さまざまな追加関税を導入する考えを繰り返し表明してきたトランプ氏。
共和党の政策綱領では、サービスの分野を除くアメリカの貿易赤字は年間1兆ドル以上に拡大していると指摘したうえで外国から輸入される製品に一律で関税をかけることで是正するとしています。
トランプ次期大統領 追加関税発言 世界の企業 懸念広がる
みずからを「タリフマン=関税男」と称するトランプ次期大統領。
米国内の製造業や雇用を守るためだとして、選挙戦でも追加関税をにおわせる発言を連発してきました。
企業の間では懸念が広がっています。関税をめぐる動きはどうなるのでしょうか。
この関税についてトランプ氏はことし8月、外国から輸入される製品に
一律で10%から20%の関税をかける考えを明らかにしました。
”メキシコからの輸入車に200%の関税”
そのトランプ氏が厳しい姿勢を示しているのが、メキシコです。
人件費の安さに加え、一定の条件を満たせばアメリカ向けの輸出に関税がかからないことなどから生産拠点を構える企業も多くあります。
日本企業の拠点数は去年10月の時点でおよそ1500か所あり、ここ数年、日本からの投資額は増加しています。
今月4日の演説では、「メキシコからアメリカに犯罪者や麻薬が流れ込む状況を止めなければ、ただちにメキシコから輸入される製品すべてに25%の関税を課す」と述べました。
そしてこの考えについて、「就任初日かそれより早い時期にメキシコの大統領に通告する」と述べ、それでも改善されなければ関税を50%、75%、100%に段階的に引き上げていく考えを示しました。
自動車産業をめぐっては先月の演説で、メキシコに大規模な工場が建設され安価な自動車が輸入されているとして、メキシコからの輸入車に200%の関税をかけてアメリカ国内の自動車産業を守ると訴えました。
メキシコの展示会では懸念の声も
アメリカへの輸出を手がける企業などのあいだでは懸念が広がっています。
メキシコ中部で開かれた展示会で聞きました。
メキシコに製造拠点
アメリカ自動車部品メーカーの現地販売責任者
「高い関税を課せられればすべての企業のインフラに甚大な影響を及ぼす変化になる。どう対応すべきかわからない」
ドイツ自動車部品メーカー担当者
「一部の製造工程をアメリカで行わざるを得なくなり、コスト上昇という難題に直面する。トランプ氏が実際にどういった措置を講じるのか、見極めなくてはならない」
“中国メーカーにアメリカで自動車を販売させない”
また、トランプ氏は先月、メキシコでは中国メーカーが生産拠点を建設し、アメリカに自動車を輸出しようとしているとも指摘したうえで、「必要であれば、100%、200%、1000%の関税だって課す。中国メーカーにアメリカで自動車を販売させない」と述べています。
各メーカーに対しては、「関税をなくすための唯一の方法は、アメリカ国内にあなたたちが働くことができる工場を作ることだ」と述べ、アメリカでの生産を強化するよう訴えています。
トランプ氏 対中国関税“60%以上も”
一方、中国については貿易上の優遇措置などを講じる「最恵国待遇」を撤回し、電子機器や鉄鋼、医薬品などの輸入を4年間で段階的に廃止し、依存度を引き下げるとしています。
また、ことし2月に放送されたFOXニュースのインタビューでは、中国に対して60%の関税をかけるという報道について問われ、「それ以上になるかもしれない」と述べています。
さらにアメリカメディアの取材に対して「中国が台湾に侵攻すれば150%から200%の関税を課す」と述べて、中国をけん制しています。
専門家”さまざまな引き上げ想定し 対応検討を”
米シンクタンク・CSIS(戦略国際問題研究所)客員研究員
JETRO(日本貿易振興機構)ニューヨーク事務所 葛西泰介さん
葛西さんは、トランプ氏が1期目に多くの関税措置を実行したことを踏まえると、2期目でも中国やメキシコへの追加関税や、日本などの同盟国を含むすべての国を対象にした一律の関税などを課す可能性が高いと指摘します。
そのうえで、関税の対象や導入する時期などについては、「まだまだ不明瞭な部分が多く、“交渉人”であるトランプ氏が切り札として関税を脅しのような形で使い、貿易相手国との交渉を通じて決定していくシナリオも想定される」と分析しています。
また、日本を含めた企業の間で関税策への懸念が高まっていると指摘したうえで、今後の備えについては「5%、7.5%、10%など関税の割合ごとに自社への影響についてコストを試算したうえで、実際に関税が課された段階でサプライチェーンを再構築できるよう準備を整えておくべきだ」と述べ、さまざまなケースを想定し、冷静に対応することが重要だという認識を示しました。