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松屋のカレーが290円→680円に高騰、価格妥当性に疑問?肉が見えず黄色の油脂

文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト
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松屋のカレーが290円→680円に高騰、価格妥当性に疑問?肉が見えず黄色の油脂の画像1
「松屋ビーフカレー」(撮影=重盛高雄)

 大手牛丼チェーン「松屋」のメニューで根強いファンが多いことで知られるカレーライス。なかでももっともお手頃な商品「松屋ビーフカレー」が「いつの間にか680円(並盛/税込)にまで値上がりしている」として驚きの声が広まっている。かつては290円で販売されていたこともあった松屋のカレーだが、なぜここまで値上げされたのか、そして680円の価値はあるといえるのか、今回は「松屋のカレーの真実」に迫りたい。

 2000年には290円で販売されていた松屋のカレーだが、この20年の間に徐々に値上がり。昨年5月の価格改定時には「オリジナルカレー」の価格は480円のまま据え置かれたものの、今年1月には「オリジナルカレー」の販売が終了となる一方で、終売となっていた「創業ビーフカレー」をリニューアルしたメニューが復活。松屋のカレーメニューの最低価格が一気に200円も上がることになり、事実上の値上げと受け止める向きも多かった。

 ちなみに松屋は現在、計7種類のカレー商品を提供しており、類似商品を含めるとロングセラーの「ビーフカレギュウ」(並盛)は880円、最高値の「チーズかけハンバーグビーフカレー」(並盛)は1060円と1000円台を突破している。

「私が大学生の頃、松屋のカレーは290円で、安くて美味いので本当に毎日食べていた。あくまで個人的な感想だが、他の牛丼チェーンのカレーより脂っぽくて濃いというか、いろんな具材やスパイスが凝縮されていて、本格的で辛め。ココイチのカレーよりも好き。680円が高いかと聞かれれば、確かに安くはないが、今でも月に2~3回は食べに行く。もう松屋で牛めしを食べることはないが、やっぱり他の店とは一味違うカレーはやめられない」(40代男性)

 松屋に限らず大手牛丼チェーン各社はカレーのメニューを提供している。たとえば「吉野家」のスタンダードな「スパイシーカレー」は415円、「すき家」の「カレー」は490円。すき家の大きな炭火焼きの骨付きチキンが乗せられた「炭火焼きほろほろチキンカレー」は「松屋ビーフカレー」とほぼ同額の690円となっており、松屋の価格設定の強気ぶりがうかがえる。

「大手カレー専門チェーンのココイチ(『カレーハウスCoCo壱番屋』)の定番メニュー『ポークカレー』は591円なので、松屋の『創業ビーフカレー』はそれよりも高いものの、同じくココイチの牛肉を使用した『ビーフカレー』(718円)を若干下回っており、絶妙な価格設定となっている。『同じビーフカレーを食べるなら、ココイチより少し安い松屋に行こう』という消費者行動を誘おうと、ココイチの価格を意識しているのでは」(外食チェーン関係者)

 松屋のカレーの価格設定は妥当といえるのか。フードアナリストの重盛高雄氏に解説してもらう。

付加価値を備えることなく価格だけが高騰

 松屋の定番は牛めしとカレーだ。昔は牛めしもカレーも庶民に優しい価格設定であったが、カレーは今や並盛で680円になっている。牛バラ肉を丸ごと煮込んでいるという触れ込みのとおり、一口食べると、つくだ煮やコンビーフのごとく肉と思しき繊維がスプーンに張り付いている。ビーフカレーと名乗るが、煮込んであるせいか肉らしいものは見当たらない。他社はレトルトを湯煎して提供するところも多いが、松屋は焼き物以外「レンチン」で提供している。温度が上がりきらないためか、残念ながら油分が分離し、ざらざらとした食感が強い。カレー本来のスパイスを感じさせず、最後のほうは黄色い油脂でご飯を食べる印象だ(以下の画像参照)。「これぞ松屋テイスト」としてファンも多いのだろうが、一般客にしてみると脂っこいと感じるかもしれない。

松屋のカレーが290円→680円に高騰、価格妥当性に疑問?肉が見えず黄色の油脂の画像2
「松屋ビーフカレー」完食後の皿

 松屋と同じく松屋フーズが運営する「マイカリー食堂」のカレーとは口当たりが大きく異なり、松屋のカレーの辛さは1種類しかなく、どちらかといえば家庭風の味わいを感じさせる。

 原材料価格の上昇のなかで戦略的に牛めしの価格を極力、据え置きにした分、他の商品に価格転嫁された印象を受ける。特に、みそ汁がついているとはいえ並盛680円は定食ではない単体価格としても高めの価格設定。マイカリー食堂であれば「手仕込みロースかつカレー(並盛り)が590円で食べることができる。

 松屋のビーフカレーは牛めし同様に素早く提供されるが、原材料価格や人件費の上昇を勘案しても、680円の価格妥当性を見いだすことはできなかった。牛めしは、かつて「プレミアム牛めし」を販売していたが価値の創造ができずに、「牛めし」に一本化された。消費者にその価値がうまく伝わっていないのかもしれないが、ビーフカレーは特段の付加価値を備えることなく、価格だけが高騰したように映る。さらに「松屋特製ロースカツビーフカレー」に至っては並盛で900円と1000円に迫る価格設定となっている。松屋しかない立地であれば強気の価格設定と感じるが、近隣に価格相応の価値を持つ他の店舗がある場合は、そちらを選択する客が多いのではないだろうか。

(文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト)

重盛高雄/フードアナリスト

重盛高雄/フードアナリスト

ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。他にもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。
フードアナリスト・プロモーション株式会社 重盛高雄プロフィール

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