[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/
このWebサイトの全ての機能を利用するためにはJavaScriptを有効にする必要があります。
  1. HOME
  2. 書評
  3. 「火と灰—アマチュア政治家の成功と失敗」書評 敗北しても失わぬ政治への敬意

「火と灰—アマチュア政治家の成功と失敗」書評 敗北しても失わぬ政治への敬意

評者: 杉田敦 / 朝⽇新聞掲載:2015年05月03日
火と灰 アマチュア政治家の成功と失敗 著者:マイケル・イグナティエフ 出版社:風行社 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784862580771
発売⽇:
サイズ: 19cm/256p

火と灰—アマチュア政治家の成功と失敗 [著]マイケル・イグナティエフ

良き政治学者は良き政治家たりうるのか。著者は体験から答える、「ノー」と。思想史をふまえ福祉国家を論じた『ニーズ・オブ・ストレンジャーズ』などで知られるイグナティエフは、アメリカの有名大学から、ある日突然、故郷カナダの政界に連れ出される。学識に加え、幼少時から政界中枢に接触した経験をもつ彼には自負があった。
 しかし、実際の政治の世界は、理念など通じない「身体的」なものであった。有権者は政治家を仲間として信用しなければ耳もかさない。目の前の問題に答えをもたなければ相手にしない。発する言葉はすべて監視され、敵陣営によって曲解され攻撃される。かくしてイグナティエフは、「アメリカ人」「訪問者」と批判され、彼が率いる野党は大敗北を喫して終わる。
 そもそもマキャベリなど、高名な政治思想家はことごとく政治的な敗北者であった。それを確認しながら、なお「天職」としての政治への敬意を著者は失わない。
    ◇
 添谷育志・金田耕一訳、風行社・3024円