安易なファシズムのレッテル貼りに警鐘を鳴らす重要な視点
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ファシズムとロシア 単行本 – 2022/2/26
マルレーヌ・ラリュエル
(著),
浜 由樹子
(翻訳)
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内容紹介
冷戦終結から30余年、欧米主導の一極化した国際秩序への反発から、世界各国で反リベラリズムの潮流が湧き起こっている。そんな中、プーチン・ロシアは、ウクライナへの軍事的干渉、クリミアの併合をはじめ旧ソ連の周辺諸国に対して軍事的圧力をかけるなど強権的な言動をとり続け、国際秩序に揺さぶりをかけている。そのようなロシアの行動は、西側諸国からファシズムと批判されている。本書は、「ファシズム国家」とのレッテルが貼られるロシアを、幅広い視野から冷静に分析、プーチン体制の構造とロシアの地政学的戦略をわかりやすく読み解く。今のロシアを、そしてヨーロッパの将来を占うための必読書であり、混迷する国際情勢の分析にとって貴重な手がかりとなる作品である。
目次
日本語版への序文 マルレーヌ・ラリュエル
序章 ロシアとファシズムをめぐる情景
「ファシズム」というレッテル貼りの横行
政治的戦略の存在
ファシズムとヨーロッパにおけるロシアの立ち位置
第1章 ロシアはファシズムか あるいは反リベラリズムか
ファシズムの定義
「ロシア・ファシズム」論へのアプローチ
反リベラリズムの台頭と現在のファシズム論争
三つの層からロシアのファシズムを読み解く
第2章 ソ連時代のファシズムを検証する
第二次世界大戦の強力な叙事詩の構築
政治的利用されるファシズム
ナチ・ドイツへの秘めた魅惑
ナチ・プロパガンダ
犯罪者文化
映画と文化
国家機構におけるナショナリズムの台頭
第3章 プーチン下で復活した反ファシズム
戦争叙事詩の改編と新たな伝統の創造
ファシズムについての教育と研究――教科書問題と学術的論争
ロシア世論におけるファシズム観
第4章 記憶をめぐる戦争
中・東欧の歴史叙述を作り変える
「共産主義版ニュルンベルク」実現に向けて
ロシアの反応
ウクライナ2014――大祖国戦争の再来
第5章 プーチン体制の構造を読み解く
ハイブリッドで場当たり的な体制
軍産複合体――ソ連スタイルの教化を求めて
正教界――ツァーリズム、反革命亡命者、そして黒百人組
第6章 ロシアのファシズム ――思想家たちと実践者たち
ロシアの極右――常に傍流
武装組織の台頭と美化される自警団文化
ファシズムを教義として復活させる
第7章 ヨーロッパ極右とロシアの蜜月
ロシアのヨーロッパ寄りアヴァン・ギャルド
2000年代の転換――「ロージナ(祖国)」とモスクワ総主教庁
第三の波――クレムリンの新たなヨーロッパ同盟者探し
第8章 なぜロシアはファシズム国家ではないのか
歴史のアナロジーを脱構築する
「プーチンはファシストではない」
ユートピア的思想の欠如
エスノ・ナショナリズムでもなく、帝国主義でもなく、ポスト・コロニアリズム
極右とクレムリンの微妙な関係
ファシズムではロシアは理解できない
終章 ロシアの記憶とヨーロッパの将来
ファシズムのレッテルが教えること
ヨーロッパの名の下で西側に挑む
ヨーロッパ・アイデンティティをめぐるロシアのジレンマとファシズム
謝辞
訳者解説 浜 由樹子
原注一覧 / 文献一覧 / 索引
冷戦終結から30余年、欧米主導の一極化した国際秩序への反発から、世界各国で反リベラリズムの潮流が湧き起こっている。そんな中、プーチン・ロシアは、ウクライナへの軍事的干渉、クリミアの併合をはじめ旧ソ連の周辺諸国に対して軍事的圧力をかけるなど強権的な言動をとり続け、国際秩序に揺さぶりをかけている。そのようなロシアの行動は、西側諸国からファシズムと批判されている。本書は、「ファシズム国家」とのレッテルが貼られるロシアを、幅広い視野から冷静に分析、プーチン体制の構造とロシアの地政学的戦略をわかりやすく読み解く。今のロシアを、そしてヨーロッパの将来を占うための必読書であり、混迷する国際情勢の分析にとって貴重な手がかりとなる作品である。
目次
日本語版への序文 マルレーヌ・ラリュエル
序章 ロシアとファシズムをめぐる情景
「ファシズム」というレッテル貼りの横行
政治的戦略の存在
ファシズムとヨーロッパにおけるロシアの立ち位置
第1章 ロシアはファシズムか あるいは反リベラリズムか
ファシズムの定義
「ロシア・ファシズム」論へのアプローチ
反リベラリズムの台頭と現在のファシズム論争
三つの層からロシアのファシズムを読み解く
第2章 ソ連時代のファシズムを検証する
第二次世界大戦の強力な叙事詩の構築
政治的利用されるファシズム
ナチ・ドイツへの秘めた魅惑
ナチ・プロパガンダ
犯罪者文化
映画と文化
国家機構におけるナショナリズムの台頭
第3章 プーチン下で復活した反ファシズム
戦争叙事詩の改編と新たな伝統の創造
