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特集「アメリカをめざす中国人」(全4本)

◆経済も軍事も対立する二つの大国
ソビエト連邦崩壊後の世界は、米国が唯一の超大国として経済、軍事、科学などのあらゆる国際秩序の中心にいました。しかし2000年代に入ると、グローバリゼーションの拡大とともに中国の経済力が飛躍的に向上。GDPは米国の4分の3の規模となり、世界2位の経済大国になりました。また軍事面においても中国は、米国、ロシアを追う3番手。科学技術にも力を入れており、独自の衛星測位システムを構築したり、月探査機を打ち上げたりと、宇宙開発の動きも加速させています。しかしながら依然として国家体制は共産主義を維持しており、さらには「中華思想」をベースとした拡大主義は、民主主義国家にとって大きな脅威。米中双方の「正義」がぶつかり合い、出口の見えない対立が続いています。
 
◆人口増加の最大勢力となったアジア系移民
2015年から65年の間に、米国の人口は36%増加して4億4100万人になると予想されており、その増加分の80%以上は移民とその子孫が占める見込みです。増加が著しいのがアジア系移民で、このままのペースで増加すれば、2055年にはヒスパニック系を上回り、米国最大の移民グループになると言われています。アジア系移民では、卒業後も滞在する中国やインドの留学生が中心ですが、メキシコ国境からの不法移民も増えています。不法移民の中国人たちの多くは、米国へ入国後に亡命申請を行います。表向きの理由は「自由がほしかった」「宗教的な迫害を受けた」などですが、コロナ禍以降の中国経済の低迷による生活困窮が本当の理由という中国人も少なくありません。
 
◆中国人にとっての、もう一つの「アメリカンドリーム」
かつて「アメリカンドリーム」という言葉が、移民や開拓者を奮い立たせました。いまだ世界最大の経済大国である米国で、平等に与えられるチャンスを生かして成功を勝ち取ることを意味し、現代でも利益や名誉を求めて、多くの挑戦者が大陸に渡っています。そして多くの中国人が手にしたいものは、経済的な成功だけにとどまりません。高いレベルの教育と社会福祉、そして何よりも自由を求めて、生まれくる子どもに市民権を与えることも、彼らの大きな夢。富裕層だけでなく、中国国内に1億人はいるという中流層までも米国への出産旅行を企てています。中国人にとって米国の市民権を得ることは、何よりも大きな成功といえるのかもしれません。

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