他人の情報を誤ってひもづけするなどのトラブルが相次ぐ「マイナ保険証」。政府は来年秋に現行の健康保険証を廃止する方針だが、当初は選択制にして併存させようとしていた。
それがなぜ「廃止」になったのか。24日から与野党の論戦が始まった臨時国会で、立憲民主党などは廃止の延期を求めるとともに、廃止に至った経緯も徹底追及する構えだ。(長久保宏美)
◆いまもトラブル続発に怒り
「本当に保険証が廃止できると思うてはるんでっか?ホンネで言うて下さい」…。
10月19日、参院議員会館内の会議室で行われた会合で、大阪保険医協会加盟の医師らが厚生労働省の若い担当者らにこう詰め寄った。今年8月、岸田文雄首相や河野太郎デジタル相が相次ぐトラブルの中間報告を行った後も、日常的に診療所でマイナ保険証関連のトラブルが続いているため怒っているのだ。
マイナ保険証の導入を巡って厚労省は、遅くとも2019年6月の段階で、現在、発生しているマイナ保険証関連のトラブルを予測していた。
「オンライン資格確認等システムに関する運用などの整理案」によると、このなかで、転職などに伴う保険組合の変更時に保険証の情報更新が遅れ「無効エラー」となるタイムラグ問題やシステムが使用する漢字コードの違いから、保険証の氏名の漢字が「●」で表示される問題など課題を列記し、対応策を検討していた。
にもかかわらず、なぜ、任意取得のはずのマイナンバーカードと保険証の一体化と現行保険証廃止に踏み切ったのか。厚生労働行政に詳しい専門家の中には「2024年秋の現行保険証廃止決定までの政策決定経過が不自然だ」という指摘がある。
◆2022年6月7日の閣議決定では…
政府は2022年度末までに、ほとんどの国民がマイナンバーカードを所持することを目標とし、22年6月7日の閣議決定では「23年4月からのオンライン資格確認の義務化とともに、マイナンバーカードの保険証利用が進むよう、24年度中をめどに保険者(保険組合など)による保険証発行の選択制の導入を目指し、保険証の原則廃止を目指す」とし、脚注に「加入者からの申請があれば保険証は交付される」としていた。
この決定は同年8月19日の厚生労働省の第152回社会保障審議会医療保険部会でも維持されていた。
しかし、この時点でのマイナンバーカードの交付率は50%を切っていた。そしてその後、河野デジタル相の口から「一本化」「廃止」の言葉が相次ぐようになる。
9月29日の「マイナンバーカードの普及・利用の推進に関する関係省庁連絡会議」。河野氏は「...
残り 1054/2108 文字
今なら最大2カ月無料
この記事は会員限定です。
- 有料会員に登録すると
- 会員向け記事が読み放題
- 記事にコメントが書ける
- 紙面ビューアーが読める(プレミアム会員)
※宅配(紙)をご購読されている方は、お得な宅配プレミアムプラン(紙の購読料+300円)がオススメです。
カテゴリーをフォローする
おすすめ情報
コメントを書く
有料デジタル会員に登録してコメントを書く。(既に会員の方)ログインする。