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日本映画界の大御所・原田眞人監督、パワハラ告発に反論「事実無根の誹謗中傷」

文=Business Journal編集部
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日本映画界の大御所・原田眞人監督、パワハラ告発に反論「事実無根の誹謗中傷」の画像1
原田眞人監督(「Wikipedia」より

 映画監督・原田眞人氏がスタッフ、キャストへパワハラを行っていると、俳優の松崎悠希がTwitter上に投稿し、物議を醸しているが、原田氏が否定した(後述参照)。ここ最近、相次ぐ有名監督や俳優の問題行為の告発に揺れている日本映画界。まず、3月発売の「週刊文春」(文藝春秋)が、榊英雄氏が映画監督という立場を利用して女優を目指す女性と合意を得ないまま不適切な行為におよんでいたと報道。続けて「文春」は、人気俳優の木下ほうかも同様の行為を行っていたと伝えた。さらに5日発売の「週刊女性」(主婦と生活社)は、映画監督の園子温氏が日頃から女優に、自身の作品への出演話を持ち掛けながら肉体関係を迫っているとスクープ。そして7日発売の「文春」は、園氏の右腕ともいえる存在である映画プロデューサー・梅川治男氏が、立場を利用して女優に不適切な行為におよんでいると報じた。

 一連の報道を受け、榊氏の監督作『蜜月』『ハザードランプ』は公開延期となり、木下は出演予定だったドラマを降板し無期限の活動休止に入るなど、早くもその影響が広まりつつある。

 現在72歳の原田氏はこれまで、『金融腐蝕列島 呪縛』(1999年)、『突入せよ! あさま山荘事件』(2002年)、『クライマーズ・ハイ』(08年)など数多くのヒット作を手掛けた日本映画界の大御所。最近では、岡田准一主演の『関ヶ原』(17年)、木村拓哉と二宮和也が初共演した『検察側の罪人』(18年)、岡田主演の『燃えよ剣』(21年)など、ジャニーズタレントを起用した話題作が続いている。

 そんな原田氏にまつわる情報が取り沙汰されるようになったのは、3月に俳優の松崎悠希がTwitter上に投稿した、次のようなツイートがきっかけだった。

<原田眞人による俳優へのパワハラエピソードがどんどん出てくるんだけど、なんでこれが「面白エピソード」みたいに紹介されてんの?俳優仲間に聞いても「脇役をゴミのように扱う」ってみんな言うんだけど。なんで放置されてんの?>

<原田眞人の新作映画『ヘルドッグス』で、原田眞人による脇役俳優(主演級には激甘らしいですね!)や撮影スタッフへのパワハラを防止する、どのような「新たな措置」が取られたのか知っている方は教えて下さい>

バラエティ番組でも“怖い監督”

 原田氏といえば、過去にテレビのバラエティ番組でも“怖い監督”として取り上げられたこともあり、たとえば17年8月放送の『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)でも“怖いと評判”だと取り上げられたことも。ちなみに同番組内では岡田が、原田氏のあまりの厳しさに撮影現場で女優が泣き出したというエピソードも語っていた。

「原田さんがスタッフを怒鳴ったりして、さらに現場が過酷だという話は広まっているので、業界スタッフの間では“できれば原田さんの現場には入りたくない”という声があるのは事実。原田さんと同年代の有名な監督でも、スタッフやキャストへの暴言や暴力などパワハラが酷いことで恐れられている人も何人かいるが、彼ら世代が若い頃は、映画業界全体でそういうことが当たり前だった。そんな環境でのし上がって来た人たちに今さら“それはダメですよ”と言っても、仕方ない気もする」(映画制作スタッフ)

 また、50代の映画会社関係者はいう。

「もう20年くらい前から、原田さんがよくスタッフを怒鳴るという話は有名だった。もっとも、昔はそんなのは当たり前だったので、特段に驚くべきことではないが、以前、原田さんがブログで実名を晒してスタッフを批判していたことがあり(編注:02年に『突入せよ! あさま山荘事件』のスタッフについて原田氏がブログで言及)、“いかがなものか”という疑問の声が業界内でも広まったことはある。監督による助監督をはじめとするスタッフへの叱責はあくまで“愛のある指導”であるべきで、大前提として“監督はスタッフを守る立場”でなければならない」

 榊氏や園氏、梅川氏をめぐる告発は、彼らの女性への不適切な行為に関するものだが、映画業界関係者はいう。

原田眞人さんに関していえば、女性関係の問題については聞いたことがないし、そういうことはしない人だと思う。彼の現場がキツイといわれるが、たとえば戦国武将モノの撮影であれば何週間も山の中で、数百人にのぼる大所帯で早朝から夜まで撮影が連日行われることもあり、スタッフもキャストも精神的肉体的に追い込まれるので、スタッフが“飛ぶ”ことはあるだろうし、どんな現場でも急にスタッフが来なくなることは起こる。“スタッフやキャストに厳しい”といっても、それだけ真剣にクオリティを追求している証かもしれないし、彼が多くの大御所俳優たちから慕われ尊敬されているという事実は曲げられない」

 また、別の映画業界関係者はいう。

「小津安二郎や溝口健二、相米慎二など往年の名監督の現場では、ワンシーンを撮るのに延々と丸一日、一人の俳優に“駄目出し”し続けるなんてザラだった。監督が現場で怒鳴るくらいで批判されていたら、映画撮影なんて成立しない。もっとも、黒沢清や周防正行、是枝裕和といった最近の監督は、現場でも誰に対しても丁寧で腰が低いタイプの人が多い」

