京王線仙川駅(東京都調布市)の周辺には、名門音大や文豪の旧宅跡、著名建築家による個性的な建物などが集まる。街を巡り歩いて、文化的な雰囲気を味わった。
線路の南北にまたがる仙川商店街は、通称「ハーモニータウンせんがわ」。ブロックごとに「ヴァイオリンタウン」「ピアノタウン」といった名前が付き、歩道のタイルは所々、楽器のイラストで飾られている。商店街を南へ抜けると、小澤征爾さんをはじめ、数多くの国際的音楽家を輩出してきた桐朋学園大と系列校のキャンパスが目に入ってきた。
存在感たっぷりの建物は隈研吾さんの設計により、2021年に建てられた「桐朋学園宗次ホール」だ。地上3階、地下1階の木造建築で、音楽ホール、講義室、レッスン室からなる。外装の木製ルーバー(平行に並べられた羽板)は楽器の弦から着想を得たのだという。
キャンパスの南西へ歩いて行くと、ほどなく白樺派の作家・武者小路実篤の旧宅跡を利用した「実篤公園」に着いた。約5千平方メートルの傾斜地に、武蔵野の面影を残す雑木林や湧き水を利用した二つの池が美しく調和し、実篤が暮らした家屋も保存されている。公園に隣接する記念館では、定期的に企画展が催される。
駅の東を南北に走る「松原通り」は、建築家安藤忠雄さんが手がけた建物が6棟並んでいることから、建築ファンに「安藤ストリート」と呼ばれて人気を集めている。08年に開館した「せんがわ劇場」や、その向かいに立つマンションは、安藤さんが得意とするコンクリート打ちっ放しのスタイリッシュな外観だ。
散策最後の目的地は、駅の東を流れる仙川。地名や駅名と同様「せんがわ」と読むのかと思っていたが、岸に立てられた河川名の標識を見たら「せんかわ」だった。
【メモ】仙川の流れが甲州街道と交わる辺りは遊歩道が整備され、水鳥の姿も見られる。
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