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『マンガに、編集って必要ですか?』というタイトルに抗うマンガ|鷹野凌の漫画レビュー

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今回は『マンガに、編集って必要ですか?』をレビューします。崖っぷち中堅漫画家と、女性ファッション誌から異動してきた新人編集者の、ガチな仕事漫画です。著者は青木U平(あおき・ゆうへい)さん。新潮社「くらげバンチ」での連載作品で、2019年の末に完結、単行本は全3巻が刊行されています。

『マンガに、編集って必要ですか?』作品紹介

『マンガに、編集って必要ですか?』書影『マンガに、編集って必要ですか?』書影

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完結『マンガに、編集って必要ですか?』 全3巻 青木U平/新潮社

まるで「もう編集者は不要」みたいなタイトルだけど……?

本作の主人公は、漫画家・佐木小次郎(さき・こじろう)45歳。青年誌でキャリア8年の中堅、と言えば聞こえはいいけど、最近の作品はどれも2~3巻で打ち切られている、売れない作家。かなり崖っぷちな状態です。

そんな佐木の担当編集は、女性ファッション誌から異動してきたばかりの、坂本涼(さかもと・りょう)24歳。漫画への情熱があり明るく元気で一生懸命なのはいいけど、若い女性の感性がどうしても佐木とかみ合いません。どうして彼女を編集担当にしたのか、編集部の意図が理解できない佐木。同じく彼女が担当編集で、佐木のアシスタントになっている若者から、

「ぶっちゃけ 編集って いらなくないスか?」

と言われ、佐木は考え込んでしまいます。最近よく言われる「編集者不要論」です。本作のタイトルも、いかにもそんな感じですよね。佐木も正直、坂本との不毛な雑談は、さっさと切り上げて早く帰りたいと思っています。しかし佐木は、出版社に育ててもらったという恩義も感じているのです。

実は、編集者不要論に抗う物語

そう、実は本作、まるで「もう編集者は不要」みたいなタイトルですが、実は、編集者が作家の伴走者として共に悩み、苦しみ、もがき、泣く話だったりします。ネタバレは避けますが、実のところ「編集者不要論」に抗う物語と言っていいでしょう。序盤は、男女差とか、世代差といった「ギャップ」の描写にクスッとしますが、だんだんシビアな話になっていって胸が痛くなります。

あくまでこれは一般論ですが、出版社に勤務している編集者は、会社から給料を貰っている身分。基本的には、会社に逆らうのが難しい立場です。例えば「連載打ち切り」は、自営業者の作家にとってはリアルに収入が無くなる死刑宣告にも等しい話。打ち切りにならないよう作家が頑張るのはもちろんですが、担当編集がどれだけ頑張れるか。

不真面目な編集者ならクビにならない程度にサボりますが、真面目な編集者は会社と作家の板挟みになって悩みます。作家の利益と会社の利益、どちらを選ぶか? という選択を迫られたら、最終的には、作家を捨てて会社を選ぶか、会社を辞めて作家に付くか。リアルで作家側に付き、出版社との交渉を代理で行う「エージェント」という立場を選ぶ人も、最近は少しずつ増えてきました。

では坂本は? というと、もちろん真面目な編集者。真面目すぎて……この先は、実際に読んで確かめてみてください。なんとも言えない読後感の全3巻、読み出したら止まりません。

『マンガに、編集って必要ですか?』書影『マンガに、編集って必要ですか?』書影

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完結『マンガに、編集って必要ですか?』 全3巻 青木U平/新潮社

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