ホラー・耽美・ギャグ…おすすめの吸血鬼漫画14選
古今東西のモンスターの中で、群を抜いて人気のキャラクター「吸血鬼（ヴァンパイア）」。血しぶき、アクション、サスペンスてんこ盛りのダークファンタジーやサバイバルホラーものから、ついうっとりしてしまう&かっこよさに惚れ惚れしてしまうお耽美系、さらには吸血鬼の特性を逆手に取ったギャグや萌え必至のラブコメまで、どんな味付けでもおいしくなる素晴らしい題材です。
特にオススメの14作品を、「王道・定番作」「新作」「男性／女性向け」「異色作」と至れり尽くせりの細かなカテゴライズでご紹介。さらに、14選には漏れるが外すには惜しいという作品も取りそろえました。
充実のラインナップで、めくるめく吸血鬼ワールドに浸ってください！
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※当記事に記載の内容は全て「ぶくまる編集部調べ」です。また、当記事にはネタバレを含みます。
目次
王道、定番作
『HELLSING』
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完結『HELLSING』 全10巻 平野耕太／少年画報社
よろしい、まずは『HELLSING』だ
現在『ドリフターズ』（少年画報社）を連載中の平野耕太先生の、出世作にして代表作、そして吸血鬼漫画の代表にして王道にして名作。「吸血鬼漫画」と聞いて、真っ先に今作を挙げる人は多いのではないでしょうか。
ロンドン郊外にある「大英帝国王立国教騎士団」、通称「ヘルシング機関」。 “反キリストの化物”から大英帝国を守るその機関のジョーカーが、最強の吸血鬼アーカードです。不老不死、怪力、狼に姿を変える、噛んだ童貞処女を吸血鬼化する、人でも化け物でも的ならば容赦なく肉塊にする……と、まさに我々の想像する吸血鬼そのもの。アーカードの主人であるインテグラやその執事ウォルター、従者のセラスらとともに急増した吸血鬼事件の真相を追ううちに、第二次世界大戦までさかのぼる驚愕の計画が発覚します。
全10巻と比較的短めながら、その密度の濃さたるや！ 読めば読むほど伏線が見つかるのも味わい深い……しゅき……。構成はもちろん、平野先生ならではのケレン味あるストーリー、愛することしかできないキャラクター、人生のどこかで一度はマネしてみたくなるせりふ（通称「平野節」）が随所に盛り込まれ、心臓をわっしわっしとつかまれること請け合い。重要人物“少佐”の演説の一節「よろしい、ならば戦争（クリーク）だ」はあまりにも有名です。「蝶のように舞い、蜂のように死ね」とかもお気に入り。
インテグラはドラキュラ伯爵を倒したヴァン・ヘルシングの末裔であるなど、吸血鬼ものの元祖であるブラム・ストーカーの小説『ドラキュラ』の要素も取り入れており、吸血鬼漫画の入り口としてもおすすめ。人間対化け物、世紀の大バトルの行く末を見届けてください！
▼『ドリフターズ』に関して詳しく知りたい方はこちらがおすすめ！
【ネタバレ注意】古今東西の英雄集結 相関図&年表で『ドリフターズ』の世界観を一発理解！【震えて読め】
『ポーの一族』
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完結『ポーの一族』 全5巻 萩尾望都／小学館
時を超えて人々を魅了するレジェンド作品
萩尾先生作品の中でもレジェンド級の人気を誇る傑作。約40年前に発表された作品とは思えぬ魅力的なストーリーと確立された世界観で、現在でも色褪せることなく多くの読者をとりこにし続けています。
主人公は不死のバンパネラたち “ポーの一族”。永遠の美少年であるエドガーは、妹のメリーベルや父母とともに、住まいを転々としながら時を超えて生きていました。近代ヨーロッパから現代まで、『火の鳥』（学童社ほか）的に混在する時系列の中で、これまた美少年のアラン・トワイライトとエドガーとの出会いと悲劇、一族と出会ってしまった人間のその後、エドガーがバンパネラになった経緯などが連作的に描かれます。
