☆=☆☆☆☆☆<br>◎=☆☆☆☆<br>◇=☆☆☆<br>△=☆☆<br>▽=☆
フローレストラウマを抱えた女(HisFatalFixation)ストーカーもここまでくると、めちゃくちゃだな。ストーカー被害に遭って、PTSDを発症したせいで幻想に苦しむのもよくわかる。感情の抑制が利かなくなって、他人に対して攻撃的になるのもほんとにわかる。けど、深い仲になった相手の妻に勘違いの怒りをたぎらせ、相手の家に乗り込んで花束をたたきつけて、ちからになれるとおもってたとか叫ぶのはちょっとなあって話だ。あの仕事が大好きなの、居場所がなくなると困るの、とか言うのも、この脚本、どうかとおもうな。それに、ストーカーになった男、そのときに殺された彼氏、あらたに出会って告白してくる男、妻と疎遠になってるのかどうか微妙な医院のオーナー医、最後につきあうことになるマンションの管理人。ちょっと相手が多すぎないか?フローレストラウマを抱えた女
帰らざる日々(1978)懐かしい。たぶんそうなんだろうけど、藤田敏八の描いてきたこういう青春時代のやるせなさってのは、田舎の高校生とか地方出身の大学生には刺さるもんがあったんだろうなあ。それにしてもなんつーか、自主制作映画の35ミリ版っていうのがなによりしっくりくるかなあ。喫茶店に掛かるのは『旅の宿』だが江藤潤が不良に見えない。映画館は『日本侠客伝』で『唐獅子牡丹』が流れ、朝丘雪路の経営するスナックで掛かるのは『傷だらけの人生』だ。江藤潤の家、むかしの町家だなあ。向かって左の戸を開けると通り庭。入って右手が江藤潤の部屋。浅野真弓を手籠めにしようとしたとき、浴衣の足元から覗き込むようなアングルで下着を撮るんだけど、趣味の良くないカットながら白い下着ってのがなんとなく当時を匂わせる。しかし、当時の喫茶店はええ...帰らざる日々
ゴッド・セイブ・アスマドリード連続老女強姦殺人事件(QueDiosnosperdone)いやあ、かなり気を入れて見ちゃったわ。老女の強姦殺人とかって、心の底から見たくないし、あっちゃいけないものだし、もう、そんな映画とか見たくないはずなんだけど、見ちゃった。で、いやまあ、腕白小僧がそのまま刑事になったロベルト・アラモはまあありがちな人間で、奥さんと別居してるもんだから美人の娘マリア・バリェステロスとふたり暮らしなんだけど、この禿げオヤジが好い。で、どもりの相棒アントニオ・デ・ラ・トーレなんだけど、まじめだとおもってたら冷静スープを持ってきてくれた清掃係の女性が自分に気があると察するや、うしろから抱きすくめ、強姦まがいの姦淫をしかける。まじかよって話で、強姦殺人の物語で、犯人を追いかける刑事にそれはまずくな...ゴッド・セイブ・アスマドリード連続老女強姦殺人事件
◎デビル(Devil)おもしろかった。原案がナイト・シャラマンだそうで、なるほど、エレベーターに罪を犯した5人の男女が乗り込んでて、実はその中に姿を変えた悪魔がいて、同乗してる連中をつぎつぎに斬殺していくっていう筋立てはそれだけでも充分におもしろいし、エレベーターのあるビルの上から自殺者が出ることでそれが悪魔を呼び寄せる儀式になってるっていう出だしもまたいい。この自殺者が実は他殺なんじゃないかって直感する刑事クリス・メッシーナもまた因縁めいてて、5年前に奥さんと子どもをひき逃げされてて、その犯人が実はエレベーターに乗ってるってのもいい。そう、ひき逃げが罪で、その贖罪をさせられるために悪魔に呼ばれたっていう感じになってるんだね。信心深い警備員ジェイコブ・バルカスが監視カメラからすべての出来事を見守ってて、お...デビル
