◆◆◆ ニューヒロインの登場は鮮やかだった。 9月に埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で行われた日本インカレ女子100m決勝。7レーンに入った蔵重は中盤から伸びやかに加速し、真っ先にフィニッシュラインに駆け込んだ。 同種目で1年生が優勝するのは、2007年の高橋萌木子(平成国際大)以来16年ぶり。さらに、蔵重が11秒76(−0.3)、岡根和奏(2年)が11秒78、奥野由萌(2年)が11秒81と甲南大トリオが表彰台を独占したのだ。これは女子100mで大会史上初の快挙となった。 蔵重は意外にも、1年生優勝を決めた直後はあまり喜ぶ様子を見せなかった。感情をあらわにしたのはその数分後。電光掲示板に岡根、奥野の名前が並んだことを確認すると、わっと声をあげて大きく飛び跳ねた。 「これまで決勝ラウンドに同じ学校の選手が揃って進めたという経験がなかったんです。もちろん個人種目なので自分の順位も大切なので