バラに囲まれ、十字架に怯み、永久の時を憂えて夜に生きる美しいバンパネラ……。これぞ王道な “吸血鬼”像、想像するだけで胸が高まりませんか？
宝塚歌劇団により舞台化されたり、近年続編の『ポーの一族 ～春の夢～』、『ポーの一族 ユニコーン』（ともに小学館）が発売されたりと、未だ勢いの衰えないシリーズ。まだ読んでいない方はこの機会にぜひ。
『トリニティ・ブラッド』
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完結『トリニティ・ブラッド』 全21巻 九条キヨ・吉田直・THORES柴本／KADOKAWA／角川書店
未完の名作が美麗な作画で蘇る
若くして亡くなった吉田直先生による未完のライトノベルを漫画化。「吸血鬼の血を吸う吸血鬼」アベル・ナイトロード神父が、新米シスターのエステル、人間そっくりの“機械” トレスら「教皇庁国務聖省特務分室」のメンバーとともに、ヴァチカンに牙を剥く吸血鬼たちとの戦いを繰り広げます。
人気の理由の一つは、壮大かつロマンあふれる設定。登場人物たちの外見や、舞台となる場所は中世のヨーロッパのようですが、実は高い科学技術が発展したのちに「アルマゲドン」、つまり世界滅亡の危機に遭っています。そこから復興したため、高度な技術を持ち、未来的なロストテクノロジーが残っているのです。
また、九条先生の画力の高さも魅力的。1巻の表紙からもわかるように、あまりにも絵が美しすぎる……！ 主人公のアベルはダメダメ神父という体ですが、長い銀の髪に整った顔だち、しなやかな体躯と、女子なら放っておけない造形です。また、戦闘中の“クルースニク”モードは圧倒的な強さでこれまた推せる。こんな調子で敵も味方もほぼほぼ美しい上に、個性あふれるキャラクターのメリハリのきいたやりとりと、SFめいた耽美な雰囲気にうっとり。ページをめくるたびにウハウハしちゃいますよ。
新作
『MoMo -the blood taker-』
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『MoMo -the blood taker-』 1～4巻 杉戸アキラ／集英社
アラフォーおじさん×ロリ美少女の凸凹コンビが凶悪吸血鬼を狩る
人間を殺し、一切の血を抜く殺人犯、通称“V（ヴァンパイア）”。10年前に恋人を殺された刑事・御子神は、犯人である「二つ顔を持つ男」を追う中で、吸血鬼・モモの手下の半吸血鬼になってしまいます。
モモの正体は、吸血鬼でありながら凶悪な吸血鬼を倒す“同族殺し”ブラッドテイカーの一員。眷属である御子神も戦いに巻き込まれ、警察と吸血鬼、怨恨と憎悪が入り混じる血みどろの戦いが繰り広げられます。
スタイリッシュな絵柄で描かれるのは、猟奇的な殺害現場、愛と憎しみの複雑な人間関係、そしてロリ美少女×38歳のだらしなイケおじの主従関係！！！ いいんですか!?!?!? 誰かの性癖の扉が絶対開くと思うんですけど責任取れるんですか!?!?!? はぁはぁ。
どのキャラも個性があって愛着が湧きますが、吸血鬼の世界を変えたいモモと、吸血鬼を憎みながら吸血鬼の力を駆使する御子神はいいコンビ。デレ多めのツンデレをかますモモをいなしているように見せかけて、実は彼女のことを大切にしている真面目な御子神に好感が持てます。シリアスな話の間に挟まる箸休め的なギャグコマもまたヨシ。おもらしクソ野郎こと使い魔のダンテさんかわいい。飼いたい。ちゅーるあげたい。
2020年5月末時点の既刊は4巻ながら、すでに「二つ顔を持つ男」に肉薄しているモモ&御子神たち。今後どうなるのか、期待せずにはいられません！