◇ラスト・フル・メジャー知られざる英雄の真実(TheLastFullMeasure)懐かしい、ストリート・オブ・ファイヤーのお姉エイミー・マディガンじゃん。エド・ハリスと夫婦そろって出演してるのか。ま、キャストはいい。ピーター・フォンダの遺作らしいけど、そうか、かなりむくんでるもんね。クリストファー・プラマーもこれが実写の最後の作品だそうで、なんだかね。ただまあ、ウィリアム・ハートといい、サミュエル・L・ジャクソンといい、キャストはそろえてる。セバスチャン・スタンとアリソン・スドルの若夫婦を除けば、有名どころを揃えてきてるんだけど、惜しいかな、脚本が弱いね。アビリーン作戦の全容がまるでつかめない。だからおもしろくないんだな。ベトナム戦争も森の一隅だけで話は進んで、ここと交互に1999年の物語が進行するんだ...ラスト・フル・メジャー知られざる英雄の真実
ハングマン(Hangman)アル・パチーノの愛車ビュイック・リヴィエラがカッコいい。音楽もありきたりだけど不気味さが好い。連続殺人だとおもわせながら、実はアル・パチーノの過去の事件が絡んでるのが徐々に明らかにはなるものの、SMのレズビアンの片割れが殺されたり、教会で十字架に磔にされて豚の皮を被せられて窒息死させられたりと、あれこれ、派手なところに惑わされる。つまり、犯人に乗せられるわけだね。画面の中、道路や壁に時刻が表示されてるのはなぜかとおもってたら、そうか、犯人は毎晩11時に殺しをしてるから、その前後の時間だけ観客に報せてくれてるわけかってなことはわかるんだけど、これ、過去の事件とおなじ時刻だとかいう因縁が欲しかったな。途中までは、アル・パチーノとカール・アーバンとブリタニー・スノウの3人だけが動いて...ハングマン
スフィア()たしかにそのとおりだといってしまった。サミュエル・L・ジャクソンがダスティン・ホフマンにこう言う。「考えてみれば妙だ。(将来造られるアメリカの宇宙船がブラックホールに突入して50年前の太平洋に突入したという)彼の説は、タイムトラベルだ。我々は帰還して話す。その方法や危険性についてな。ではなぜ50年後の宇宙船が未知の突入と言う?なぜ知らない?それは我々が話してないからで、話してないのは海上に戻ってないからだ。つまり、ここで死ぬんだ。引き算の理屈だよ。あの球体の中に入れたら」なるほど『アビス』と『2001年宇宙の旅』と『エイリアン』を足して割ったわけね。水の球体がモノリスで、ジュリーなるコンピュータの解読による宇宙人の言語がハルなのね。ま、サミュエル・L・ジャクソンの名前がハリーだし。しかしそうか...スフィア
ザ・クリミナル合衆国の陰謀()ケイト・ベッキンセイル、好演してるけど、この役の記者は、ちょいと頑な過ぎて、身を入れて観るのはためらうなあ。『君は譲れないものが多いな』そのとおりだ。囚人仲間とベッドのとりあいをして叩きのめされたときに弁護士から言われるんだけど、つまり、面会室でセックスした夫に付き合ってる女がいるのかと質し、ここでも揉み合い、抱いてくれてありがとうと吐き捨て、もうめちゃくちゃ殺伐としてきたときのベッドのとりあいなんだけど、まあ脚本の畳み掛けは上手いとはいえ、どうもねえ。なるほど、通学バスのシーンの中で息子が斜め後ろに居る場面は伏線だったのか。ザ・クリミナル合衆国の陰謀
