内容紹介

 本書では、BMWが生み出し世界各地に広がった新しいオープンイノベーション手法「ベンチャークライアントモデル」を紹介する。ベンチャークライアントモデルとは、戦略的利益の実現を目指して「スタートアップの顧客になる」手法である。海外ではBMWの他に、ボッシュ、シーメンス、ロレアル、テレフォニカ、エアバス、アクサなどが採用し、10を超える業種で活用が始まっている。

 BMWはベンチャークライアントモデルを活用することで、いち早くADAS(先進運転支援システム)を自社の量産車ラインアップに搭載した。工場内におけるクルマの自動運転の仕組みを驚くべき低価格で実現し、車内で気軽に楽しめるコンソールゲームシステムを1 年足らずの期間で実装した。毎年約30のスタートアップ製品の評価、購買を行い、これまでに20社以上を正規のサプライヤーとして迎え、収益向上とコスト削減を達成している。

 本書で紹介するベンチャークライアントモデルは、世界最高峰のスタートアップの顧客になり、スタートアップの力を自社の戦略的な利益のために活用することを、再現性をもって実現する方法である。スタートアップの顧客になる手法がなぜ有効で再現性があるか。さらに効果を高める運用はどのように達成されるのか。ぜひ、本書をご覧いただきたい。

<目次>
はじめに

第1章 なぜ、ベンチャークライアントモデルか
1-1 なぜスタートアップが必要とされるか
1-2 試行錯誤のオープンイノベーション
1-3 ベンチャークライアントの起源
1-4 ベンチャークライアントモデルの急速な浸透
1-5 スタートアップの顧客になることで大きな成果が生まれてきた
1-6 顧客になろう(Client is King)

第2章 ベンチャークライアントモデルの概略と大企業にとってのメリット
2-1 企業がベンチャークライアントモデルを導入するメリット
2-2 ベンチャークライアント戦略の明確化
2-3 ベンチャークライアントモデルのプロセスの概要
2-4 ベンチャークライアントモデルの特徴
コラム 戦略的利益へのコミットメントの恩恵
2-5 社内組織との連動
2-6 ベンチャークライアントユニットの役割
2-7 他のイノベーション手法との比較
2-8 CVC とベンチャークライアントを対比する
2-9 他の手法と組み合わせたベンチャークライアントモデルの活用方法
コラム インナーサークルのガラスの壁を打ち破る方法

第3章 スタートアップに選ばれるベンチャークライアントになろう
3-1 スタートアップに特化したプロセスの必要性
3-2 ベンチャークライアントモデルの対象になるスタートアップとは
3-3 スタートアップに選ばれるベンチャークライアントのプロセスとは
3-4 スタートアップにとってのフェアトレード
3-5 改善し続ける基盤とKPI

第4章 BMWが構築したベンチャークライアントモデルとは
4-1 BMW のベンチャークライアントモデル
4-2 ベンチャークライアントモデルの要件
4-3 ベンチャークライアントモデルの要件への対応
4-4 ベンチャークライアントモデルの誕生と成功
4-5 BMW のベンチャークライアントモデルの概要
4-6 BMW のベンチャークライアントモデルの成功事例
4-7 ベンチャークライアントユニットの貢献
特別インタビュー BMW Startup Garage 成功の秘訣

第5章 日系企業オープンイノベーションのキーパーソンに聞く
SOMPO ホールディングス グループCDO 楢﨑 浩一氏
Honda Innovations CEO 杉本 直樹氏
FUJI 代表取締役社長 五十棲 丈二氏
ベンチャークライアントモデル特別対談 入山 章栄氏× Gregor Gimmy(グレゴール・ギミー)

第6章ベンチャークライアントモデルの社内導入を成功させる9つのポイント
6-1 (全体)改めてベンチャークライアントモデルを導入する必要があるのか?
6-2 (戦略)対象とすべき技術領域は?
6-3 (戦略)新製品開発か?オペレーション改善か?
6-4 (実行プロセス)インパクトの大きな課題を抽出できるのか?
コラム 未来志向での課題抽出への挑戦
6-5 (実行プロセス)戦略的利益の経済効果算定にあたってのポイントは?
6-6 (実行プロセス)調達プロセスの鍵は?共同開発、知的財産権の扱いは?
6-7 (組織・データ・文化)ベンチャークライアントモデルと他のオープンイノベーション手法との関係は?
6-8 (組織・データ・文化)どのように推進組織を確立するのか?
6-9 (組織・データ・文化)日本企業が乗り越えるべき壁は?
コラム 政府調達へのベンチャークライアントモデルの活用

おわりに ベンチャークライアントモデルで日本を元気に