南天竺に比丘あらん龍樹菩薩となづくべし有無の邪見を破すべしと世尊はかねてときたまふ上記は親鸞聖人による高僧和讃の中の一節です。「南インドに龍樹菩薩が現れて有無の邪見を論破するであろうと、お釈迦様は仰った。」というようなことでしょう。問題はこの「有無の邪見」ということですが、東本願寺では「ものごとを肯定する『有』とか、否定する『無』とか、そのような誤った考えにこだわる見方」というふうに説明しています。それはその通りですが、実は龍樹自身はもっとラジカルなことを言っていて、「言語による断定はすべて真実から外れている。」というようなことを主張しているのです。例えば、「鳥が飛んでいる」という言葉について考えてみましょう。その言葉を発した人は何かについて言い得たつもりで、聞いた方も何かを了解した気分になるかも知れませ...有無の邪見