『MoMo -the blood taker-』を無料で立ち読みする
『エイラと外つ国の王』
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『エイラと外つ国の王』 1～2巻 びっけ／秋田書店
全力ファンタジーと設定の妙にぐいぐい引き込まれる
政略結婚のため、異国の王子と結婚することになった16歳の王女エイラ。しかし、嫁ぎ先であるロートフェルゼ国の王族たちの正体は、吸血鬼の一族だったのです。それはエイラの結婚相手であるアロルドも同様で……。
勇敢でけなげな王女エイラと、思慮深いがややヘタレな王子アロルドはとてもお似合いで、かつ美男美女同士のほほえまカップル。また、エイラのペット・黒猫のロロンは人間に変身できたり人語を話せたりするなど、ファンタジー色たっぷりです。中世ヨーロッパを彷彿とさせる世界観と麗しい絵柄で、世界観にどっぷりと浸らせてくれますよ。
さらに特筆すべき点として、アロルドがある限定された人の血しか飲めないという設定の面白さが挙げられます。1巻の最後には、少女漫画以外も手がけるびっけ先生ならではの仕掛けがあり、読んだらすぐに2巻が読みたくなるはずです。
女子向け
『チョコレート・ヴァンパイア』
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『チョコレート・ヴァンパイア』 1～12巻 くまがい杏子／小学館
血で結ばれたイケショタ吸血鬼×強気女子のラブアクション
『あやかし緋扇』（小学館）のくまがい先生による最新作かつ、女性向け吸血鬼漫画の中でも定番の人気作。気の強い高1の千代と、美少女のような中2のイケメン吸血鬼・雪は、幼い頃に《紅血の契約》を結んだ関係。しかし、とある悲劇で吸血鬼を厭うようになった千代は、暴走した吸血鬼を取り締まる校内の警備隊に所属し、吸血鬼と対立する立場に。雪との契約の破棄を望みますが、雪はそれを頑なに拒絶します。
面白さの理由の一つは、少女漫画ならではの華やかさと、吸血鬼漫画の持つほの暗さのバランス。《紅血の契約》をした吸血鬼は契約相手の人間の血しか飲めなくなり、人間はほかの吸血鬼に襲われずにすむのですが……これはもはや結婚では……？
また、クールな顔立ちで尋常じゃない身体能力を持つ千代のアクション、かわいい顔でちゃんと雄みを見せる雪も見どころです。雪が四人兄弟の末っ子で、上のお兄ちゃんたちが全員違うタイプのイケメンなのもポイント。ヒロインの取り合い、ミスコン、運命めいた過去の事件など、少女漫画らしいイベントも盛りだくさんです。Fuuuuuuuテンション上がる！
反発しあっていながらも惹かれ合う雪と千代はまるでケンカップル。でも端から見たら明らかにカップル。そんなもどかしい関係にもだもだキュンキュンしたい方や、ショタっぽいのに男前の年下×しっかりしてそうなのに不器用なお姉さんのおねショタが好物の方にオススメです。
『吸血鬼と愉快な仲間たち』
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『吸血鬼と愉快な仲間たち』 1～4巻 羅川真里茂・木原音瀬／白泉社
少女漫画界とBL小説界のスターが手を組んだ！
アルベルト・アーヴィング、通称アルは、昼はコウモリ、夜は人間の姿で生きる不完全な吸血鬼。アメリカからうっかり日本に来てしまい、高塚暁（あきら）と奇妙な同居生活を送ることになります。アメリカ人ならではの国民性か、思ったことをストレートに言うアルと、不器用で頑固、人を寄せ付けずに生きてきた暁はケンカばかり。しかし、次第に二人はかけがえのない絆で結ばれていきます。一見コメディー色の強いタイトルですが、非常に心温まる内容です。
