本書は数ある凡庸なボランティア論を凌駕する画期的なボランティア論である。もてはやされるのに評価されない、というボランティアのかかえるパラドックスな状況を、見事に描き出している。日本のボランティア活動が、宿命的にシニシズムとナイーブな称揚という両義的な評価を受けながらも、時の政府や社会の要請に応えながら、関係者の不断の努力でパラドックスから脱するための実践や議論を重ねてきたプロセスが、知識社会学の手法を用いた言説分析によって解き明かされている。<贈与のパラドックス>とは、贈与を意図して行われた行為が反贈与的なもの、として観察されてしまうことを指すが、これまでのボランティア論の大半は、この<贈与のパラドックス>を処理して、<贈与>を<交換>へとシフトさせるためのものだった、という指摘にはなるほどと頷かされる。<贈与のパラドックス>処理の果てに、ボランティアは市民社会におけるトップランナーの地位を失うという皮肉な末路をたどろうとしているのだが、<贈与のパラドックス>をあえて引き受け、<政治>とつながることで、パラドックスの回避をめざすところに仁平は希望を見出す。結論が、何だ、結局運動論的なボランティアが必要だってこと? と読めなくはないが、<政治>を回避してはいけない、というメッセージは重く受け止めるべきだ。500ページ近くの大著である上に、知識社会学の作法も難解で、誰にでも理解できる中身にはなっていないが、ボランティアやNPOを研究している人には必読書である。ボランティアにもやもやを感じている人にも。評者はかなりの程度、もやもやがすっきりした。しかし、このような本は勉強会や研究会や読書会を開いて読むものかもしれない。