第75回新聞週間期間中の16日は「新聞配達の日」。徳島新聞の販売店は、読者に確実に新聞を届けられるよう日々取り組んでいる。広大な配達エリアを担う所長や、若くしてスタッフをまとめる所長らの奮闘ぶりなどを紹介する。
過疎化が進む那賀町の相生、上那賀、木沢、木頭の4地区が配達エリアの丹生谷専売所(同町木頭折宇)。面積は664平方キロメートルと県全体の約16%を占める。松本公章(こうしょう)所長(45)は「毎朝、確実に読者の方に新聞を届けるにはどうすればいいのか。この10年間いつも考えてきた」と言う。
印刷センターから朝刊を配送するトラックは、専売所には来ない。松本所長は毎朝、約50キロ離れた同町延野にある作業場まで約1時間かけて従業員と向かう。チラシの折り込みや地域ごとの仕分けを約30分で終わらせ、新聞を軽トラックに積み込んで出発。点在する家に新聞を届けながら、各地域の委託スタッフに担当部数を手渡す。
松本所長が朝刊の配達業務で移動する距離は一日約150キロ。所長、従業員、委託スタッフ計23人を合わせると650キロを超える。曲がりくねった山道や急勾配の細い道が多く家が点在しているため、100部当たりの配達時間は約2時間半と市街地の倍以上かかる。
山々に囲まれ、悪天候にも見舞われる。大雨による倒木が道をふさいでいれば、自らのこぎりで切断して軽トラックを走らせる。土砂崩れで普段のルートが通行止めになり、林道を1~2時間迂回(うかい)して届けた朝もあった。
LPガス販売会社で町内の営業を担当した後、2012年12月に丹生谷専売所の所長になった。「販売店を経営しようと決めた以上、任されたエリアの読者や配送網を守っていかなければならない」。従業員らの休みを確保するため、一つの地域を複数人が交代で担当する態勢を整えたり、配達時間を短縮するためにルートを見直したりしてきた。
「地元で働き、暮らすだけでも地域に貢献できる」と古里への思いは強い。「遠い所から配達に来てくれてありがとう」「今日中に配ってくれればいいよ」。地域の読者からの感謝の言葉や気遣いを力に変え、険しい山道を軽トラックで走る。