ファシズムについての教育と研究――教科書問題と学術的論争
ロシア世論におけるファシズム観
第4章 記憶をめぐる戦争
中・東欧の歴史叙述を作り変える
「共産主義版ニュルンベルク」実現に向けて
ロシアの反応
ウクライナ2014――大祖国戦争の再来
第5章 プーチン体制の構造を読み解く
ハイブリッドで場当たり的な体制
軍産複合体――ソ連スタイルの教化を求めて
正教界――ツァーリズム、反革命亡命者、そして黒百人組
第6章 ロシアのファシズム ――思想家たちと実践者たち
ロシアの極右――常に傍流
武装組織の台頭と美化される自警団文化
ファシズムを教義として復活させる
第7章 ヨーロッパ極右とロシアの蜜月
ロシアのヨーロッパ寄りアヴァン・ギャルド
2000年代の転換――「ロージナ(祖国)」とモスクワ総主教庁
第三の波――クレムリンの新たなヨーロッパ同盟者探し
第8章 なぜロシアはファシズム国家ではないのか
歴史のアナロジーを脱構築する
「プーチンはファシストではない」
ユートピア的思想の欠如
エスノ・ナショナリズムでもなく、帝国主義でもなく、ポスト・コロニアリズム
極右とクレムリンの微妙な関係
ファシズムではロシアは理解できない
終章 ロシアの記憶とヨーロッパの将来
ファシズムのレッテルが教えること
ヨーロッパの名の下で西側に挑む
ヨーロッパ・アイデンティティをめぐるロシアのジレンマとファシズム
謝辞
訳者解説 浜 由樹子
原注一覧 / 文献一覧 / 索引
- 本の長さ432ページ
- 言語日本語
- 出版社東京堂出版
- 発売日2022/2/26
- 寸法18.8 x 12.8 x 2.5 cm
- ISBN-104490210647
- ISBN-13978-4490210644
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商品の説明
出版社からのコメント
強権国家プーチン・ロシアに向けられるファシズムとの告発を冷静に分析し、クレムリン政治の実情を読み解く。
著者について
マルレーヌ・ラリュエル(著)
フランス出身の研究者。専門は国際政治・政治思想。フランス国立東洋言語文化学院で博士号取得。現在、アメリカのジョージ・ワシントン大学ヨーロッパ・ロシア・ユーラシア研究所所長、同大学教授。研究対象はロシアおよび旧ソ連地域。特にイデオロギーとナショナリズムに詳しい。現在の研究テーマは、ロシア国内のイデオロギー情勢と国外への拡散。著書にRussian Nationalism. Imaginaries, Doctrines and Political Battlefields(London: Routledge, 2018)、Russian Eurasianism: An Ideology of Empire (Washington D.C.: Woodrow Wilson Press/Johns Hopkins University Press, 2008) ほか多数。フランスやロシアでも翻訳出版されている。
浜 由樹子(訳)
静岡県立大学大学院国際関係学研究科准教授。上智大学外国語学部ロシア語学科卒、津田塾大学大学院国際関係学研究科後期博士課程満期退学の後、博士(国際関係学)。 主な著書に『ユーラシア主義とは何か』(成文社、2010年)、"Eurasianism Goes Japanese: Toward a Global History of a Russian Intellectual Movement"(Mark Bassin, Sergey Glebov, and Marlene Laruelle eds., Between Europe and Asia: The Origins, Theories, and Legacies of Russian Eurasianism, University of Pittsburgurgh Press, 2015)、翻訳書に『ロシアのオリエンタリズム――ロシアのアジア・イメージ ピョートル大帝から亡命者まで』(デヴィド・シンメルペンニンク・ファン・デル・オイェ著、成文社、2013年)がある。
フランス出身の研究者。専門は国際政治・政治思想。フランス国立東洋言語文化学院で博士号取得。現在、アメリカのジョージ・ワシントン大学ヨーロッパ・ロシア・ユーラシア研究所所長、同大学教授。研究対象はロシアおよび旧ソ連地域。特にイデオロギーとナショナリズムに詳しい。現在の研究テーマは、ロシア国内のイデオロギー情勢と国外への拡散。著書にRussian Nationalism. Imaginaries, Doctrines and Political Battlefields(London: Routledge, 2018)、Russian Eurasianism: An Ideology of Empire (Washington D.C.: Woodrow Wilson Press/Johns Hopkins University Press, 2008) ほか多数。フランスやロシアでも翻訳出版されている。