CHASEチェイス猛追(LastSeenAlive)ガソリンスタンドで給油中に水を買いに行った奥さんが誘拐されたかもしれないっていう手出しなんだけど、それに気づいて行動し始めるまでの段取りが長くて…。それはいいとしても、冒頭の刑事が容疑者らしき爺さんをちからづくで口を割らせようとするのをなんで前置きしたのかわからん。つか、後半、まるきり違う話じゃん。わけわからんヘロインの精製アジトみたいなところに潜入して、悪人としかおもえんやつだけどおもわず撃ち殺しちゃったりするって展開はどうよ?まあ半年前に浮気してたオトコがそこのボスだったてな展開だったはずなんだけど、その恨み辛みはなんも触れないまんま銃撃戦になって、死んだとかいわれて埋められてたはずの奥さんはどーなってんだいって話で、いやもう破綻してはいないけど、お...CHASEチェイス猛追
◇放課後(1973)知多東宝で宣材を配ってた。鮮明な記憶だ。この作品の価値は世田谷線の動画かなあ。あとは当たり前のことながら昭和58年の風物がそのまんま観られるってことくらいかなあ。それにしても、主人公はいったい誰なんだろえね。栗田ひろみはどうしても物足りないし、かといって地井武男と宮本信子の新婚家庭に喫茶店キャンディのママ宇津宮雅代が絡んだ4角関係っていってもなあ。てなことを考えるだけの映画だったのかなあ。宣材をもらって、それをアルバムにまで貼って、いつか観られる日が来るのを愉しみにしてたんだけどなあ。50年待ったのになあ。放課後
ザ・ハントナチスに狙われた男(Den12.mand)1940年4月9日、ナチス占領下のノルウェーに、ヒトラーがノルウェー要塞を築いたっていうクレジットから始まる。で、3年後の3月27日、トフテフィヨルドでイギリスから来た工作船が拿捕される。そこから1日刻みで展開していくんだけど、12人の地下活動家が追われて11人が捕まり、民間人に助けられた男がイギリスに報告に行くためにスウェーデンまで逃げて行くっていう話だ。寒そ〜。けど、氷の海峡を脱走した男が生きていると信じて追いかける親衛隊の少佐が根性のかたまりで氷水に20分浸かってても死なないっことをみずから証明するくらいだ。すげえ信念。『ドイツ軍はオーロラも盗んだかな?』『そんなのむりよ。隠れるところはいっぱいある』地図好きな少女に励まされる場面が好い。けっこう人...ザ・ハントナチスに狙われた男
シビル・ウォーアメリカ最後の日(CivilWar)物語に気持ちを入れるまで時間が掛かる。だってとっくに内戦が始まってるから。テキサスとカリフォルニアが西部同盟とか組んで叛乱を起こして、フロリダが与しかけてるのはテレビの大統領による投げ掛けでわかるが、それだけだ。音楽の扱い方がどうもしっくりこない。現実のポップスを流すことの効果はわかるけどどうもね。国連の支援団体の女の子がめちゃくちゃ綺麗だ。とかおもってたら、後半、ゆるい音楽とスローモーションが始まり、戦火の爪痕を点描するのを観て、わかった。これ『地獄の黙示録』なのね。狙撃兵に、相手は誰だ?と尋ねたとき、さあにと、やつらが狙ってくるからおれたちも狙うと答えてライフルをかまえたとき、確信したわ。でも、記者が戦場に立つときの心構えとして、ヘルメットをしないって...シビル・ウォーアメリカ最後の日
◇ブラックライト(Blacklight)FBIの中でも特殊諜報員っていうのか、とにかく窮地に陥った仲間を救出するだけを仕事にして、これまでに一度も相手を殺したことがないっていう、なんだかむりっぽい設定の役柄なんだけど、なにを演じてもリーアム・ニーソンは説得力がある。すごい存在感だな。つっても、たいがいの作品は、過去になんだかとてつもない戦いの日々を送ってきた男が引退するか引退間近になって事件に巻き込まれるんだけどね。で、今回もおんなじ。後半、旧い仲間が殺され、ネタを横取りした新聞記者が殺され、さらに娘と孫が行方不明になってくると、がぜん、おもしろくなる。ブラックライト
