地震や台風と同様に「怪獣災害」が存在する近未来の日本を舞台にした、怪獣SF小説。ここでは、怪獣の出現を予測しそれに対処するための組織として気象庁内に「特異生物対策部」が設置されています。通称「気特対」と呼ばれるこの部隊のメンバーたちが怪獣との戦いに日夜従事する姿を、本作は克明に描いています。
本書のテーマは、「人間が自然の猛威に立ち向かう」だと思います。怪獣は自然現象の一種として描かれており、気特対はその脅威に人知をもって挑むのです。作中に登場する多種多様な怪獣たちは、いずれも圧倒的な力を持ち、人類を虐げる存在ですが、気特対員たちはあくなき努力と英知を結集して次々とその脅威に対処していきます。人類が自然に翻弄されながらも、最終的には自然を制御下に置こうとするドラマが本作の真骨頂といえます。
見どころは、怪獣との直接的な戦闘シーンです。こうした度重なる先頭の描写に富んでおり、圧倒的な迫力で迫ります。膨大な破壊が巻き起こる中、私は最後まで緊張感に包まれて、気特対員の機智に胸を熱くしました。
人類は常に自然の脅威に晒されながらも、その度に英知を発揮して難局を乗り切ってきました。気特対員たちの活躍は、まさにそうした人間の叡智を体現したものだと言えます。最後まで息つく暇もない怪獣アクションに熱中しながら、人間臭さを感じさせる人物描写にも心を打たれました。
人類の叡智の素晴らしさを改めて認識する、総じて申し分のない傑作SF小説です。
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MM9 (創元SF文庫) Kindle版
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地震、台風などと同じく自然災害の一種として“怪獣災害”が存在する現代。有数の怪獣大国である日本では、気象庁内に設置された怪獣対策のスペシャリスト集団“特異生物対策部”、略して“気特対”が、昼夜を問わず駆けまわっている。多種多様な怪獣たちの出現予測に正体の特定、そして自衛隊と連携するべく直接現場で作戦行動を執る。世論の非難を浴びることもたびたびで、誰かがやらなければならないこととはいえ、過酷で割に合わない任務だ。それぞれの職能を活かし、相次ぐ難局に立ち向かう気特対部員たちの活躍を描く、本格SF+怪獣小説!
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登録情報
- ASIN : B007TAKNB0
- 出版社 : 東京創元社 (2010/6/25)
- 発売日 : 2010/6/25
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1218 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 301ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 46,745位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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- 2016年11月1日に日本でレビュー済みAmazonで購入読みやすく楽しく読めました。
アイデアがいいですね、怪獣が災害だという。
そこまでこの手の話が得意なタイプではなかったようで、
「ヒメ」の話が出てこないあたりの方がおもしろかったです。
怪獣好きでなくてもとりあえず一作は読んでもいいかと思います。
SF好きですが、個人的には続編までは手が出ず。
- 2014年12月2日に日本でレビュー済みAmazonで購入「怪獣」は、古来、天災や神、悪魔のメタファーとして、神話・民話の中で
繰り返し描かれてきた想像力である。
「怪獣」は、人間の知識・常識を超えた、超越的な存在であり、
超越的であるからこそ、巨大なのだ。
しかし、ひとたび、小説の中に巨大な「怪獣」が登場し、
口から火炎を吐き始めると、途端に、
子供向け番組を観させられているように感じてしまう。
本書では、その転向、すなわち、
「本来は神的・超越的であった存在(怪獣)が、幼稚に感じられてしまう」人々の意識変化を、
合理的な近代人による“歴史の改変” として表現する。
目に見えて、合理的に理解できるものだけを信じることで、
私たちの文明は発展したけれど、その過程で、民話・神話を忘れ神秘を失った。
宗教も最早、純粋に神的な意味を持っては存在していない。
子供たちは今も「怪獣」を愛する。
ジュブナイルの本質は「子供にしか見えない世界があるということ」と言ったのは
たしか宮台真司だったと思うけれど、
「怪獣」を幼稚に思う大人たちは、子供の頃には直感できたはずの世界の“超越性”、
つまり、<世界>は<社会>よりも広いことを忘れている、と言えるだろう。
本書の読後感が心地良いのは、
単に怪獣を愛しているから、特撮ファンの心をくすぐるからという以前に、
世界への畏怖を、素直に描いているからではないだろうか。
- 2019年11月24日に日本でレビュー済みAmazonで購入理論展開やストーリーも良かった。できればもっと気特対の活躍を読みたかったですね。
- 2010年8月1日に日本でレビュー済みAmazonで購入怪獣をSF的に考察した連作小説.
