【極道×グルメ】裏社会の侠が登場する料理漫画のおすすめ7選
極道、ヤクザ、任侠。呼び名は様々なれど、裏社会に生き、法にもとる極悪人もいれば、義の心で強きを挫き弱きを助く者もいる。そんな強面の侠(おとこ)達が登場する料理漫画に、いま注目が集まっています。
包丁とドスを使い分ける裏社会の侠が登場する、おすすめの料理漫画7作品をご紹介します。
また、リンク先の電子書籍ストアBookLive!では、新規入会者限定の50%OFFクーポンを差し上げています。気になった方はご利用ください!
『侠飯』
完結『侠飯』 全7巻 福澤徹三・薩美佑 / 講談社
ヤクザの組長が作る家庭料理をマネしたくなる
ヤクザの組長が、家庭の調理器具とどこにでも売っている食材を使って、いかにも美味しそうな料理を作っていく任侠×グルメ漫画。福澤徹三先生の小説を、薩美佑先生が漫画化した作品で、2016年に生瀬勝久さんの主演でTVドラマ化もされました。
就活に行き詰まっていた大学生の若水良太(ワカミズ リョウタ)は、ある日、自宅アパートの前でヤクザの抗争に巻き込まれます。パトカーのサイレンが近づき、逃げ場を失ったヤクザ者二人は、良太の部屋に転がりこむことに。そのままずっと居座ってしまうのでした。
ヤクザ二人とは、柳刃組の組長・柳刃竜一(ヤナギバ リュウイチ)と、組員の火野丈治(ヒノ ジョウジ)。二人はまず散らかり放題の良太の部屋を掃除してピカピカにします。火野が偵察のために外に出て行った後、「何か食い物はあるか」と良太に尋ねた柳刃は、コンビニに買い物に行く振りをして逃げ出そうとする良太を引き止めて、冷蔵庫を開き、その中にあった残り物で調理を始めるのでした。
良太の冷蔵庫にあったのは、玉子が3つ、カマボコとチーズ、レモンにリンゴに青ネギ、オイルサーディンの缶詰などなど。これらの食材を巧みに使って3品を作り上げた柳刃。良太がご相伴にあずかると、料理はどれも、あり合わせの物で作ったとは思えないほど美味しかったのです。
当分、良太の部屋に身を潜めることに決めた柳刃は、ネットの通販を使って冷蔵庫や炊飯器、フライパンなどの調理器具を一新して、料理する気満々。男三人の奇妙な同居生活が始まっていきます。
麻婆豆腐とチャーハンに始まり、柳刃の作る料理はどれも、一般家庭で普通に作れるもの。しかし、ちゃんとした手順と調味料の知識によって、お店で出てくるものと遜色ないレベルに仕上がります。いつもはニヒルな柳刃が、調理する時だけは饒舌になるのが面白いところで、作り方を懇切丁寧に解説してくれます。
良太が二日酔いの時は、カレーをトマトジュースで伸ばすことで、アルコールが作り出したアセトアルデヒドを分解する成分をたっぷり含んだ「柳刃流酔い覚めスープカレー」を(※第2巻)、火野が敵対するヤクザに腕を斬りつけられて帰ってきた時は、自然治癒に有効なレバーを使った「柳刃流スタミナ料理 レバニラ炒めと玉子スープ」(※第4巻)を作ってやるといった気づかいも。ヤクザ者に怯えていた良太は、すっかり柳刃の人柄と料理の腕に心酔していきます。
各巻に、柳刃が作った料理のレシピが詳しく紹介されているのもポイント。ストーリー的にも面白く、全7巻でオチも見事に決まっています。
『極道めし』
完結『極道めし』 全10巻 大西祥平・土山しげる / 双葉社
刑務所を舞台に「うまいもの」を語る!
