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遠い太鼓

2009-05-13-1 [BookReview]
長いエッセイ。
1980年代後半の3年間のギリシャ、ローマでの暮らしなど。
あちこちまわりながら小説を書いたり翻訳をしたりしていたそう。
このときに書いた長編小説は「ノルウェイの森」「ダンス・ダンス・ダンス」。

村上春樹 / 遠い太鼓


読んでてなにかひどく心をうとらえるものがあるな、と思っていたんだけど、それはたぶん当時の著者の年齢が今の自分と同じだから。

 僕には今でもときどき遠い太鼓の音が聞こえる。
静かな午後に耳を澄ませると、その響きを耳の奥に感じることがある。
無性にまた旅に出たくなることもある。
でも僕はふとこういう風にも思う。
今ここにいる過渡的で一時的な僕そのものが、僕の営みそのものが、要するに旅という行為なのではないか、と。
 そして僕は何処にでも行けるし、何処にも行けないのだ。
(p.563)

自分にはそこまでの行動力はないけど、数ヶ月単位で知らない土地を転々としながら暮らしていくというタイプの「旅」は魅力的。
今みたいに普通に生活するのと比べて、「発見」の量が尋常じゃないだろう。
でも、旅は疲弊する。
とことんまで疲弊した状態でポジティブに生きていけるのか、まったく自信はない。

 すごく不思議なのだけれど、小説が十万部売れているときには、僕は多くの人に愛され、好まれ、支持されているように感じていた。
でも『ノルウェイの森』を百何十万部も売ったことで、僕は自分がひどく孤独になったように感じた。
そして自分が多くの人々に憎まれ嫌われているように感じた。
(p.402)
人気アルファブロガーもこんな感覚を持つのだろうか。
わからない。
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