原田氏の回答

 一連の告発について当サイトが原田氏に見解を問い合わせたところ、次のような回答を得た。

【原田氏の回答】

 先ず松崎氏のTwitterの投稿に関してですが、映画関係者から、こんなことを書いている人がいるとの連絡があり、一部を読みましたが、事実を曲解もしくは事実無根の誹謗中傷だったので、現在製作中の映画会社スタッフとも相談中であり、松崎氏に対するコメントは差し控えます。ただし、このままTwitterの投稿が削除されないようであれば、法的手段をとらなければいけないだろう、という認識です。それを踏まえて、質問事項にお答えします。

Q1「現場スタッフ&端役へのパワハラを常態化している」「脇役をゴミのように扱う」に関して。

 そのような事実はありません。現場で大声を出すことはあります。日本映画の撮影現場は、『関ヶ原』のようないわゆる大作であっても、ぎりぎりの予算、ぎりぎりのスケジュールで撮っています。撮り直しがほぼできないことを前提として撮るわけで、効率よく進めるための緊張感はあります。数百人のエキストラが出演する群衆シーンで助監督が勘違いして、監督とは別の指示を出すこともあります。その場合は大声で修正します。私が怒る時の声の多くは「違うだろ!」の一声です。怒り続けるわけでもありません。怒るときは、現場を進めるためであって、現場を停滞させないことは映画監督の使命の原点です。

 端役への扱いでいえば、100の端役があったとして、1人か2人、演出プランとは違うことをやって、私が注意指導を行わなければならないときもあります。松崎氏は「主役には激甘で脇役もしくは端役に厳しい」というようなことを投稿していたと記憶していますが、これは事実をかなりねじまげた表現です。

 先ず、主役クラスの役者とは準備段階から接する機会が多くあります。衣装合わせにも時間をかけますし、リハーサルも、メインの役者のメインのシーンは入念にやります。ですから、私の演出意図を明確に理解しているので、現場で問題もおきません。

 端役の場合は、どんなに小さな役でも、オーディションで私自身が見て会話して選びます。ただし、準備期間中に打ち合わせの時間はほぼ取れません。しかし、作品の雰囲気を知っておいてもらいたいので、クランクイン前の全体読み合わせには、セリフがなくても参加を促します。これは原田組恒例のイヴェントで、ちょい役でも大切にすることから、私の作品に参加したいという無名の役者が多いことに繋がっています。さらには、端役の役者であっても、原田組未経験者には、前もって現場の空気を知ってもらうため、スケジュールに支障がなければ、それぞれの本番前日に現場入りし、撮影見学をしてもらうようにしています。それでも、撮影当日、私から「違うだろ!」とか「何やってんだ!」と怒られる人間が出ることはあります。

 今思いつく例としては、ある作品で、集団の芝居を様々なアングルで撮っているときに、1人だけ、立ち位置をカット毎に変えている役者がいました。少しずつ集団の中にいるメインの役者に近づいて、彼のアングルになったときにはその隣に立っていました。助監督が気付く前に私が気付いて「元の位置に戻れ!」と怒った記憶はあります。

 同じくQ1の、岡田さんの『行列のできる法律相談所』の発言に関して。

 あまりの厳しさに女優が泣き出したわけではありません。これは、岡田さんが、テレビ向けに面白可笑しく話を脚色したのだろうと思います。この女優が泣き出したのは、一言のセリフが言えない悔しさからだったと記憶しています。彼女は、オーディションで私が選び、セリフは少ないけれど、目立つ役で抜擢しました。全体の読み合わせのときに、セリフのトーンがおかしかったので、セリフの背景にある人物のイメージなどを説明し、参考のために、居合わせた何人かの女優にそのセリフを言わせて違いをわかってもらおうとしました。本番はその数週間後でしたから、こういう時代劇を見て研究するようにといった色々な助言もしました。

 撮影当日、リハーサルの時点で、やはりフラットな味のないセリフの言い方だったので、調度見学に来ていたヴェテラン女優に頼んで、撮影合間にセリフのレッスンをしてもらいました。本番はいつもどおり、様々なアングルから撮って行くので、彼女がセリフを言う回数は複数テイクも含めて十数回あったと思います。しかし、何回言っても、なかなか望む言い方にはなりませんでした。彼女のセリフは数シーン程度の短いものだったので、あとで吹き替えればいいのですが、本人のために、なんとか演じ切ってもらいたかったため、ぎりぎりまでねばっているうちに泣き出したのです。私は、多数の俳優・女優と撮影をしてきた経験から、彼女の涙は悔し涙だと理解しています。いずれにせよ、彼女のセリフは別の女優に吹き替えてもらっています。

Q2「現場での暴力や暴言などのパワハラが常態化、それに耐えかねて現場を離脱するスタッフが出ることもある」

 暴力をふるったことなどなく、暴言もありません。現場を離脱するスタッフが出ることはありますが、大抵が本人の事情です。私に怒鳴られたからやめた、というスタッフがいたという記憶はありません。スタッフの大多数は、原田組の現場は愉しい、と言ってくれます。

『突入せよ』の問題部分は、2002年当時の私の愚かさに起因しています。現場での出来事を逐一ブログに書くことにスタッフが反発し、私自身も反省して謝罪しました。当時は、映画をめざす若者に、現場で何が起きているかをリアルタイムで伝えたい、という気持ちがあって、日々の出来事を書いてしまったのです。これは映画監督としてのルール違反であることは明白でした。

(文=Business Journal編集部)

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