写真:中園 まりえ
地図を見る「和製マジョリカタイル」と聞いて、「日本でマジョリカタイルが作られていたの?」「台湾にも渡っていた?」と驚く人も多いと思います。
「和製マジョリカタイル」とは、大正〜昭和初期にかけて、日本で生産された「和製ビクトリアンタイル」のことを指します。このタイルは、近代イギリスの装飾タイルを模倣したもので、当時イギリスのタイルメーカーが「マジョリカタイル」という商品名で売り出したことから、この名称が日本でも広く使われるようになりました。
イギリス製に劣らない品質のタイルを作るようになった日本タイルメーカーでしたが、国内では気候や好みが合わなかったのか?売れ行きが良くなかったため、海外、台湾へも市場を広げます。台湾向けには、吉祥の意味を持つ花鳥や桃などの果物のモチーフがデザインされ、富の象徴または縁起物として、住宅の屋根や玄関などに飾られ、台湾独自のマジョリカタイル文化が発展しました。
写真:中園 まりえ
地図を見る昔は、台湾各地で見ることができたマジョリカタイルも、時代と共にその姿を街中で見かけることは少なくなり、現在では歴史的にも大変貴重な物となっています。
そんなマジョリカタイルを集めた「台湾花磚博物館」は、日本統治時代、日本人も多く住み、阿里山までの鉄道や阿里山から運ばれた檜などで栄えていた嘉義市内の中心部にひっそりと佇んでいます。元々、木材加工業を営んでいた建物で、建物の裏手には、阿里山からの運搬手段であった阿里山鉄道の線路が通っています。
写真:中園 まりえ
地図を見る博物館入口には、古い建物の一部に使われていた貴重なタイルが、台湾各地から集められ無造作に並んでいます。
この台湾に残る和製マジョリカタイルは、台湾の伝統的な三合院住宅に装飾として使われ、台湾全土に広まりました。しかし、現在三合院住宅自体が少なくなっており、それと共に失われていくタイルを徐嘉彬氏が救出すること20年。台湾中の希少なタイルを集め続け、2016年に同館をオープンしました。
写真:中園 まりえ
地図を見る館内に入ると、床から天井まで壁一面に張られたマジョリカタイルに誰もが圧倒されるはず。こちらには約1500枚ものタイルが展示されており、収集した全てのタイルとなるとその倍以上になります。
古いマジョリカタイルは、模様の間にカビや汚れが付いてくるものです。しかし同館では、館長が独自に開発したタイルの特殊クリーニング技術により、まるで新しいタイルのような艶があり、色や形もはっきりと保たれているのには驚きを隠せません。
写真:中園 まりえ
地図を見る細長い館内奥では、マジョリカタイルが埋め込まれた家具や階段を見ることができます。富の象徴として、家の入口や屋根の棟など家の外観の装飾としてだけではなく、室内インテリアとしても使われたことが伺えます。
日本だと、衛生面を保つ意味で、タイルはお風呂やトイレ、台所などの水回りに使われることが多いので、台湾で違う用途で使われていることはとても興味深いです。
写真:中園 まりえ
地図を見る2階奥には、その昔台湾でお嫁入道具として使われたベッドや鏡台、机などにタイルが埋め込まれた豪華な家具が並びます。ふっくらと盛り上がった大きな花のタイルがとても印象的です。
同館の様々なタイルを見てみると、昭和初期の輸出最盛期には、各輸出先のニーズに合わせたタイルが作られていたことがわかります。例えば、子孫繁栄のザクロ・不老長寿の桃・心願成就の柿・開運成就の葡萄・商売繁盛のブッシュカンの5つの果実が描かれた印象的なモチーフタイルは、中華圏で大変人気がありました。
写真:中園 まりえ
地図を見る1階中央では、復刻タイル(320元〜)や吸水コースター、シール、マグネット、鏡などマジョリカタイルモチーフの関連商品を販売。この復刻タイルは、館内にも展示されている和製タイルから選ばれたモチーフを現代版として特別に生産したものです。
写真:中園 まりえ
地図を見るまた、タイルを幾つか並べることにより見えてくる美しさも、マジョリカタイルの特徴です。
館内では、新しい復刻タイルによる空間作りの提案もしています。鏡の周りに張られたタイルは、現代のインテリアスタイルに違和感なく溶け込み、空間創りのスパイスとなるでしょう。
写真:中園 まりえ
地図を見る館内では、和製マジョリカタイルの裏面の展示もしています。よく見ると、各タイルメーカーのロゴマークやタイルに関する情報が書き込まれています。
タイルの表面だけを見ていると、どこのメーカーか見分けがつかきませんが、裏を見れば一目瞭然。日本のどこで製造され、年代まで克明に記されています。日本タイル工業、三田タイル工業、佐治タイルなど、日本のどの地域から台湾へ輸出されていたかがわかる大変貴重な歴史的資料となっています。
写真:中園 まりえ
地図を見る台湾旅行で、嘉義まで足をのばせないという人は、西門紅樓1階に2019年1月からオープンした「台湾花磚博物館」分館をぜひ訪れてみてください。
写真:中園 まりえ
地図を見る西門町に建つ赤レンガ造りの古跡・西門紅樓内の「16工房」内に、同館分館があります。
こじんまりとしたスペースですが、嘉義同様、大正〜昭和初期のマジョリカタイルが壁一面に展示されています。こちらは、復刻タイルなどグッズ販売が中心ですが、タイル好きには見逃せないスポットとなっています。
新たな視点から台湾と日本との結びつきを知ることができる「和製マジョリカタイル文化」。同館で、またひとつ違う台湾を発見できることでしょう。
<嘉義市台湾花磚博物館>
住所:嘉義市林森西路282號
電話番号:+886-905012390
時間:水〜日曜:10:00〜12:00、14:00〜17:00、月・火曜:休館
入館料:50元(館内販売商品50元として使用可)
アクセス:嘉義火車駅から徒歩10分
<西門紅樓・16工房>
住所:台北市萬華區成都路10號
電話番号:+886-2-2311-9380
時間:火〜日曜 11:00-21:30(金・土曜は〜22:00、日曜は休館日)
※連休中の休館日については、下記HPまたはFacebookでご確認ください。
2019年6月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2025/1/3更新)
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