今回の『Newマリオ』を
マルチプレイにしてわかったことがあるんです。

はい。

そもそも『マリオ』というのは
落ちてミスしたら振り出しに戻るというゲームなんですね。

はい。

だから難しいんです。
ボスの直前まで行けても、溶岩に落ちて「あちち」となったら
振り出しに戻されて、またイチからはじめると。

容赦ないですよね、落ちたときは。

そうなんです。
さらにお城をクリアする前にミスをしたら、
コースの振り出しに戻ると。
これ、僕のイジワルかもわかんないですけど（笑）。
そういうボリュームで遊んだほうが
実は面白いと思っているんです。

コースのはじめからやり直したほうが面白いんですか？

アクションゲームというのは、
難易度の高いところだけを遊び続けるとしんどいんですよ。
多少自分が上手にできてしまうところも遊ぶから気持ちがいい。

確かにそうですね。

それは僕の信条で・・・。

だから、途中セーブをいくつもつくるよりも、
もう１回やさしいところから遊んでもらおうと。

はい、そのほうが気分がいいんです。
で、上手なところを遊んでいるうちに
さらに上手になっていくんです。
昔、ゲームセンターのシューティングゲームが
どんどん難しくなっていった時代に
コンティニュー方式というのができて・・・。

１００円を入れたら続きができる。

それは確かにゲームセンターはうれしいですよ、
１００円玉がどんどん入るので。
けど、お客さんは
自分の限界のところばっかり遊んでいるわけですよ。
そんな遊びは気持ちよくないと思うんです。

そうですね。

エキサイトはするんですけど、
気持ちよくないんです。

興奮はするけれど、
「オレはうまいぞ」という気持ちにはなれない。

そうなんです。

「オレはまだまだヘタだ」
ということばっかり味わうわけですから。

けど、つい「緊張感があるほうが楽しい」と考えて
ゲームバランスの話をすると、
必ず緊張感を高める方向に向かおうとするんです。
けど、本来は緊張感はそこそこあって
楽しく遊べることが理想なんですよ。
でも、なかなかそういうものばかりもつくれないので、
コースを多少引き返して遊ぶのが
アクションゲームの正しい楽しみ方やと思っていて、
僕はわりとこだわっているんですね。

でも、４人プレイだとそうはならないですよね。

そうはならないんです。
それがちょうどほどよくって、
４人のうち、１人でも生き残っていると
どんどん先に進めるんです。

ミスをしても先に進めるので
ヘタな人でもみんなで遊べば
最後まで連れて行ってもらえるんですよね。

ええ。だから、
「おてほんプレイ」を見てクリアするのと、
「おてほんプレイ」でクリアしたことにしてもらうのと、
その中間の、ほどよいゲームバランスにしたつもりです。
だから、幅広いお客さんに
いろんな楽しみ方をしていただけると思います。

宮本さんは、今回ものすごく手ごたえを感じているんですね。

もちろんです。

宮本さんがこれまで
ずっとつくりたいと思ってきた構造のゲームを
今回実現できたと感じているんですよね。

ええ。
『マリオ』を使ってマルチプレイを実現させたいと
ずっと思ってきましたし、長年の夢だったんです。
今回は、それはできた感じがします。

ここしばらく、宮本さんが
商品のひとつひとつに深く入ることが多いですけど、
今回の『Newマリオ』は、その中でも
入り方の深さが明らかに違いましたね。

仕様書も書きましたし（笑）。

（笑）。
本当にお疲れ様でした。
わたしは２００９年のＥ３で
「任天堂は“みんなのゲーム”をつくりたい」
という話をしました。
ゲームがその進化と共に、
ゲームがうまい人のためのゲームと
初心者のためのゲームにどんどん分かれていくのが
常識となってきましたけど、
ゲームを操作する技量にかかわらず、
誰もが楽しめるゲームをつくることが
これからもゲーム人口を拡大していくために必要だと
確信していたからです。
だけど、「そんなことはできるわけはない」と思われているせいか、
あまり話題にしていただけなかったのですが、
わたしはけっこうまじめに
“みんなのゲーム”ということを考えていて、
そのことは宮本さんと１０年以上ずっと
話し続けてきたんですが、
今回、宮本さんは、『マリオ』という
決してそれが容易でないテーマで
“みんなのゲーム”をつくっちゃったなあ、というのが
今回のわたしの印象です。

『Newマリオ』がどんなふうに遊ばれるのか、
いろんな人が「わたしにもできた」と思い、
腕に自信のある人が「ヌルくない」と感じて、
ヒントブロックが出ないように
データを消して最初からやり直すのが、
ちょっと楽しみですね。

最後にもうひとこと、いいですか？

はいどうぞ。

今回はWiiリモコン横持ちなので
十字ボタンと１、２ボタンだけで遊べます。

ファミコン時代の操作ですね。

ただ、Ｂダッシュ^（※27）だけは覚えてください。
Ｂダッシュができないとけっこうツライので。
Ｂを押さえてモノを持つというのと、それからＢダッシュ。
それに、Wiiリモコンならではの
ユニークな振り操作も入っています。
なので、振りとＢを覚えると
かなり熱くなって遊んでいただけると思います。

今回は、Wiiリモコンの１ボタンでダッシュですよね？　
それって、どう呼びましょうか？

やっぱりＢダッシュでしょう（笑）。