☆海峡(1982年日本142分)staff原作/岩川隆『海峡』監督/森谷司郎製作/田中友幸、森岡道夫、田中寿一、森谷司郎脚本/井手俊郎、森谷司郎撮影/木村大作美術/村木与四郎衣裳/川崎健二音楽/南こうせつ主題歌/南こうせつ『友ありて』作詞:阿木燿子、作曲:南こうせつcast高倉健三浦友和森繁久彌吉永小百合大滝秀治笠智衆藤田進伊佐山ひろ子☆1985年(昭和60年)3月10日、青函トンネル本坑全貫通無性に、この映画が好きだ。世の中にはいろんな人がいて、ただトンネル掘ってるだけじゃねーかといわれそうだけど、でも好きなものは仕方がない。森谷司郎の作品では『八甲田山』と双璧なくらい好きだ。だから、数年おきに無性に観たくなる。まあ、そういう映画があってもいいわけで、たぶん、ぼくの中でいちばん感受性のつよい時期に観た映...海峡
◇札幌オリンピック(1972)最初のカット、頭上からジャンプがフレーム・インしてきたときは、びっくりした。けど、佐藤勝の音楽はやけに明るくてイメージがきつすぎた。笠谷幸生とジャネット・リンは懐かしかった。でも、これって当時を懐かしむ人間だけの愉しみなんだろうなあ。氷の上をエッジが擦っていく音がやけに耳に残るのは、どういうことだろう。エッジはスケートだけじゃなく、スキーもそうで、無音の中に効果音のようにぎしゅぎしゅ入ってくるのはちょっと疲れた。篠田正浩の興味はどうやら選手よりも会場の整備員や報道班員といった裏方にあるようで、選手たちの買い物やファッションまで執拗に追いかけている。札幌の歴史もクラークまで遡って語られたりと、監督の興味が延々と撮されるのはどのドキュメントもおなじだが、詩歌の朗読めいたナレーショ...札幌オリンピック
◇日本の夜と霧(1960)ほぼ舞台劇なんだけど、台詞の失敗くらいじゃNGにできないほど予算がなかったのか、それとも大島渚は「それがリアルなんだ」というんだろうか?で、戸浦六宏、哲学論争で気張る。「歌や踊りがマルクス主義とどういう関係があるんだ?ロシアやスイスの民謡を女の子と歌うことが革命となんの関わりがある?」映画の中でたったひとつほっとできた台詞なんだけど、この舞台劇のような大仰な台詞と長回しは、つまり、撮影期間が足りなかったってことね?長回しだし、フィルム不足だし、台詞を噛んだくらいじゃあNGは出してられないしね。しかし、この学生運動と戦前の青年将校たちはどうちがうんだろう?「宗教なら信じるか信じないかの二者択一でいい。しかし、政治というメカニズムの中ではあれかこれかという押しつけはよくないとおもう。...日本の夜と霧
◎にっぽん泥棒物語(1965)植木照男、がんばったね。昭和40年の作品だからカラー化が勧められてはいたもののまだまだ未熟なところもあったし製作費も嵩む頃なんだけど、この作品については、白黒が活きてる。松川事件のニュースがほんの一瞬挟み込まれるときに、なんの違和感ないからだね。ま、それはそれとして、当時の松川あたりをおもえば夜ともなれば真っ暗だったろうし、泥棒の林田(三國連太郎)が9人の真犯人とすれちがったときに顔がわからなくするためには画面を暗くしておく必要があったのかもしれないんだけど、やっぱり暗くてよく見えない。くわえて福島弁がわからないから、台詞がかなり聴き取れない。でもまあ、この二重苦がありながらも、おもしろかった。さすが山本薩夫。三國連太郎が花沢徳衛の仕入れてきた松川事件の容疑者が10万円の保釈...にっぽん泥棒物語
