企業価値向上には企業と投資家、双方の努力が欠かせません。企業側だけでなく、投資家側である資本市場にも課題があります。

 日頃から資本市場との対話に心を砕いている人ほど、「資本市場側への規律付けはどうなっているのだろうか」と思っているのではないでしょうか。

 日本における株主に対する規制は先進国の中で世界一甘いと言われ、アクティビスト(物言う株主)には魅力的に映っているようです。今回は、日本の資本市場への規律付けについて考えてみましょう。

強い日本の株主権

 2024年6月の株主総会シーズンで記憶に新しいのは、6月20日に開催されたNTTの株主総会です。個人株主が、約500万円分の株式取得によって自分自身を取締役にするよう求める提案を出しました。この提案は否決されましたが、株式分割で個人が株式を買いやすくなり株主提案もしやすくなったことの弊害が指摘されました。

 問題は、こうしたレベルの株主提案を許してしまう制度の枠組みにあります。

 一般に、日本の株主権は欧米に比べはるかに強いものとなっています。株主提案権もその1つで、株主にとって緩い状況が続いています。12年には野村ホールディングスに対して、商号を「野菜ホールディングス」に変更することを求めるなど、一般的な理解を超えた内容を多く含んだ100項目にわたる株主提案が個人株主から出されました。

 この事件を受けて会社法が改正され、株主提案は1株主10件までに制限されましたが、総議決権の1%以上か300個以上の議決権を6カ月間継続保有していれば、株主提案はできてしまいますし、内容に制限もありません。会社法改正時に不適切な株主提案を規制できるルールも検討されたのですが、なぜか修正がかかり削除されてしまいました。

この記事は有料会員登録で続きをご覧いただけます
残り2002文字 / 全文2751文字

【初割・2カ月無料】お申し込みで…

  • 専門記者によるオリジナルコンテンツが読み放題
  • 著名経営者や有識者による動画、ウェビナーが見放題
  • 日経ビジネス最新号12年分のバックナンバーが読み放題