浜 由樹子(訳)
静岡県立大学大学院国際関係学研究科准教授。上智大学外国語学部ロシア語学科卒、津田塾大学大学院国際関係学研究科後期博士課程満期退学の後、博士(国際関係学)。 主な著書に『ユーラシア主義とは何か』(成文社、2010年)、"Eurasianism Goes Japanese: Toward a Global History of a Russian Intellectual Movement"(Mark Bassin, Sergey Glebov, and Marlene Laruelle eds., Between Europe and Asia: The Origins, Theories, and Legacies of Russian Eurasianism, University of Pittsburgurgh Press, 2015)、翻訳書に『ロシアのオリエンタリズム――ロシアのアジア・イメージ ピョートル大帝から亡命者まで』(デヴィド・シンメルペンニンク・ファン・デル・オイェ著、成文社、2013年)がある。
登録情報
- 出版社 : 東京堂出版 (2022/2/26)
- 発売日 : 2022/2/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 432ページ
- ISBN-10 : 4490210647
- ISBN-13 : 978-4490210644
- 寸法 : 18.8 x 12.8 x 2.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 362,002位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,592位国際政治情勢
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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上位レビュー、対象国: 日本
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- 2022年3月20日に日本でレビュー済みAmazonで購入
- 2022年3月20日に日本でレビュー済みタイムリーな出版だ。こうした現代ロシア思想史の理解なくして、今の事態を語っても意味がない。少なくとも30年、できればロシア革命期以来の思想の流れを展望し、いま起きていることを考えたい。
- 2022年8月4日に日本でレビュー済みロシアによるウクライナ侵攻の理由が今ひとつ解らないので、何かヒントになることが出ているかな、と思って読んでみた。第3.章の「プーチン下で復活した反ファシズム」、第4章の「記憶をめぐる戦争」の2つの章に遠因となる事が書かれていた。以下、本の中から気がついた点。
一般に第二次世界大戦は1939年9月1日のドイツによるポーランド侵攻が起源とされるが、旧ソ連も現ロシアも「1941年6月のドイツによるソ連侵攻から」と定義している。理由は、ソ連も1939年9月17日にポーランドに侵攻を手始めにフィンランド侵攻、同国の一部併合、さらにはバルト3国に侵攻・併合したから。この一連の行為は、ソ連はドイツの同盟国として参戦したという事を意味する。国際連盟は、このソ連の一連の侵略行為を「戦争行為に当たる」と非難し、同国は国際連盟から追放された。
ところが戦後のニュールンベルク裁判では旧ソ連は連合国の一員として記録されている。
この過去の一連の侵略行為に関して、プーチンは2005年に記者からの質問に「1918年のブレスト=リトフスク条約により、崩壊した直後のロシア帝国、ボリシェビキ革命政府は、ポーランド、フィンランド、バルト3国、ウクライナ、トルコとの国境地域のすべての権利を放棄し、その支配をドイツに委ねた。これはドイツとロシア間の陰謀だ。1939年、独ソ不可侵条約に付随した秘密協定の中でロシアとドイツの間にはさらなる陰謀があり、ドイツはロシアにこれらの領土を返還した。1939年、彼らは自主的にソ連邦に加わった」とこれらの地域は歴史的にロシアの領土であって、バルト諸国はナチの侵略からの自衛のために「自発的にソ連に加わった」と言っている。これは従来のソ連時代からの公式歴史解釈でもある。
2019年に欧州議会では「ナチスとソ連という2つの全体主義体制による密約が大戦に道を開いた」とする決議が採択されているが、ロシアによれば、これらはバルト3国、ウクライナ、フィンランド、ポーランドによる陰謀的働きかけでロシアを悪者に仕立て上げようとした策謀に欧州議会がハメられた、という解釈だ。
