埼玉県で竜巻などの突風が発生か 東西50キロで被害確認

埼玉県内で突風によるとみられる倒木や屋根がはがれるといった被害は24日夕方の時点で東西およそ50キロで確認されています。気象台は25日も現地調査を行うことにしています。

埼玉県内では24日昼ごろ、天気が急変し埼玉県毛呂山町で突風が発生したという情報が寄せられ、気象庁は午後1時に竜巻注意情報を発表しました。

埼玉県警察本部によりますと、24日午後2時までに木が倒れたり停電のため信号が消えたりしたという通報がおよそ200件、寄せられたということです。

このうち、富士見市でアパートの屋根が10メートルほど飛ばされたほか、志木市では、ゴルフ練習場に建てられたコンクリート製の柱が相次いで折れる被害が確認されました。

また、さいたま市桜区では、大学のキャンパス内で高さ15メートルほどの木が根元から折れ、電線に倒れているのが確認されました。

また、日高市や川口市でも、倒木や看板が倒れる被害が確認されました。

これまでにNHKの取材で被害が把握できた範囲は、越谷市から毛呂山町にかけて東西およそ50キロに及んでいます。

このほか、東京電力パワーグリッドによりますと、午後1時すぎの時点で埼玉県内のおよそ3万8000戸が停電しました。

現在は復旧しています。

気象台は突風による被害とみて、24日に続いて25日も現地調査を行うことにしています。

専門家「ダウンバースト同時に複数回起きたか」

埼玉県内の突風被害について、専門家は積乱雲から冷たい風が吹き降ろす「ダウンバースト」という現象が同時に複数回起きた可能性があると指摘しています。

突風のメカニズムに詳しい防衛大学校の小林文明教授は、今回の突風被害について詳しい調査が必要だとしたうえで「ダウンバースト」の特徴がみられるとしています。

その一つが周辺の気温の低下で、気象庁によりますと突風被害があった周辺の地域では1時間で10度ほど下がったところもありました。

「ダウンバースト」は、積乱雲から冷えて重たくなった風が吹き降ろすため、気温が下がるということです。

そのうえで被害がかなり広い範囲に及んでいることから、非常に発達した積乱雲が次々と連なって「ダウンバースト」が同時に複数回起きた可能性があるとしています。

また、倒木などの被害が出ていたことから、秒速30メートル以上の風が吹いていた可能性があるということです。

小林教授は「梅雨前線に向かって暖かく湿った空気が入り込んだり、台風の接近で大気が不安定になったりすると積乱雲が発達しやすいため、夏の間は突風に注意が必要だ。急に冷たい風が吹いたら危険だと思って早めの避難を心がけてほしい」と呼びかけています。

被害相次ぐ けが人4人確認

埼玉県内では今回の突風による被害が相次ぎ、県や警察への取材では午後4時までに4人のけがが確認されています。

このうち、川口市では看板が落下し、近くにいた60代の男性が頭に大けがを負いました。

また、毛呂山町では男子高校生1人が倒れてきた木で頭を打つ大けがをしました。

このほか鶴ヶ島市では1人が軽いけがをしたほか、さいたま市大宮区では自転車に乗っていた30代の男性が転倒して顔などにけがをしました。

毛呂山町隣接の鳩山町 約15分で気温10度近く下がる

気象庁によりますと、埼玉県毛呂山町の北に隣接する鳩山町では、午前中から晴れて気温が上がり午前11時44分には35.2度を観測していました。

その後気温が急激に下がり、正午には25.5度と、およそ15分で10度近く下がりました。

また、正午前から雨が降り始め、午後0時10分までの10分間には8.5ミリを観測しました。

JR川口駅近くの建物で看板が落下 男性が大けが

警察や消防によりますと24日午後0時45分ごろ埼玉県のJR川口駅近くの建物で看板が落下し近くを歩いていた63歳の男性にあたりました。

男性は病院に搬送され頭や胸を強く打つ大けがをしたということです。

警察によりますと落下した看板は横がおよそ17メートルの縦が1メートル60センチほどの飲食店の看板で、警察が詳しい状況を調べています

富士見 アパートの屋根が飛ばされる

埼玉県富士見市で撮影された写真には、2階建てのアパートの屋根の右側半分が飛ばされて無くなっている様子が写されています。

撮影したのは午後0時半ごろでこの直前まで雷を伴う激しい雨が降っていて、収まったところで自宅から外の様子を見たところ、屋根が無くなっているのをみつけ撮影したということです。

さらに午後2時ごろに撮影した写真では、飛ばされた屋根が道路を挟んで向かいの建物に衝突してもたれかかっている様子が写っています。

別の角度からの写真には飛んできた屋根によって電柱が倒されている様子が見えます。

撮影した60代の男性は「こんな状況はこれまでに見たことがありません」と話していました。

志木 ゴルフ練習場のポール折れる

埼玉県志木市によりますと、午後0時45分ごろ、志木市上宗岡で「ゴルフ練習場のポールが倒壊した」という情報が寄せられました。

市の職員が駆けつけたところ、練習場に建てられたポールが数本折れ、そのうちの一部が落ちて道路を塞いでいる様子が確認されたということです。

けが人は確認されていないということです。

支配人 “電動のネットが下がらず”

ゴルフ練習場の支配人が取材に応じ、当時の状況を語りました。

支配人によりますと、この練習場では備え付けの風速計で一定の値を観測した場合、安全確保のためネットを下げる対応をしていて、24日も午前11時すぎから急に風が強まったことから従業員がネットを下げる作業にとりかかったということです。

ところが、強風のためか電動のネットが十分に下がらず、その後、突風が吹いて複数のコンクリート製の柱が折れ曲がったということです。

当時、練習場にいた10組ほどの客にけがはありませんでしたが、コンクリート片が飛び散って周辺に止めてあった10台ほどの車に当たり、窓ガラスが割れるなどの被害が出たということです。

一方、ネットや折れた柱が周辺の住宅などに倒れる被害はありませんでした。

支配人によりますと、袋状に張られる大きなネットは20本以上の柱で支えていましたが、その柱の上部をコンクリートでつなぎ、柱が折れても内側に倒れる構造にしていたため、被害の拡大を防げたとしています。

支配人の60代の男性は「30年以上ここでゴルフ場を運営しているが、まさかこんなことが起こるとは思わなかった。人的な被害はないが周辺に迷惑をかけてしまったのでしっかり対応したい」と話していました。

毛呂山町「倒木の情報が数件」

毛呂山町の総務課の職員によりますと、庁舎内にいたところ、午後0時半すぎに横なぐりの雨が急に強まり何かにつかまっていないと飛ばされそうな雨風が15分ほど続いたということです。

その後、午後1時すぎに、町内の住民から倒木の情報が数件、寄せられたということで町が被害の状況を調べています。

毛呂山町周辺 横なぐりの雨 雷が光る様子も

24日正午ごろ、NHK職員が埼玉県毛呂山町の周辺で撮影した映像です。

横なぐりの雨が降る中、時折、雷が光る様子が確認できます。

また大きな木が根本から倒れていたり倉庫が傾いていたりします。

撮影したNHK職員は、「ここまでひどい雨と風は経験したことがなかったのでとても怖かったです」と話していました。

【動画】気象予報士 解説

当時の気象状況と、25日にかけての注意点について、船木正人 気象予報士の解説です。

※7月24日 「首都圏ネットワーク」で放送しました。
※動画は2分19秒 データ放送ではご覧になれません。