1ミリ秒を下回ります。
IPSパネルで最速クラスのNano IPSと比較しても、AW3423DWは9~10倍も応答速度が短いです。
DELL AW3423DWの機能性をチェック
OSD(On Screen Display)の内容
5方向ボタンを使って、モニターの設定(On Screen Display)を変更できます。順番に紹介します。
よくある5方向ボタンで操作するOSD設定画面です。操作自体はサクサクと進みますが、ボタンの位置がモニター中央で、しかも若干奥まった位置にあるせいで面倒くさく感じます。
ショートカットボタンで設定できる項目は「カスタマイズ」から自由にカスタマイズ可能です。
初期設定だと1番に「プリセットモード」、2番に「暗さスタビライザー」、3番に「輝度 / コントラスト」が登録されています。
ショートカットボタンは5方向キーを倒すと出現し、キーをいったん押す動作が必要でテンポが悪いです。
暗いところを明るくする「Dark Stabilizer」
「Dark Stabilizer」は暗い部分を明るく補正する、暗所補正機能です。効果自体はかなり控えめで、多少は明るくなる程度。
BenQの「Black eQuliazer」と同じクオリティの暗所補正を期待しないでください。
暗いシーンの多いDead by Daylightで使うとこんな感じです。そこそこ明るくなります。
8個ある「プリセットモード」をチェック
「プリセットモード」はモニター側に最初から保存されているプロファイルです。DELL AW3423DWには、全8種類のプリセットモードが用意されています。
8種類あるプリセットモード | |
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Standard | 初期設定(基本的にsRGB準拠) |
FPS | FPSゲーム向け(輝度高めかつ暗所補正+3) |
MOBA/RTS | MOBA向けの設定(ややコントラスト高め) |
RPG | RPG向けの設定(FPSより全体的に控えめ) |
SPORTS | スポーツゲーム向けの設定 |
Creator | 標準規格に準拠した設定(sRGBとDCI P3を選べます) |
Warm | 色温度がやや暖色より(黄色っぽい) |
Cool | 色温度がやや寒色より(青白っぽい) |
好みに合わせて「Standard」「FPS」「RPG」を使い分けます。好みに合う設定がない場合は、プリセットモードを「Custom Color」に切り替えて自分好みに設定してください。
参考までに、色温度が6500K(= 赤すぎず青すぎないちょうど良い白色)に近いモードは「Standard」です。画面の明るさ75%で6450Kでした。
「G-SYNC Ultimate」の動作チェック
ペンデュラムテスターで「G-SYNC Ultimate」の動作状況をチェックしました。結果はリフレッシュレート1~175 Hzまでテアリングなし。完璧なVRR(可変リフレッシュレート)です。
DELL AW3423DWの「HDR」性能
DELL AW3423DWは「Display HDR True Black 400」認証を取得済みのHDRモニターです。
自発光型であるOLEDパネルの特性上、ローカル調光を使った普通のHDR 600モニターで頻繁に見られる「ハロー(調光バックライトの光漏れ)」が一切見られません。
なお、実際に人間の目でみると、わずかにハローのような光のぼやけは見えます。眼球に届いた光が水晶体を通っていく都合上、わずかなハローはどうしても防げないです※。
※加齢で水晶体がにごると輪っかのようなハローが見えるようになるらしい。人間の目はしょせんナマモノ、もろいです。
HDR性能の測定結果はこちら↓
DELL AW3423DWのHDR性能i1 Pro 2で測定した結果 | |
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全画面輝度 | 258.9 cd/m2 |
ピーク輝度 | 1026.1 cd/m2 |
黒色輝度 | 0 cd/m2 |
コントラスト比 | Inf : 1(無限) |
DCI P3色域 | 99.4 % |
色深度 | 10 bit(144 Hz)Display Port 1.4使用時 |
「Display HDR True Black 400」で求められる性能をきちんと満たしています。イメージとしては、完璧な黒色を表示できるHDR 400相当です(※全画面輝度はHDR 400にすら負けています)。