『喰いしん坊!』や『闘飯』、久住昌之先生原作のコミカライズ『漫画版 野武士のグルメ』など、グルメ漫画に定評のある土屋しげる先生。実写映画化もされたこちらの作品は、なんと刑務所が舞台。まさかムショ飯をレポするの? と思いきや、そうではありません。本作は、囚人たちがおせち料理を賭けて「自分が食ったうまいもの」の話をするというストーリー。話を聞いて喉を鳴らした囚人の数が多いほど勝ち、というシンプルながらも、奥深い構成になっています。
「どれだけうまそうに語るか」が主題なだけあって、出てくる料理のおいしそうなこと! 立ち食いそばやお好み焼など、ごく庶民的な食べ物を扱っているのですが、それだけに読んでいるこちらの記憶も刺激され、作中の彼らと一緒に喉を鳴らしてしまいます。
「かきあげをつゆに沈め…かきあげの油が染みたつゆを少し飲み…」
など、想像しただけで口の中が唾液で溢れそうな描写がいっぱい。読み終わったあと、財布を持って定食屋に駆け込みたくなります。
また、食語りの中で、彼らが刑務所に入ることになった理由など、ひとりひとりの人生についても触れられるのですが、こちらがまた泣かせるのです。単なるグルメものではなく、人情ものとしても優れた作品です。
『紺田照の合法レシピ』
『紺田照の合法レシピ』 1~9巻 馬田イスケ / 講談社
ヤクザ×料理の化学反応!斬新すぎる料理男子漫画
強面な暴力団「霜降肉組」の新人組員・紺田照(こんだ てる)は高校3年生。そんな彼は料理にもハマっていて、繊細に献立を考え、料理を作ります。一見、料理が好きそうにはとても見えない紺田くんですが、果たしてその腕前は?
無表情な紺田くんは、いつも「おつとめ中」に献立をひらめきます。時には人、時には武器から食材や調理器具などを連想。例えば、福岡での取引相手のぷりっとした唇から「辛子明太子」を、拳銃のリボルバーから「れんこん」を、そうして作ったのは「レンコンのピリッと明太はさみ揚げ」。なんとも高度な連想ゲームです……。料理の手順説明も、他の料理漫画とは一線を画しており、食材などを紹介する言葉の選び方のセンスに、彼が任侠の人であることを思い知らされます。
「くく…大葉は合法ハーブの中でもとびきり最高だ」
ものすごく凶悪な顔でひとりごちる彼に、思わず突っ込まずにはいられません。
表現こそ少々物騒ですが、彼が作る料理は、定番の料理にひねりを加えており、「こういうアレンジもあるんだ!」と勉強になります。タジン鍋を使ったカレー、春巻きの皮のピザ、秋刀魚の中華風、洋風栗ごはんなど、いつもと違った料理に挑戦したい時にはもってこいですよ!
『極主夫道』
『極主夫道』 1~6巻 おおのこうすけ / 新潮社
今もっともアツい極道は最強の主夫!
“不死身の龍(タツ)”と恐れられた元・最凶ヤクザが、バリバリの専業主夫に転身!? いかちぃサングラスとスーツ、そしてしば犬エプロンがトレードマーク、そんな龍と周囲の人間の日常を描くほっこりギャグ漫画が今作です。
料理に特化した内容ではありませんが、キャラ弁からスイーツまで鮮やかな手腕で作り上げる龍の主夫力には目を見張るものがあります。包丁(時々ドス)を持った明らかに“やばい”絵面で、バリキャリの妻・美久や舎弟分の雅(マサ)のために真心こもりまくりの料理を作る……というシュールさに、変な笑いがもれるはずです。“白い粉”登場しすぎぃ!
ほかにも「ルンバとの対決」「バーゲンセールでの死闘」など、日常のあるある感と絵面&セリフの破天荒さの絶妙なバランスで笑いを生む匠の技が炸裂。「んなアホな」と「わかりみ」が交互、あるいは同時にやってくるのが愉快です。登場人物たちも味わい深く、ヤクザも美久ら一般人もペットの猫ですら、みんなまとめてパンチがあります。
2020年7月にはマンガ界のアカデミー賞「アイズナー賞」最優秀ユーモア賞を受賞し、10月からは放送された玉木宏さん主演のテレビドラマが話題を集め、2021年春からはアニメ放送開始が予定されるなど、今もっとも注目を集める極道漫画です。
『肉極道』
完結『肉極道』 全5巻 森尾正博・佐々木善章 / 芳文社
肉に特化した極道(?)マンガならこれ!
