安部龍太郎、門井慶喜、畠中恵、3人の人気作家が、作家としての「秘伝」を惜しみなく公開
「歴史時代小説を書いてみたいけれど、なんだか難しそうで……」
こんな言葉を文芸編集者をしているとよく耳にします。それ以前に「歴史小説と時代小説の区別がつきません」と聞かれることもありますが、これについては比較的簡単です。「実際の歴史上の出来事や人物をベースに書かれたものが歴史小説、舞台は過去だけど(江戸時代の場合が多いですね)、登場人物や出来事は創作された部分が大きいものが時代小説」と説明をしています。たとえば司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』や『燃えよ剣』は歴史小説、池波正太郎さんの『鬼平犯科帳』は主人公の長谷川平蔵は実在した火付盗賊改方長官ですが、配下の役人や盗賊たちについては創造されたものなので時代小説ということになります。
こういったジャンルの小説は大河ドラマや捕物帳など、テレビドラマの原作としても、日本人に長く親しまれてきましたが、実際に書くとなると、現代小説やSFなどのジャンルに比べてハードルが高いと感じられるのはなぜでしょう? 曰く「どういう資料を使えばいいか分からない」「題材をどのように探せばいいか分からない」「史実と創作のバランスのとり方がわからない」等々……。分からないことだらけで、いざチャレンジしようとしても挫けてしまう方が多いようです。
そこで「オール讀物新人賞」という、歴史時代小説の短編に特化した公募の賞を主宰する「オール讀物」編集部では、二〇二一年春、同賞の選考委員を務める、安部龍太郎さん、門井慶喜さん、畠中恵さんをお招きし、「歴史時代小説書き方講座」を開催しました。いまでは第一人者として、多くのファンを獲得しているお三方ですが、作家としてデビューするまでの道のりはいずれも平坦なものではなく、あくなき努力と工夫を現在でも続けていらっしゃいます。
どのようにプロの作家が自身の書き方を身につけ、さらにスキルアップをしていったのか──いわば作家としての「秘伝」を惜しみなく公開していただいたわけですが、この度はそれが書籍として一冊にまとまることになりました。本書がきっかけとなり、より歴史時代小説を「読む」「書く」ことを楽しんでいただければ幸いです。
「オール讀物」編集長 川田未穂
(「はじめに」より)
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