「優れたHDR性能」を初心者さんに分かりやすく説明すると
- 明るさ:明るいほど良い(超ハイエンド機なら1000 cd/m2超)
- 黒色:無点灯に近いほど良い(0.1 cd/m2以下なら実用上は十分)
- コントラスト比:高いほど良い(5000 : 1以上で実用上は十分)
- 広色域:DCI P3が広いほど良い(DCI P3なら90%以上は欲しい)
めちゃくちゃ明るくて、暗い部分はちゃんと真っ暗。さらに表示できる色も広い。これらの条件を満たしているなら「高性能なHDR」で、高性能なHDR性能を持つモニターは基本的にDisplay HDR規格を取得しています。
HDR 600以上なら、まずハズレなし。HDR 1000やHDR 1400を取得しているモニターは超ハイエンド機です。
なお、有機ELパネルは特性上、HDR性能を伸ばせないので注意してください(※有機ELは画面を明るくするほどパネルの故障率が上昇するため、画面が明るくなりすぎないように制御されています)。
HDRモード時の全画面輝度は258.9 cd/m2です。LGのOLEDテレビよりは改善しているものの、一般的なHDR 400モニターの6割程度の明るさしか出せません。
画面に表示している白色の広さにあわせて、HDR輝度を測定したグラフです。
明るいエリアが広いほど輝度が下がっていき、50%時に376.2 cd/m2でHDR 400規格に負け、100%時に258.9 cd/m2まで落ち込みます。
サムスンがアピールしていたとおり、LGのOLEDテレビと比較して輝度が改善されています。LG CX OLED(48インチ)だと全画面輝度はわずか149.6 cd/m2です。
HDR時のコントラスト比(理論値)はInf:1(無限)です。
OLEDパネルの性質上、コンテンツや見ているシーンに関係なく常にInf:1(無限)のコントラスト比を維持できます。
ただし、無限のコントラスト比が美しく見えるかどうかは、ややコンテンツを選びます。宇宙空間の多いSF映画なら、完璧な黒による宇宙と星の描写はたしかにすごいです。
一方で、暗いシーンの少ないコンテンツだと完璧な黒色があまり役に立たないため、期待しているほどの映像美を感じられない可能性もあります。
実際にHDRコンテンツを見てみよう
「Morocco 8K HDR」と、4K HDR対応の「天気の子(4K Ultra BD)」にて、ざっくりとDELL AW3423DWのHDR映像をテストします。
夜の花火シーンはさすがに目を見張る超高画質でした。やはり完璧な黒色が役立つシーンだとOLEDパネルは猛威をふるいます。並のIPSパネルだとうっすらと白く見えるシーンが、AW3423DWなら完全に黒色として表現できます。
なお、全体的に明るいシーンだと完璧な黒色の恩恵が相対的に目立たなくなるため、「HDRってこんなもの?」と感じてしまうリスクが依然として存在します。
HDRコンテンツの基本思想は現実世界に即した輝度表現が含まれるため、輝度の制限がかかってしまうOLEDパネルとの相性はあまり良くないです。
Samsung QD-OLEDの場合、LG WOLEDより輝度が改善されているとはいえ、画面に占める明るいエリアの比率が30%を超えただけで巷にあふれるHDR 400に輝度で負けているのが現状です。
サイバーパンク2077(レイトレモードかつ夜間)や、宇宙空間の多いSF系コンテンツ(映画インターステラーなど)、完璧な黒色が機能するコンテンツならAW3423DWが圧勝します。
よってHDRコンテンツの再現性能はまだまだ一長一短ある現状です。
総合的なHDR性能はDisplay HDR 1000を取得している「INNOCN 27M2V」や「INNOCN 32M2V」など、Mini LEDゲーミングモニターの方が有利です。
【注意点】AW3423DWはオフィス用途に向かない?
普通のゲーミングモニターでは見られない、非常に特殊な挙動を確認したのでわざわざ見出しを1つ使って解説します。
結論から言うと、DELL AW3423DWは「オフィス用途」に向いていないです。最強の湾曲型ゲーミングモニターですが、最強のモニターではありません。
理由は3つです。
- Windowsのテキスト表示がQD-OLEDに最適化されていない
- 焼き付き防止システムにより、一定周期でピクセルが一瞬動く
- 本体の発熱が高めで画面輝度が高いと冷却ファンの音がします
1.のテキスト表示が一番問題です。
濃い色と薄い色の境界にうっすらと「ピンク」と「緑」が見えませんか?