他界した祖父の跡を継いで「肉食堂 あさくら」を営むものの、料理の腕がイマイチな女性店主・まなび。そこに現れたのは、サングラスにスーツのヤクザな見た目、怒声がデフォルトの通称“肉極道”! まなびの作る料理に片っ端からダメ出しし、肉の旨みを最大限に活かした調理法やウンチクを説明して、極上の肉料理を作り上げます。全人類が愛する“肉料理”に特化した、異色の飯テロドタバタコメディといえるでしょう。
感情の起伏は激しいし口は悪いですが、肉極道の指導は的確でわかりやすく、プロ並み。牛、豚、鳥に羊と、あらゆる肉を最高の状態に仕上げていきます。ステーキ、からあげ、しょうが焼きにトンカツ……と、登場するメニューは親しみのあるものばかりで、家で再現できそうなレシピがうれしいです。実際、作中の調理法を試したステーキがTwitterでバズりました。
肉極道そのものも気になる存在。知人が登場するほどに謎が深まる正体不明ぶりに興味をそそられます。「肉の扱いに長けている者は女の扱いにも長けているという……」などと名言(?)もしばしば。「でもヤクザではなく肉料理が大好きなサングラスをかけたおじさんなんだよなぁ……」とか、「いちゃもんつけつつも常連なんだよなぁ……」とか、ツッコミどころが多いのもご愛嬌。楽しく空腹になりつつ、肉の奥深さのトリコにしてくれる漫画です。
『極道の食卓』
『極道の食卓』 1~13巻 立原あゆみ / 秋田書店
組長の料理は仕上げに人情をひとたらし
昼はヤクザの組長、夜は定時制の高校生として暮らす55歳の久慈雷蔵(くじ・らいぞう)、通称クジラの日常を、人情とグルメたっぷりに描く人気作。
義理と人情を体現したような久慈親分が愛するのは、茶漬けや和牛、カニ、タコ、マグロ、おせちなど、粋で渋い大人のメニュー。しかも自分で調理して組員に振る舞う腕の持ち主なのだから、惚れ惚れしてしまいます。毎話のラストが食事でしめられるスタイルで、ストーリーがスパイスになって素朴な料理すらいい味が出ています。
作者はベテラン少女漫画作家にして、任侠漫画の大家、立原あゆみ先生。独特の画風とセリフ回し、けれん味たっぷりの物語は、人情味にあふれつつも哀愁が漂うハードボイルドな作品に仕上がっています。シリーズ続編の『極道の食卓 獄中編』(秋田書店)まで、ぜひ通して味わってください。
『闇金ウシジマくん外伝 らーめん滑皮さん』
完結『闇金ウシジマくん外伝 らーめん滑皮さん』 全5巻 真鍋昌平・山崎童々 / 小学館
最凶ヤクザ・滑皮が主役のラーメンスピンオフ
超人気作品『闇金ウシジマくん』(小学館)にて、主役のウシジマと敵対する最凶ヤクザ・滑皮秀信を主人公にしたスピンオフ。いわゆるグルメ漫画とは一線を画しますが、「滑皮視点」「食事」という切り口で、ウシジマくんワールドの新たな魅力を発見できる作品です。
本編に負けない残酷なストーリーの間に挿入されるのは、非常においしそうなラーメンの描写。本編同様異常に食べ方が汚く、スープを跳ね散らかしながら豪快にがっつく滑皮の様子に、引く気持ちと空腹感が同時に押し寄せ、感情が迷子になります。一方、探偵の戌亥は食レポが異常に上手で、二人の謎のコンビ感に読後は即ラーメン屋さんに行きたくなります(行きました)。
このように、本編に登場したキャラクターたちが多数登場。本編とリンクしている回もあるので、ファンはニヤニヤしながら読むことができるはずです。『闇金ウシジマくん』ファン、ラーメンファン、どちらにもおすすめです。
最後に
道を極めし者、あるいは、はみ出した者たちの料理はいかがでしたか?
いかにも「らしい」料理もあれば、意外性のある料理もありました。我々の日常から少し離れているようで、もしかしたら、すぐ近くにいるかもしれない侠たちの生き様と料理をお楽しみいただけましたら幸いです。