どうあがいても隠しきれないBLのかほりや、吸血鬼でも人間でもないアルベルトの葛藤、肉親の縁に恵まれなかった暁の孤独や切なさといった心理描写が、圧巻の画力とネーム力で表現されており、クオリティは相当のもの。
それもそのはず、原作は『美しいこと』（講談社）など切なさとトキメキとエロさのブレンドで右に出るものなしのBL小説家・木原音瀬先生の小説。それを、『赤ちゃんと僕』（白泉社）など数々のヒット作で知られる羅川真里茂先生がコミカライズしているのです。奇跡のコラボ。この時代に生まれてよかった。
そんな二人の日常生活を見られるだけでもお腹いっぱいなのに、アルを巻き込んだ殺人事件が起きたり、遺体の保存処理や修復を行うエンバーミングを通して命の尊さを実感したりと、読みどころはたっぷり。あとはなんといってもコウモリ型アルの可愛らしさも外せません！ 予言しておきましょう、あなたは読後に「コウモリ かわいい」で検索するはずです。
『黒薔薇アリス』
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『黒薔薇アリス』（新装版） 1～6巻 水城せとな／小学館
“許されない恋”が20世紀ウイーンと現代日本をつなぐ
物語の始まりは20世紀のウィーン。人気テノール歌手のディミトリは事故をきっかけに、死体に寄生する植物“吸血樹”になってしまいます。愛する女性の体を使って“繁殖”を行うため、理想の魂を求めていたディミトリは、現代の日本で女教師の梓を発見。密かに思い合っていた生徒の命を救うために「アリス」として生まれ変わった梓は、四人のイケメン吸血樹たちの“女王様”として、たった一人の繁殖相手を選ぶことになります。
プロローグこそヨーロッパを舞台にした、『ポーの一族』のようなロマンティックな雰囲気。しかし、突如として謎の連続自殺や大量の蜘蛛やら蟻やらが登場し、グロテスクな流れに。からの現代パートではめくるめく逆ハー展開！
各キャラの一筋縄ではいかない性格や、吸血樹は一度繁殖したら死ぬという設定など、読者をドギマギさせてやまない仕掛けの数々は、さすがヒットメーカーの水城せとな先生です。
▼水城先生の代表作『窮鼠はチーズの夢を見る』に関して詳しく知りたい方はこちらがおすすめ！
『窮鼠はチーズの夢を見る』実写映画公開決定！ 魅力を徹底考察【ネタバレ注意】
男子向け
『ハピネス』
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完結『ハピネス』 全10巻 押見修造／講談社
平凡な日常が悪夢と化す重厚な群像劇
連載中の『血の轍』（小学館）なども絶好調な押見修造先生作品。いじめられっ子のヘタレ男子高校生・誠は、夜道で女の子に襲われ吸血鬼になってしまいます。周囲の人間まで巻き込み、誠の平凡だった日常は一変。血への渇望や吸血鬼の少女・ノラに翻弄されていきます。そして悲劇が……！
誠といじめっ子だった勇樹、その恋人である奈緒、そして誠を助けたいと奔走する同級生・雪子と、彼女に近づく不審な男・桜根。それぞれの人生が濃厚に絡み合う群像劇です。
いじめ、親との確執などの思春期のリアルな描写や、魅力的で多彩な女子描写は押見先生ならでは。だからこそ、誰もが持つそんな日常がガラガラと壊れていく様が鮮烈で哀しいのです。また、大ゴマとねじれた線を大胆に使った作画、ゴッホの《星月夜》を思わせる不穏な夜空など、独特の表現で心が不安定になること間違いなし（※おすすめしています）。
吸血鬼になってしまった者、救おうとあがく者、何も知らないまま残された者……。それぞれの苦しみが痛いほど伝わってきて、きっと何回も「ハピネスどこ？？？？」という気持ちになるでしょう自分はなりました。涙
どうぞ最後まで読んで、登場人物たちのハピネス＝幸せの形を見届けてください。
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『血の轍』毒親を描いた話題作、引きこまれずにはいられない鬼気迫る描写を徹底解説！【ネタバレ注意！】