もっと近づくと分かりやすいです。「ゲーミングモニター」を囲っている青い四角形の縁や、「おすすめな~」の太い黒字フォントの縁に、本来ないはずの色がなぜか表示されています。
原因はQD-OLEDパネルのサブピクセルレイアウトが三角形だから、と推測されます。
Windows側(ClearTypeテキスト)が対応してくれれば解消される可能性がありますが、QD-OLEDパネルを使っているユーザーは非常にまれです。対応される見込みは非常に低いです。
現状はとりあえずテキストを読むときだけ画面の輝度を下げて対処します。輝度を下げればテキストのぼやけ(Text Fringing)が目立たなくなります。
AW3423DWのパネル解像度は3440 x 1440ですが、実際にはパネルの四方に数ピクセル余分な画素が用意されています。
余分なピクセルを使って、OLEDパネルの焼き付きを防止する「ピクセルシフト機能」を実装しています。一定時間が経過すると、表示しているピクセルを自動的に動かします。
動く距離はほんのわずかで、ゲーム中や映画を見ているときだとまったく気づけなかったですが、テキストを読んでいるときに動くと分かりやすいです。
人によっては気が散る原因になるかもしれません。幸い、1.のテキストぼやけの方が大問題で、相対的に無視できる仕様です。
輝度を高い状態で使い続けると、パネル本体の温度がけっこう上がります。手を近づけると「あったかい」と感じるくらいには熱が出てます。
温度が高すぎると故障の原因になるため、AW3423DWはアクティブクーリング(冷却ファン)でパネルを冷却する仕様です。もちろん、ファンの停止はできません。
ファンの動作音そのものは非常に微々たるもので「騒音」とは程遠く、そもそもゲーム中や映画を見ているときはまったく聞こえないです。
しかし、人によっては気になる可能性がゼロとは言い切れないため、一応ファンの音がわずかにするとだけ指摘しておきます。
まとめ:最強の湾曲型「ゲーミングモニター」です
「DELL AW3423DW」の微妙なとこ
- ぼやけ(Text Fringing)現象
- ゲーマー向け機能が少ない
- HDMI 2.1なし
- 内蔵スピーカーなし
- 60 Hz時の入力遅延が平凡
- HDR輝度が低い
- 納期が不安定
- 焼き付きリスクあり
「DELL AW3423DW」の良いところ
- 湾曲型のUWQHDで没入感あり
- 最大「175 Hz」に対応
- 世界初「QD-OLED」パネル採用
- 広色域(DCI P3で99.4%)
- sRGBモードが正確(ΔE < 1.0)
- 色ムラが非常に少ない
- 入力遅延が少ない(120 Hz時)
- 瞬時の応答速度(0.4ミリ秒)
- G-SYNC Ultimate対応
- そこそこのHDR性能
- 必要十分なエルゴノミクス
- 意外と価格が安い(13.6~15.6万円)
- 3年保証
「AW3423DW」は最強の湾曲型 “ゲーミングモニター” です。最強のモニターではなく、ゲーミング向けの最強モニターです。
高コントラストのテキストでぼやけ(Fringing)が見えたり、一定時間おきに1~2ピクセル画面が動いたり、ファンの動作音がするなど。オフィス用途との相性はイマイチ。
一方で、本来の目的であるゲーミング用途は極めて理想的な性能を叩き出します。
応答速度は文字通り「瞬時」です。メーカー公称値でよくある0.5 ミリ秒なんて表現はほとんど誇大広告にすぎないですが、AW3423DWは実際に「0.4 ミリ秒」です。
並のIPSやVAパネルと比較して約10~20倍、最速のTNパネルと比較して約3~4倍も高速で、目に映る映像はまるで静止画のようにまったく残像が見えません。
画質も(HDRを除いて)トップクラスです。OLEDパネルの特性により、輝度ムラとIPSグロー(パネル四隅の輝度低下)から開放されます。
量子ドットフィルターによる効率的な色増幅で、表示できる色の広さも驚異的。DCI P3で99.4%、Adobe RGBで97.1%です。あらゆるコンテンツに対応できます。
可変リフレッシュレート機能は「G-SYNC Ultimate」対応で、1~175 Hzまでテアリングをほぼ完全に防ぎます。
ゲーム向けに最強の性能を提供するAW3423DWの価格は「13.6~15.6万円」です。OLEDゲーミングモニターが安くても17~18万円以上もかかる現状だと、かなり安い価格設定です。
- 没入感のあるゲームプレイ
- とにかく性能を追求したい
- OLEDゲーミングモニターがほしい
最強の湾曲型ゲーミングモニターを探しているなら、・・・「DELL AW3423DW」が答えです。
ただただシンプルに超高性能。なのに価格が思った以上に良心的。HDR輝度やテキストぼやけなど欠点もありますが、おすすめできる理由の方が多いです。
以上「DELL AW3423DWレビュー:最強の湾曲ゲーミングモニター【QD-OLED】」でした。
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