「雪がコンコン降る。人間は その下で暮らしているのです」
山形県山元村立山元中学校の子どもたち43人の文集が昭和26(1951)年に出版され、大ベストセラーとなる。編者の無着成恭(むちゃくせいきょう、1927〜2023)に新制中学1年生から学び、いまも故郷で暮らす佐藤藤三郎氏が無着青年を想う。
『山びこ学校』という本を初めて手にしたのは、中学校を卒業する日だった。私たちが「山びこ学校」という名の学校で学んだわけではないが、本の編者である無着成恭先生には中学校の3年間、教えを受けた。
中学ともなれば各教科の専門の先生がいて、それぞれの教科を教えるのが常だろうが、山間の村の小さな学校では、それができなかった。教員の人数が不足していて、教科ごとの先生を揃えることができなかったからだ。それで、1年生の時に師範学校を出たばかりの無着先生が担任となり、3年生まで学んだ。
私はもう、89歳。あれから七十数年が経つ。故に、どんな教えを受けたか、記憶は薄れているが、思い出されるのは、赴任してきた時の先生の挨拶だ。それが並のものでなくて演説のようだったからだ。
「学校とは生徒が主体であって先生なんて偉い人ではない。君たちが先生を踏み台にして学ぶところだ」と言い、続けて、「本気になって学ばなければこの国、日本はアメリカの属国になるぞー!!」と、叫ぶように話されたことが頭に残っている。それはまさに、戦後の日本を代表する“青年の思い”であった。
日本が敗戦した時、私は国民学校の4年生だった。少年時代を戦中・戦後で送ることとなり、幼少で学ぶべきことを学べず、「先生」には恵まれずに過ごした。
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