〝安倍ショック〟で広告業界も大混乱だ。安倍晋三元首相が8日の街頭演説中に銃撃され死亡した事件を受け、民放各局のテレビ番組では普段のCMからACジャパン(公共広告機構から改称)のCMに切り替わっている。あまりにも衝撃的な事件のため、CM放送を自粛したということに加えて、取りやめた深い理由とは――。
安倍首相が銃撃という一方が流れると、テレビCM担当の広告マンは上を下への大騒ぎとなった。「クライアントからCM放送中止の連絡がひっきりなしにきました」(広告代理店関係者)
代わりに先週末、急増したのがACジャパンのCMだ。元フジテレビの笠井信輔アナウンサーも10日、ブログで「テレビを見ていてやけにACジャパンのCMが多いことに気づきました」と指摘した。
「大きな災害や全国民の気持ちを揺るがす衝撃的な事件が起きたときに、浮かれたCMを流すのはかえって評判を落とすのではないかと企業側がテレビCMを取り下げるのです」と解説。「そんな時にその代わりとして放送されるのがACジャパンのCMです」と続け、「やはり安倍総理の銃撃、急死で多くの国民が心を痛めていると言うことに企業が反応しているんだと思います」と見解を披露した。
SNSでも、CMがACに切り替わったとの意見が多い。実際、8日の事件当初からテレビ各局は予定していた番組を相次いで取り止め、報道特番を展開し、ACのCMが流れた。10日の参院選の選挙特番でもACのCMが少なくなかった。
振り返れば、2011年の東日本大震災では多くの人々が被災。〝それどころではない〟とばかりにCMのほとんどがACに切り替わった。今回も同様に多くのCMが取りやめとなったのはなぜなのか?
東証プライム(旧東証1部)の大手企業の営業関係者は「安倍元首相の事件を受け、CM放送を取りやめました」と告白。その理由について「前代未聞の有事が起きた中でCM放送し、企業イメージが下がるのを懸念して――というのは確かにあります」とした上でこう続けた。
「ただそれより、安倍元首相の事件では、銃撃されるリアルな瞬間がテレビ番組で何度も放送され、視聴者には強烈な〝残像〟があります。そんな有事の環境下でCM放送しても、スポンサーとしては商品の魅力が視聴者に伝わるかは疑問。結果的に各スポンサーが不謹慎だから〝自粛〟というよりCM効果が薄いから〝中止〟というスタンスを取っています。それくらい安倍元首相の事件はインパクトが強いわけです」
この関係者は〝CM中止〟が終わるまで、今週いっぱいはかかるとみている。
日本で首相経験者が殺害されたのは1936年の「二・二六事件」以来。令和の時代に誰も予期していなかったことが起き、今も日本中が動揺している。