『終わりのセラフ』
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『終わりのセラフ』 1～21巻 鏡貴也・山本ヤマト・降矢大輔／集英社
吸血鬼殲滅を誓う少年の絆の物語
アニメ化もされた定番のダークファンタジー。未知のウイルスにより人口が激減した世界で、人間たちは吸血鬼に支配されてしまいます。地下の「吸血鬼世界」から「人間世界」へ逃げる過程で仲間を殺された優一郎は、吸血鬼の殲滅を誓って軍に入ります。
世界の滅亡から始まり、吸血鬼、天使、悪魔、宗教団体、“禁忌の呪法”を駆使した派手なバトル、そして謎に包まれた《終わりの天使（セラフ）》……と、厨二病患者大歓喜の展開のフルコース。すっきりと綺麗な絵柄で描かれる、大日本帝国軍軍服のような制服もSoooo Gooooodです。厨二病患者が保証します。
一貫して物語の軸になっているのは、大切な人との絆。孤児院で育ち、一匹狼気質の優一郎は、同じ施設で育ったミカエルや同級生のシノア、君月、そして上官であるグレンたちと出会うことで成長します。敵味方入り乱れた絆は、どのような物語の結末を導くのでしょうか？
呪術師養成学校時代のグレン中佐を主人公にした小説版『終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅』（講談社）で、破滅前の世界もぜひチェックを。
『銀狼ブラッドボーン』
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『銀狼ブラッドボーン』 1～12巻 艮田竜和・雪山しめじ／小学館
イケオジヴァンパイアハンターがグロテスクな猟奇事件に挑む
吸血鬼漫画で描かれがちなのが、永久に生きる吸血鬼の苦しみ。対照的な今作では、“老い”というタイムリミットと戦うめちゃつよヴァンパイアハンター（70歳）が主人公です。
近代イギリスを彷彿とさせる世界で、骨を抜かれて殺される、というおぞましい事件が多発。解決のために駆り出されたのが、かつて伝説の吸血鬼ハンターとして名を馳せた“銀狼”ハンス・ヴァーピット70歳です。やがてわかってきたのは、人間でも吸血鬼でもない、骨を咀嚼する「グリム」の存在。死者を蘇生させて戦わせるグリムを倒すため、ハンスはかつて殺したはずの宿敵・“吸血鬼の王”ファウストと手を組みます。そして、事態は人間・吸血鬼・グリムの壮絶な三つ巴の戦いに――。
美麗かつ読みやすい絵柄で、バトルシーンもコメディーシーンもスッと頭に入ってきます（それゆえグロシーンも本格的！ 苦手な方はご注意ください）。骨太な読み応えと、枯れ専なら思わず拝むだろうハンスのイケオジっぷりには喝采です。老いてなお未来に希望を見出すハンスと、過去に縛られたグリムの対照性が印象的。次から次へと繰り出される先の読めない展開に、きっと翻弄されるはずです。
『デビルズライン』
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完結『デビルズライン』 全14巻 花田陵／講談社
吸血鬼-人間のハーフの恋心と葛藤を描くダークアクション
人口の0.01%が吸血鬼で、ヒトと吸血鬼の結婚も浸透してきた世界。吸血鬼とヒトのハーフである警察官・安斎と大学院生のつかさの恋と、吸血鬼を殲滅しようと企むテロリストたちとの戦いが描かれます。
興奮したり、血を見たりすると「変異」する以外、吸血鬼とヒトとの違いはほとんどありません。しかし、ハーフである安斎は、自分の半分を流れる吸血鬼の血を恐れ、つかさを愛することに怯えています。百戦錬磨の警察官の持つ弱さに、母性本能をくすぐられまくるはずです。
