[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/ クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

あっちもこっちも計画変更! 「自動車業界のEV化」はこの先どうなる?

2024.09.23 デイリーコラム 清水 草一
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

「EVは中国」の時代がやってくる

このところ、反EV派のカーマニアにとって、うれしい(?)ニュースが続いている。2024年春、メルセデスが「2030年までの全車EV化」を撤回したのを皮切りに、最近ではボルボが電動化計画の修正を宣言し、フォルクスワーゲンもEVシフトからの状況悪化を理由に国内工場の閉鎖を検討している。

「そら見たことか!」

そう言いたいところだが、快哉(かいさい)を叫ぶ気にはなれない。欧米でのEV化の遅れは、執行猶予が延びただけにしか思えないのだ。

自動車の全面的なEV化は、欧州が打ち出したような2030年とか2035年には到底無理になった(たぶん)。そもそも日本は“電動車“にハイブリッドも含めていたし、ピュアEV化に関しては「やりたければどうぞ、俺たちはカンケーないよ」ではあった。

しかし、いずれはEVの時代がやってくる。そしてその時は、高い確率で中国が覇権を握る。

「いやぁ、そんなことはない! 中国製EVなんて品質が不安だらけで、買う気になれないじゃないか!」

そう叫びたいところだが、中国製EVの価格競争力はすさまじく、市場経済は冷徹である。

現在中国は、多くの環境関連産業で圧倒的なシェアを握っている。ソーラーパネルや風力発電装置、そしてEV、車載用バッテリー等だ。それらの分野では、もはや世界中の誰も対抗できず、巻き返しは極めて難しい。

私も数年前までは、「いつかトヨタが全固体電池で大逆転をかましてくれる!」と信じていたが、幻想だった。欧州勢なんざ、車載用バッテリーを自前じゃまったくつくれないんだからさらに絶望的。唯一対抗可能なテスラでさえ、中国製EVの安さの前に「モデル2」の開発を中止した。

欧米が中国製EVに高関税をかけようとしているのは、「同じ土俵じゃ戦えん」と負けを認めたからだ。勝負はすでに詰んでいる。出遅れた日本製EVはさらに苦しい。

2024年2月、メルセデス・ベンツグループAGのオラ・ケレニウス取締役会長(写真)は「2030年までに全車BEV化するという計画を、顧客に押しつけてまで人為的に達成しようとするのは理にかなっていない」などとコメント。この計画の撤回を表明した。
2024年2月、メルセデス・ベンツグループAGのオラ・ケレニウス取締役会長(写真)は「2030年までに全車BEV化するという計画を、顧客に押しつけてまで人為的に達成しようとするのは理にかなっていない」などとコメント。この計画の撤回を表明した。拡大
スウェーデンのボルボ・カーズは2024年9月4日(現地時間)に、「2030年までに新車の全ラインナップをEVにするというこれまでの電動化目標を調整する」と発表した。今後は、2030年までに世界販売台数の90~100%を電動化車両(充電機能を備えるEVとプラグインハイブリッドモデル)とすることを目指すという。写真は現在のフラッグシップEVである「EX90」。
スウェーデンのボルボ・カーズは2024年9月4日(現地時間)に、「2030年までに新車の全ラインナップをEVにするというこれまでの電動化目標を調整する」と発表した。今後は、2030年までに世界販売台数の90~100%を電動化車両(充電機能を備えるEVとプラグインハイブリッドモデル)とすることを目指すという。写真は現在のフラッグシップEVである「EX90」。拡大
「テスラ・モデルS」などと競合するBYDの高性能EV「シール」。日本国内では、装備満載で最高出力530PSの4WDモデルが572万円という競争力のある価格で販売されている。
「テスラ・モデルS」などと競合するBYDの高性能EV「シール」。日本国内では、装備満載で最高出力530PSの4WDモデルが572万円という競争力のある価格で販売されている。拡大

日本はいっそ「EV禁止」にしては?

