EYは、最新の税務・財務に関する「EYタックス・アンド・ファイナンス・オペレート(TFO)調査」を発表した。
同調査によると、生成AIは税務・財務部門の変革を促し、非効率性や人材不足、グローバルミニマム課税に関連する事項を含む新たな報告義務へのコンプライアンス対応に役立つことが明らかになった。
しかし、最高財務責任者(CFO)と税務担当者の10人に9人(87%)は、生成AIが効率性と有効性の向上を促進すると回答しており、2023年の15%から増加する一方で、4人に3人(75%)は生成AIへの取り組みは、まだ初期段階にあると回答した。
2024年の調査では、32の国・地域、18の業界を対象に1,600人のCFOおよび税務の専門家の知見を収集し、税務・財務部門は、増大するコスト圧力、人材不足、新たな税務規制へのコンプライアンスに対応するために変革が必要になると結論づけているという。
ビジョンや目的の達成を阻む最大の障壁は今やコスト
6年にわたる同調査の歴史において初めて、コスト面でのプレッシャーが回答者の最大の懸念事項として浮上。コスト削減の積み重ねとインフレにより、税務・財務部門の予算は実質的に大幅に減少している。回答者のほぼ半数(49%)が予算の効率的な管理を最優先事項として挙げており、86%がコスト削減を検討しているという。
規制と報告に関するプレッシャーが、データとテクノロジーの変革の必要性を後押し
税務部門がより複雑でデータ量の多い税務業務を管理する必要に迫られていることが浮き彫りになったとしている。これには、まもなく100ヵ国近くで義務化されるリアルタイムのデジタル税務申告や電子インボイスが含まれる。
また、これらの義務には、OECDによる提言の採択への準拠も含まれる。たとえば、税源浸食と利益移転プロジェクト(BEPS 2.0)の第2の柱では、各国に対して、大企業を対象に最低15%のグローバルミニマム課税を設定するよう求めている。
42%の企業が、第2の柱の報告データのソースに大幅な数の調整が必要になると予想しており、82%が報告プロセスに中程度から大幅な変更が必要になると予想しているという。
税務・財務部門の人材不足が危機的レベルに接近
人材不足は今や重大な課題となっており、税務・財務担当者の10人中7人(70%)が、シニア層の退職が進む一方で、会計士の数が減少していることの影響を実感。半数以上(53%)が、有資格者の確保と人材の引き付けに苦労していると述べている。
さらに、62%が大学を卒業していない従業員がますます重要な人材源になっていると捉えていることが報告されているという。
回答者の半数以上(55%)は、生成AIによって税務部門の人員削減につながることはないだろうと回答。代わりに、企業は税務・財務部門の従業員の時間を定型業務であるコンプライアンス業務から解放し、より戦略的で付加価値の高い業務に振り分けることになると同社は予測している。
調査概要
- 調査名称:2024年EYタックス・アンド・ファイナンス・オペレート(TFO)調査
- 調査期間:2024年6~7月
- 調査主体:オックスフォード・エコノミクス
- 調査対象:32の国・地域、18の業界にわたる1,600人の経営幹部
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