■日清戦後に芽生えていた「近代国家」 韓国や北朝鮮は、ナショナリズムの強い国だという印象がある。そしてそれが「反日」的であるのは、日本の植民地化への民族的な抵抗の中で形成されたためだと理解されているように思う。 しかし本書はこうした近代朝鮮のナショナリズム形成についての理解を、それが生み出された時点に立ち返って、修正するものである。近代朝鮮の民族主義を生み出す決定的なきっかけになったのは、日本の植民地化が始まる以前に、資本主義世界体制への編入を迫る西欧の衝撃であったというのが、ここでの説明である。 そのナショナリズムを作り出した媒体は、日清戦争後の1895年から、次々とソウルの知識人によって創刊された新聞だった。それらの新聞に見られた「文明国」に追いつこうとする知識人の民族主義の論理が、第2次世界大戦後の韓国・北朝鮮のナショナリズムの原型になったというのである。 著者はカナダのトロント大学