◆委託費の使途制限なく賃金に反映されず
岸田文雄首相は、保育士や介護職、看護師らの賃金アップを分配戦略の柱とし、来年2月にも賃上げを行う方針だ。保育士の処遇改善は安倍政権も取り組んだが、保育士の賃金は全産業平均に比べていまだ開きは大きい。人件費の原資となる私立の認可保育園の運営委託費に使途の制限はなく、賃金に十分充てられていない例も多いためだ。保育現場からは「労働者に確実に行き渡る仕組みがなければ」と懸念の声が上がる。
保育園の委託費は国の基準によって人件費、事業費、管理費を積算して決められ、自治体を通じて事業所に支払われる。政府は保育士の賃金アップを目的に2013年以降、委託費を幾度も加算。技能や経験に応じた加算分を含めれば、最大月額8万円程度の上乗せを可能にしたと説明する。だが、現場の賃金に十分反映されたとは言いがたい。
◆委託費のルール見直しを
背景には、委託費の使途を制限しない『弾力運用』を園側に認めたことがある。以前は使途を制限していたが、保育園事業への株式会社参入などで規制を緩和。事業者は委託費のうちの人件費分をすべて賃金に充てる必要がなくなった。
政府は委託費のうち人件費に回る分を8割と想定するが、介護・保育ユニオン(東京)によれば5割...
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