山本氏らしく,引用文献が豊富で
世界各地の神話や伝承からストーリーを組み立てていて
なかなか巧みな仕上がりである.
また,怪獣を「気象災害」と位置づけるアイディアも面白い.
単に怪獣の存在をうんちくを並べてもっともらしく理論武装しただけでなく,
それに対して人間がどう対応するか,という点もよく練られている.
この辺がハードSFらしい部分である.
ストーリーは「気特対」のハードな公務員の日常をイントロにして
最終話の大きな陰謀に迫っていく.
キャラもよく立っていて,ややマンガ的なところは
特撮モノを意識した意図的な演出なのだろう.
ただ,残念なことに,筆力が今ひとつ.
例えば,セリフをとっても,少々ステレオタイプな印象は否めない.
この点を星1つ減点.
- 2010年7月18日に日本でレビュー済みAmazonで購入テレビドラマの第一話をみて好感をもったので購入。
しかし私には合わなかったようだ。
「ウルトラマンのいないウルトラマンの世界」という設定は素晴らしいと思うのだが、
話の核となる設定やその描写がいちいち頭にひっかかってしまうのだ。
火器使用が前提となる職務や市民の保護をするであればやはり気象庁なんかではなく
警察・消防方面が出てくるのではないのか?、とか。
そう考えるとやっぱりパトレイバーIIIを思い出さずにはおられず意気消沈。
神話や妖怪まででてくると、もうこれがSFというのなら、
ゲゲゲの鬼太郎だってスレイヤーズだってSFだと言い張ることができるだろう、とか。
さりとて登場人物達が掘り下げて魅力的にかかれているわけでもなし。
私としてはジャンルとして「伝奇もの」に分類。それがふさわしいと思う。
菊地秀行や夢枕獏が好きな人が、「伝奇ものだ」と思って読むならOK,かも。
- 2017年5月25日に日本でレビュー済みAmazonで購入友人に勧められて兎に角1巻目を購入。さすが「ト学会」の山本さんの作品、ぶっ飛んだ世界観で面白かった。
- 2013年9月19日に日本でレビュー済みAmazonで購入小6の時、テレビで「ウルトラマン」の放送を見た。地方だったので都会より少し遅れての放送だった。
それまで、映画館の中でしか見られなかった怪獣たちがテレビの中で暴れまくるのが痛快だった。
怪獣と人間の戦いのドラマに夢中になった。
それから40数年後、この本を読んだ。
正直、特撮ドラマの世界が小説になるのかな?と半信半疑だった。が、読み始めた途端にあの世界(怪獣ドラマの)にすっかりと引き戻された。はまりこんでしまった。
ここには、怪獣映画の「起」「承」「転」「結」が忠実に再現されている。
まさに、「怪獣映画」がそのまま活字になっている。
50歳以上の人には特に分かると思う。
クライマックスに向かう前のやや冗長なストーリーの展開はあるもののそれらは全て「怪獣映画特有の決まりごと」である。
「円谷プロ」「東宝」「大映」この言葉に憧憬、感謝、畏怖の念を感じる年代の方々にぜひ読んで欲しい。できれば「第2部」「第3部」も続けて。
これはまさに「本格怪獣小説」だ。