加えて、誰が敵で誰が味方かわからないスリル、吸血鬼のような人間＆人間のような吸血鬼が対峙するサスペンスもたっぷり。養護施設で育てられた安斎の出生の秘密が明らかになると、面白さはさらに加速します。果たして吸血鬼とヒトの愛の結末は？
異色作
『吸血鬼すぐ死ぬ』
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『吸血鬼すぐ死ぬ』 1～14巻 盆ノ木至／秋田書店
祝アニメ化！ “カッコいい吸血鬼”の概念をぶち壊すハイテンポギャグ
アニメ化が決定したばかりのギャグ漫画。「吸血鬼」といえば力が強い、殺すには胸に杭を打ち込むしかないなど、カッコよくて恐ろしい存在です。しかし、今作に登場するドラルクはタイトル通り「すぐ死ぬ」。ドアに挟まれただけで、なんなら「ブサイク」と言われただけで灰になっちゃうし割とあっさり生き返る。タイトルが秀逸すぎでは？
そんなか弱き吸血鬼と、なぜかコンビを組むことになってしまったのが吸血鬼退治人のロナルドです。二人のゆるっとした同居生活（しかも新横浜で）とハイテンションギャグの絶妙なバランスにやみつきになること間違いなし！ まったく秋田書店さまの懐とレパートリーの広さったら本当にいつもありがとうございます。
新横浜に平然とギルドがあったり、ドラルク以外にもキテレツな吸血鬼が跋扈したりと、トンデモな設定と休みなく繰り出されるギャグとの合わせ技がまたユニークです。よく死ぬけど人生を楽しく謳歌しているドラルクの生き様に、読み進めるほどに無敵さや憧れを感じるように……なるとかならないとか。一周回ってかっこいい、そんな次世代ヴァンパイアをぜひ愛でてください！
▼『吸血鬼すぐ死ぬ』に関して詳しく知りたい方はこちらがおすすめ！
『吸血鬼すぐ死ぬ』吸血鬼とハンターが織りなす爆笑ギャグ漫画
『羊のうた』
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完結『羊のうた』 全7巻 冬目景／幻冬舎コミックス
理不尽な運命に懸命に抗う姉弟の破滅の物語
体調不良に悩む男子高生の高城一砂（かずな）は、離れて暮らしていた姉・千砂（ちずな）と偶然再会し、高城家に伝わる“奇病”の存在を知らされます。それは、他人の血を吸いたくなり、最悪の場合発狂して死ぬというもの。病気が原因で実の父母が亡くなっていたことを知った一砂は、病気の存在を隠し、他人から離れるために、姉と二人だけの生活を始めます。
血を吸いたくなる病気がテーマなので、本作は厳密には「吸血鬼」漫画ではありません。しかし、和風ゴシックな雰囲気や、ファムファタルめいた美しい千砂の存在感は強烈。強気で気高く、理不尽な運命にも屈しない果敢な千砂は、女子高生とは思えぬ魅力的なヒロインです。
また、主人公の一砂も応援したくなる好青年。中学から好きだった同級生の八重樫や、義理の父母を傷つけたくないと葛藤し、苦しむ心理が、丹念な筆致で描かれます。一砂と千砂……病気さえなかったらきっと幸せな家族になっただろうに……ほろり。
限定された登場人物だけで繰り広げられる緊張感あるドラマは、読み始めたら先が気になること請け合いです。儚く、美しく、そして絶望に満ちた破滅の物語、その結末やいかに？
最後に
飛び散る鮮血、首筋の噛み跡、ヨーロッパ風の麗しい世界観にだいたい美形の登場人物、そしてなぜか当然のごとく登場する薔薇あるいは武器。改めて主張します、吸血鬼漫画は……いいぞ……と。
今回は吸血鬼の持つ薄暗いイメージからくるダークな作品や、不老不死の設定を生かしたアクションもの、はたまた強さを逆手にとったギャグ漫画をご紹介しましたが、やはり“吸血鬼”はどんな味付けでもおいしくなる逸材だと痛感！ 今後も新たなる吸血鬼漫画が生み出されるのが楽しみです。
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