がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点
医療・健康・介護のコラム
がんに効く?食事療法の嘘(上)生活習慣を見直す…その効果は?
先日、ある患者さんとお話ししていて、抗がん剤の治療がうまくいって、がんをうまく抑え込むことができたので、「しばらく抗がん剤をお休みしましょう」、と提案しました。
すると、
「何かできることはないでしょうか? 何かしていないと不安なんです。実は、私は、がんが再発してから、玄米、菜食にしていて、牛肉も一切食べていないのです」
と言われるので、
「大切なことは、○○さんの生活の質を大切にすることだと思います。玄米、菜食が楽しくできるのなら、かまいませんが、つらいものを無理にやる必要はありませんよ」
とお話ししますと、
「そうなんですね。私は牛肉が大好きだったのですが、がんが再発したので、何とかしようと思い、ずっと牛肉を食べずにいました」と、涙を流してお話しされました。
上記のようなことは、多くの患者さんにも当てはまるのではないでしょうか。
「食事でがんを治す」がおおはやり
「食事でがんが治る」
「がんが消えていく食事療法」
「食べ物で余命数か月のがんが消えた」
などの食事でがんを治すとうたった本は、たちまちベストセラーになるそうです。
がんという病気になりますと、大抵の方はこれまでの生き方、生活習慣を反省することが多いのではないかと思います。
完璧な生活習慣を送っていた、などという人はほとんど存在しないのではないでしょうか。
多くの方は、これまでの自分の生活習慣を反省し、野菜中心にしたり、玄米食にしたり、ストレスがかからないように注意したりと、色々なことをしたりするかもしれません。
では、医学的に食事ががんに与える効果は実際どうなのでしょうか?
がんと食事の関係を考える場合には、予防的効果と治療的効果に分けて考える必要があります。
がん予防と食事
予防的効果というのは、がんになっていない一般の人が、がんになることを予防するといった効果です。
予防に関しては、多くの研究がありますが、ハーバード大学の疫学研究で、がん死亡に食生活が約30%影響しているという報告があります(注1)。
このことは、がんの治療効果を言っているのではなく、食生活を改善することにより、がんの発生をある程度は予防できるのではないかと言っているものです。
個別のがんの研究でも、野菜の摂取や、塩分を控えることでがんの発生を予防できる可能性が示唆されています。
例えば、野菜不足や肥満が、食道がんや、大腸がん、乳がんの発生原因になることがわかっています。
ただ、特定の食事やサプリメントを推奨しているものではないことに注意してください。
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「間違った情報に左右されないで、正しい情報を知って、楽しい食生活を送ってほしいと思います。」
そのとおりだと思いますが、患者やその家族や患者予備軍は正しい情報がどれなのか、解らないで困っているのではないでしょうか。本屋さんにはものすごい量の情報が溢れており、いずれも医学者として立派な(と思われる)方々が自信満々に書いているので、一般人は信じてしまいます。
風邪を引いて熱があるとき、熱い風呂に入るべきか、ぬるい風呂に入るべきか、すら、はっきりしません。解熱剤を飲むべきかどうか、はっきり分かりません。飲む方にも一理あり、飲まない方にも一理あります。正しい情報は何なんでしょう?というのと同じで、一般人にはわからないのです。正しい情報を知りたくて、こうした記事を読んでいるのです。
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すい臓がんの抗がん剤治療を続けています。私は,食事療法でがんと直接向き合うつもりはありません。抗がん剤の副作用を和らげる目的で,がん予防の食事療法を続けています。野菜,全粒粉,低脂肪の肉,魚,減塩などです。厳格ではなく,ちょくちょく脇道に逸れます。
6年ほどの経験で,がん予防の食事療法は免疫力を高めているように感じます。口内炎が悪化することなく治る,風邪が治るのが分かる・・などの効果がありました。抗がん剤治療の副作用を軽減する効果もあると考えています。嘔吐感を防ぐ,下痢もひどくない,白血球濃度が高い,・・・比較的順調なので効果があるのかなと思います。
副作用対策の観点で,先生の見解をお教えください。私は,消化器が受け付ける範囲で,食事療法を続けようと考えています。
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