米モデルナ製の新型コロナワクチンから異物が見つかった問題で、製造したスペインの工場は、異物混入の原因となる製造ラインの部品取り付けミスを2回していた。初回のミスでは異物混入に気付かないまま、ワクチンを日本へ出荷。2回目のミスの後、別のロットのワクチンを製造中に異物混入に気付いたが、日本に連絡しなかった。スペインの製造ラインの管理が不十分だった可能性がある。(沢田千秋)
国内での異物混入を受け、3つのロットのワクチンが回収中だが、既に50万回の接種が行われたとされる。スペインから連絡があれば、接種を中断できた可能性がある。問題のロットのワクチンを接種後、男性3人の死亡が報告された件について、10日の厚生労働省の専門部会は「接種との因果関係は評価できない」とした。
厚労省や国内でのワクチン供給を担う武田薬品工業などによると、異物混入はスペインの製薬会社ロビの工場で起きた。この工場はモデルナの欧州での生産拠点。ワクチンの容器(バイアル)にゴム栓をはめる工程で、2つの金属部品を不適切に製造ラインに取り付けたため摩擦が発生し、バイアル内に金属片が入ったという。
製造日がいつだったかは不明。ロビは取り付けミスをした後、3つのロット計16万3000本を製造し、日本に出荷した。その後、バイアルのものとみられるガラスの破損事故が起き、メンテナンスをした際に2回目の部品の取り付けミスをした。別のロットを製造中に異物混入を発見し、ミスに気付いた。このロットは出荷されなかった。
厚労省の担当者は「ロビは取り付けミスが起きたのはガラス破損後と思っていたが、日本から異物の報告があり、慌てて検証したと推察される」と話す。
武田薬品によると、異物が混入したバイアル全39本はモデルナに送り、国内にない。「モデルナとの契約で、品質情報の調査はすべてモデルナが行うことになっている」という。
モデルナと武田薬品は共同声明で、異物は心臓の人工弁や縫合糸として体内でも使える「316ステンレススチール」で、「筋肉内に注入されても医療上のリスクが増大する可能性は低い」と説明した。
厚労省監視指導・麻薬対策課は「医薬品医療機器法(旧薬事法)上、ワクチンの有効性、安全性に責任を負う前提で武田に販売許可を出した。現時点での対応に問題はなく、立ち入り調査などの予定はない。疑うべき点があれば適切に調査していく」としている。
◇モデルナ製ワクチン異物混入問題 8月半ば以降、5都県8カ所の接種会場で異物入りバイアル瓶39本が見つかった。全てがスペインの製薬会社が日本向けに製造した同一のロット番号。同時期に同じ製造ラインで作られた別の2ロットも含めて使用が中止され、配送済み...
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