◇動乱(1980)昭和7年4月仙台から始まる。姉の手紙で脱走する展開は『銃殺』とほぼ同じ。脱走兵の永島敏行の姉が吉永小百合なんだけど、身売りサせられそうな貧農にしては小綺麗だし、訛ってないのが気になるなあ。そして皇道派の五一五事件。皇道派かと問われる高倉健は「自分は軍人であります。政治に興味はありません」というが、これに対して小池朝雄が「国民が豊かになるにはまず国家が豊かにならにゃならん。そのためには強い軍隊が必要だ」という。まあ、定番の理屈だね。満洲朝鮮国境にて匪賊と戦い、陸軍の横流しした武器で負傷した部下が「日本帝国陸軍の兵隊はいったい誰のために死ぬのでありますか?」と叫ぶにおよび、高倉健は手紙をしたためる。『國軍の御威光は今や地に堕ちたり。我が隊にはもはや医薬品なく、弾薬なく、食糧もなく、あるは兵士...動乱
◎帝銀事件死刑囚(1964)大学の時に初見したんだけど、そのときの印象とさほど変わらない。山本陽子が生き残りの女性事務員の役で、かわいすぎる。笹森礼子と出てくるんだけど、もちろん、ふたりとも綺麗なんだけどさ。ま、それはさておき、熊井啓はこれが初監督作品だそうな。ちからがあるなあ。事件で使用された劇薬はアセト・シアン・ヒドリンといい、これは陸軍の特殊研究所で取り扱われていたらしい。神奈川県川崎市稲田登戸の陸軍第九研究所、通称登戸研究所で、もちろん、一般人はこの存在はまず知らない。従って、すくなくとも画家の平沢貞道には、この劇薬を入手する手だてがない。ここに関係していた傷痍軍人の少佐を演じた佐野浅夫が上手に填まってる。見事なもんで、731部隊の生き残りっていう設定なんだけど、性根の据わった感じがあって好い。佐...帝銀事件死刑囚
◎日本万国博・Expo'70(1971)日本万国博(DocumentaryFilm"JapanWorldExposition,Osaka1970)というのが、正式なタイトルなのかどうかよくわからない。クレジットでは『日本万国博』とだけ、ある。各国の風物詩のような点描から大阪天理丘陵の整地から始まり太陽の塔の顔がつけられてゆゆく家庭を経て、丁寧な手仕事による仕上げの様子、そして開会時の空撮。堂々とした正攻法の演出は、いかにも谷口千吉。くわえて、金管が鳴らされる音楽がなんだかやけに好ましい。石坂浩二のナレーション「1970年3月14日、アジアで初めて開催された日本万国博覧会の開幕です」ありきたりだが、のちに編集された『記録映画日本万国博』のナレーションはもうすこし詳しい。ほお、香港は独立参加なんだね。このとき...日本万国博(Expo'70)
◎絞殺(1979)「…やってしまおう。…おしまいだ」西村晃が乙羽信子に言う。昭和五十年代の非行や家庭内暴力は戦後3番目の多さだったらしい。町内会や婦人会など、まわりの好奇な目に見られ、そのストレスに耐え切れず神経を病んでしまう。つらいだろうなあ。小金井から千住に越してきて、営んでいたスナックも移転させた。でも、変わらない。教師役は戸浦六宏。当時、いやらしい教師役は戸浦六宏か穂積隆信かっていう印象がある。ふたりとも憎々しげな演技が上手だった。戸浦さんの方がずる賢く、穂積さんの方がお人好しで小心なぶん卑怯さや卑屈さがよく表れてた。ちゃぶ台、茶だんす、家具調テレビ、レコード・コンポーネント、サイドボード、水割りセット、洋ダンス、ガラスケース入りの唐子人形、親のむつごとの声が生々しく漏れ聞こえる明かり障子とモルタ...絞殺