「いやいや、中国製EVは燃えるでしょ! 中国製バッテリーだって同じ! そんなクルマ、怖くて乗れるかよ!」

確かに中国製EVや中国製バッテリーは発火事故を起こしているが、それはフェラーリやランボルギーニの火災事故のように、われわれの期待に応えるニュースだから大きく報道されているだけで、実際の発生確率はかなり低い。日本製EVの発火事故がゼロなのは誇るべきことだが、中国製EVの発火事故発生割合も、無視できるほど小さいのが現実だ。

中国でのEVの火災件数は、10万台あたり約20台(中国公安部)。中国の発表は往々にして信用できないが、アメリカの自動車保険比較サイト『AutoinsuranceEZ.com』の調査でも、販売台数10万台あたりの火災発生件数は、EVが25.1件、ガソリン車が1529.9件、ハイブリッド車が3474.5件となっている。

「そんな数字は無意味だ。アメリカ国内では中国製EVがほとんど走ってないんだから」

それは確かだが、中国製EVの火災発生率が、エンジン搭載車より断然高いという統計は見つけられない。

アメリカでのEVの火災発生割合は、エンジン搭載車の約100分の1。仮に中国製EVはその10倍火災発生率が高いとしても、エンジン搭載車よりは断然低い。つまり「中国製EVはすぐ燃える」というのは一種の風評で、事実が周知されれば消えてしまう可能性が高い。

欧米でEV販売の伸びが鈍化した最大の原因は、思ったほどコストダウンが進まなかったことだが、中国だけは大幅なコストダウンに成功しつつある。中国にはEVに関する貪欲な研究意欲と莫大(ばくだい)な投資資金、豊富な原材料、巨大な生産設備、そしてナンバー規制等による途方もない半強制的内需がある。その中国からの輸入を阻んでも、いずれ中国メーカーは欧米での現地生産に乗り出すだろう。そして最終的には、世界のEVの大部分が中国メーカー製になる。それを阻止できるだろうか?

「もちろん中国製EVも工場も水際阻止! 中国の覇権は許さない!」

許さなければ、EVの本格普及は大幅に遅れ、われわれ守旧派カーマニアの余命(?)は長くなる。というか、私はEVがなくてもまったく困りません。多くの日本人がそうでしょう。

いっそ日本はEVを禁止するってのはどうですか? 「かえって環境に悪い」とかなんとか言って! この逆張り、意外とイケるかも! ワッハハハハハハハハ……ハァ。

(文=清水草一/写真=メルセデス・ベンツ、ボルボ・カーズ、フォルクスワーゲン グループ、本田技研工業、webCG/編集=関 顕也)

独フォルクスワーゲンは2024年9月4日(現地時間)、「ドイツ国内工場の閉鎖を検討している」と従業員に説明し、激しい反発を受けている。同社が厳しい局面に立たされた一因は、低価格で市場競争力のある中国製EVの台頭にある。写真はフォルクスワーゲンの主力EV「ID.4」。
独フォルクスワーゲンは2024年9月4日(現地時間)、「ドイツ国内工場の閉鎖を検討している」と従業員に説明し、激しい反発を受けている。同社が厳しい局面に立たされた一因は、低価格で市場競争力のある中国製EVの台頭にある。写真はフォルクスワーゲンの主力EV「ID.4」。拡大
日本メーカーでは、中国の現地法人が新型EV「Ye(イエ)」シリーズ(写真)や「e:NP2/e:NS2」を相次いで発表するなど、ホンダが積極的な姿勢を見せている。
日本メーカーでは、中国の現地法人が新型EV「Ye(イエ)」シリーズ(写真)や「e:NP2/e:NS2」を相次いで発表するなど、ホンダが積極的な姿勢を見せている。拡大
着実に車種ラインナップを広げつつ、EVの開発・販売を推進するメルセデス・ベンツ。これをはじめとする欧州メーカーは、勢いに乗る中国勢に対抗できるだろうか?
着実に車種ラインナップを広げつつ、EVの開発・販売を推進するメルセデス・ベンツ。これをはじめとする欧州メーカーは、勢いに乗る中国勢に対抗できるだろうか?拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

デイリーコラムの新着記事
デイリーコラムの記事をもっとみる
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。