2014年のロシアによるクリミア併合、ドンバスの反乱軍に対するモスクワの支援は、今も続いている第二次大戦の記憶、解釈を巡る戦いであり、ロシアをナチスからの解放者と見なすのか、占領者と見なすのか、の戦いであった。2014年3月の「クリミアを母国ロシアに再統合したことを祝う演説」のなかでプーチンはウクライナの反汚職運動を「ナショナリスト、ネオ・ナチ、ロシア嫌い、反ユダヤの連中が政権の中に入り込み、この反汚職運動を実行した。彼らは今に至るまでウクライナの論調を規定し続けている」としてナチズム、反ユダヤ主義という歴史的な敵とナショナリスト、ロシア嫌いという現代の敵を巧みに結びつけている。
ウクライナの新政権の中にファシストやナショナリストが入り込み、彼らは反ロシア政策を遂行するに当たり、欧米諸国の利益を代弁し、その歓心を買おうとしている」という見方はロシアの世論調査で75パーセント近くの人が「そう思う」と答えている。
ロシアのメディアはポロシェンコ政権をファシストに、その軍隊を東部ウクライナのマイノリティーであるロシア人へのジェノサイドを実行する死の分隊として描き、ウクライナ軍をナチの軍隊になぞらえることで悪魔に仕立て上げた。これがロシアがウクライナを「ナチズムの国」という理由である。
ロシアの中でも1939年からの一連の東欧諸国侵攻を「好ましいことではなかった」とする歴史学者の見解もあるが「しかし、ナチのロシアへの侵攻に備えるためにはやむを得なかった事でもある」と擁護している
一方、東欧諸国からすれば、旧ロシア帝国下での圧政⇒ナチ占領下での圧政⇒再びソ連からの圧政と、一連の出来事は、まるでボールを転がされたような屈辱の歴史であり、それを正当化するようなロシアの歴史観は絶対に許すことの出来ないものなのだ。
東欧諸国から見れば、ナチとソ連は同列で、ソ連の戦争犯罪の真実を究明し、実行者を指弾し、賠償、公文書公開を求めるのは戦争被害者としての当然の権利であるが、この議論はロシアから見れば、「第二次大戦はドイツのソ連侵攻で始まった」という歴史観を壊す歴史修正主義である。それはソ連を連合国側の一員と見做さない主張であり、ヤルタ会談、ニュールンベルク裁判を通じ第二次大戦後の欧州各国の国境地図を決め、それを数十年も受け入れてきた世界の規範に対する挑戦と映る。それはロシアを西欧の一員としては認めず、片隅に追いやる政治的陰謀と解釈された。
ロシアにあってはナチの自国への侵攻とNATO、EUの東側への拡大は結び付けられ、「邪悪なものはいつも西から来る」とされている。「ナチズムが再びヨーロッパから近づいている。多くの国で、我々の兄弟国ウクライナでもナチズムのウィルスが広がっている。」という説に大多数のロシア国民が「そう感じる」と答えているが、ここでいう「ナチズム」とはNATO、EUの事なのだ。
示唆に富む大著だが、やや難解なので星は4つとしました。
- 2022年4月3日に日本でレビュー済みタイトルだけ見ると「ロシアはファシズムである」と非難する本にも見えるが、本書の主張は真逆である。
筆者は、ロシアをファシズムとして語るのは安易かつ不適切なレッテル貼りであり、ロシアの体制の本質を見誤ると主張している。
ロシアの現状の体制は反リベラルで典型的な権威主義ではあるが、ファシズムの持つ多くの特徴(テロルのシステム、一貫性のある教条、国民の動員など)を兼ね備えていないという。また、ファシズムと語ることは、論敵を全面的な悪として対話の道を閉ざすとともに、ナチスやファッショの下で立ち上がった人々の記憶と道徳性を自分たちのために不当に流用し矮小化することにもつながっていると批判している。
しかし、本書の結構な部分を占めているのは、「ロシア国内でファシズム及び右翼がどう語られているのか」という話である。
ロシアにおいてはナチスとの戦争(大祖国戦争)が繰り返し国民を鼓舞するために語られるモチーフであり、そのためファシズムは(ホロコーストや人種主義ではなく)「ソ連・ロシアへの攻撃者」という形で絶対悪として語られ続けている。そのためロシア国内の右翼勢力でネオナチ的にファシズムに肯定的に言及する集団もいるが、常に当局に見張られ糾弾されるリスクを負う立場である。
本書では、そのようなロシア政府公式の(割と歪んだ)ファシズム理解と、ロシア内の右翼的な人々の話がかなり詳述されており、これが本書のメインをなしている。よく取り上げられる極右思想家のドゥギンは大した影響力を持っていないことなど興味深い指摘もあるが、ちょっと細かいところまで入りすぎている印象を持った。
「ファシズム」というキーワードだけで、「ロシア内部の右翼・専制主義者たちの危険な思想(思想の解読)」の話と「ロシアの体制をどのように見るべきか(政治体制論)」というかなり異なる話を強引に一冊にしているので、どちらの主題も中途半端な消化しかされなかった感覚を覚える。
特に政治体制論の議論は、ロシア=ファシズム論者が現代的なファシズム論をろくに踏まえていないという批判は繰り返されるが、肝心の「現代的なファシズム論におけるファシズム理解」は体系的にまとまって提示してくれることはなく、個別の論者を論難する際に断片的に取り上げるだけなので、いささか都合のいい議論の仕方にも見える。
重要な主題だとは思うのだが、思想解読とロシア政治体制の理解と、どちらかに絞ってきちんと書いた方がよかったと思う。