コラム
永江 朗「2024年 この3冊」毎日新聞|鷲田清一『所有論』(講談社)、水村美苗『大使とその妻』上・下巻(新潮社) 、円城塔『コード・ブッダ 機械仏教史縁起 』(文藝春秋)
2024年「この3冊」
<1>鷲田清一著『所有論』(講談社)
<2>水村美苗著『大使とその妻』上・下巻(新潮社)
<3>円城塔著『コード・ブッダ 機械仏教史縁起 』(文藝春秋)
<1>は「もつ」ことをめぐる哲学的思考の冒険。「これはぼくのものだ」ということは、どういうことなのか。あたりまえだと思っている感覚や概念が、揺らぎ、崩れていく恐怖と快感。著作権など「ぼくのもの」の概念が果てしなく拡大していく現代を厳しく問い直す書でもある。
<2>は軽井沢の別荘地を舞台にした長編小説。日本文化とは何かを考えさせられた。語り手は日本の伝統文化に精通したアメリカ人の中年男性。日本文化を体現したような隣人女性に惹かれるが、彼女は日系ブラジル人だったという設定がおもしろい。
<3>はコンピュータのプログラムが悟りを開いたら、という長編小説。マジか?シャレか?と心のなかでツッコミを入れつつ、仏教史とコンピュータ史を同時に勉強した気分に。