△積木くずし(1983)いやまあ当時は不愉快で見る気もなかった映画なんだけど。非行と家庭内暴力はこの頃がピークだったのかもなあ…。つか、なんだか、テレビサイズだなあ。渡辺典子が不良に走る理由が後半にならないと見えてこないのと、前半はケンカしたりシンナー吸ったりするからってそれほど問題をかかえた非行少女には見えないのが、物語がわかっているだけに外された感じがする。ことに非行に走りつつも、母親のいしだあゆみには恋の悩みを泣いて相談するくらい良い子に見えるのがまだるこしい。途中、錦糸町の駅前を深夜にふらついて警察に捕まるとかゆーのも中途半端な気もするし。まあ、藤田まことが京都ロケに行ってるときにいしだあゆみからちからづくで金をせびろうとするところから徐々に凄くなってくるんだけどね。それにしても『絞殺』もそうなん...積木くずし
◇第五福竜丸(1959)今見ると、なんか身が入らない。まあ、新藤兼人の特徴のひとつなんだろうけど、やっぱりどことなく明るい。宇野重吉のとぼけた風味がそう感じさせるのかもしれない。いや、本人はいたって大真面目に演技してるかも。ま、そんなことはいいんだけど、ピカドンを見たときの船員たちの、最初の、見世物を見るような反応がやけにリアルだ。特撮が当時としては妙に上手で、これは『ゴジラ』なんかもおなじことを感じる。徐々に被曝状況がわかってくるのとともに、宇野重吉とその妻の乙羽信子ら家族たちに焦点が絞り込まれていくんだけど、ここもまた悲劇を煽るような演出はない。どことなくあっけらかんとした悲劇で、これもまたいい。ただ、主張されるところは自明だからことさら声を大にする必要は無いって新藤兼人は判断したのか、宇野重吉演じる...第五福竜丸
◎日本列島(1965)日本はアメリカに255の基地を提供している、ていうナレーションから始まる。これだけでも十分に衝撃的だ。物語は、CIDのリミット曹長が殺されたことから始まる。死体が、否も応もなくアメリカに運ばれる。これに対して日本の警察は憤るが、CIDもまた困惑する。この不可思議な事態について、宇野重吉はいう。「米軍に圧力が掛かった事件ですね」では、圧力をかけたのは誰か。上層部か?「いや。軍じゃないでしょうね。もっと強大な、おそらく…」捜査会議は揉める。刑事は歯嚙みする。「被害者は日本国内で死んでるんだ、われわれにも調べる権利がある。占領下ではない。日本は独立国としてお互いに協定を結んでるんですからね。それを無視して…」宇野重吉の教え子のオンリーが死ぬんだけど、その蒲団の口許に包丁が置かれてる。小刀の...日本列島
☆東京オリンピック(1964)オリンピックは人類の持っている夢のあらわれである。という字幕が消えるや日輪のアップ、そしてそれと二重写しとなるように巨大な鉄球が映し出され、戦争に翻弄されたオリンピックの開催年が詠み上げられ、古めかしいビルが叩き壊され、代々木公園、体育館、国立競技場が完成し、望遠レンズで撮られたクルマとヒトとコンクリートがきゅうぎゅうに密集された東京の街にメインタイトルが重なる。そしてオリンポスの丘から始まる聖火ランナーのリレーに沿ってアジアの各地が映し出され、日本の最初は沖縄のひめゆりの塔。本州に入れば広島の原爆ドームに空撮で入り、平和公園で日の丸の小旗をふって出迎える人々のまんなかを抜け、京都の古道を、霊峰富士の裾野を聖火ランナーがゆく。開会式に登場する各国は、キューバ以外の国はあらかた...東京オリンピック
☆戦争と人間第一部運命の序曲(1970)『満蒙はわが日本帝国の生命線である』この映画の肝は奉勅命令だ。満鉄付属地外への出兵は天皇陛下のご命令がいる、すなわち奉勅命令の伝宣が必要だと、中谷一郎演じる河本大作は、芦田伸介演じる満洲伍代にいう。この満洲伍代は、甥の歓送会の席上、実業家の市来善兵衛の「蔣介石が北伐を始めるや否や日本は現地居留民の保護を名目に山東へ出兵したんだが、いや、これをもってまたぞろ中支線以南の反日感情を燃え上がらせて、おまけに北京の張作霖が負けるとなると、中南支はおろか満洲からもなんの収穫も期待できなくなるわけだ。よほど慎重にやってもらわんと」という慎重な意見に「いかんいかん、そんな弱腰じゃ」と活を入れ、在留邦人の生命財産が実際に侵されようとするときに、外務省の舌三寸や片々たる文書でこれが守...戦争と人間
◎銃殺(1964)菊の御紋を戴いた厳しい扉を開けて、丹波哲郎演じる相澤三郎の永田鉄山暗殺事件から始まり、この扉が丹波さんがやってくると閉じ、タイトルが被さり、また開くと、陸軍練兵場になってる。うわ、最初から合成じゃん。青年将校の会議で、こう意見が出る。「軍隊を使用して直接行動に出るのは、陛下ご自身が、重臣元老を斬らねばならないとお考えになったときだけ許されるべきだ。わたしには陛下がそうお考えになっているとはおもえないのだ」しかしこれは否定され、うやむやになる。将校鶴田浩二は牛鍋をつつきながらいう。「ここ2、3年、どん底の生活苦に喘いでいる農民や労働者の家庭では、一家の働き手を兵隊にとられて自分の娘を売らなきゃならない悲惨な親もある。その一方、兵隊の中には自分の貰った慰問袋をそっくり家(うち)に送っている者...銃殺
二・二六事件脱出冒頭、秘書官の三國連太郎が帰ってくると応接間にふたり、よく似た男がいる。首相ともうひとり。応援演説に立った代議士。これで、あ〜このふたりが入れ代わるのかと察しはつくんだけど、複雑なあらすじな分、これは良い伏線だ。庭を眺めて赤坂までの地下道は使えるのかと尋ねる伏線もわかりやすい。中原ひとみと久保菜穂子がふりはじめた雪を眺める静けさのあと官邸襲撃が始まる静と動の展開もいい。高岩肇、親切で上手い脚本だ。ただまあ、斬られたり撃たれたりしたときの断末魔はあいかわらずの東映調で、音楽もそうだが、ちょいといただけない。特高部曹長の高倉健の登場はやや遅いけど、長いプロローグは二・二六事件の官邸襲撃の前に持ってくるのもなんだか役者中心になって野暮だから、これでいい。この脚本はじつにうまくて、健さんが出勤した...二・二六事件脱出
◇戒厳令(1973)のっけから一柳慧の現代的な電子音楽、また広角的な奥行きを見せたコントラストの強い画面。蝉の声の降り注ぐ中で、十かぞえて下駄を脱いで短刀を引き抜いた朝日平吾(辻󠄀萬長)が安田善次郎の暗殺に走る。画面の端に人物を置いて空虚な空間を見せる、なんとも不安定な構図がつづく。ひと目でそれとわかる吉田山の東面の長屋住宅。ここでも不安をかきたてる画面は変わらない。三國連太郎演じる北一輝は、墓場の中でいう。『戒厳令の下ではどんな小さな行いもまちがいですらも厳粛さの内に取り込まれる。戒厳令が場所を得てすべての無秩序の中から秩序を見出しつつあるからだ。戒厳令は人々に秩序を与えるのではない。ただ人々の無秩序の中にある秩序を見出すのだ。やがて人々も気づくだろう。自分たちの内にある秩序について。(略)もしかしたら...戒厳令
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