バッテリーと盗塁の関連性に着目し、里崎智也氏(48)が発案した「里崎指数」は今季で5年目を迎えた。投球回数を盗塁の企図数で割り、1盗塁企図に要したイニング数を評価基準に、バッテリーは走者に何イニングで1盗塁を企図させるかを解説してきた。里崎指数を元に、両リーグで大きく差がついた盗塁数を検証する。(データ=多田周平)

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★スタート切らせない

各リーグ全体の盗塁数を比較すると、パ・リーグが大きく上回っている。周東や、小郷、小深田の楽天勢など俊足野手がそろい、盗塁には意欲的だ。セ・リーグ最多19個の近本は、単純比較すると、パではトップ5にも入らない。

里崎指数の骨子は、クオリティーの高いクイックや、巧みなけん制によって、走者から盗塁への意欲をそぐこと、つまりバッテリー間で走者にスタートを切らせない意識の共有、技術の進歩を喚起するために提唱した。

そこには、バッテリーが警戒しようとも、そこをかいくぐる走者の飽くなき挑戦があって、両者の技量は磨かれる。ひとつの盗塁を巡るスリリングな緊張感は、試合のハイライトになり得ると感じたからだ。

ここで両リーグの盗塁数を比較して考えると、セでは里崎指数が高まったから盗塁企図数が減ったのか、そもそも走者側に走塁能力が足りず、その結果として里崎指数が高まったのか、見極めるのは非常に難しい。来季も含めある程度のスパンで考えないと、軽々には解説できない。

事実として、里崎指数上位10傑の中で、パは6位金村-田宮、10位種市-佐藤の2組だけ。圧倒的にセが上位を占め、広島3組、阪神2組、ヤクルト、巨人、DeNAがそれぞれ1組と名を連ねている。

昨年は驚異の里崎指数100オーバーが床田-坂倉、小笠原-木下、宮城-森の3組が誕生。今季はトップが60・83と昨年ほどではなかったが、傾向としてはセのバッテリーにクイック、けん制への意識が高いことがデータに表れている。

パでは、宮城-森が94イニングだったためランク外となり、ランク入りした顔触れにも変化が表れる。シーズンごとに好不調があるのは当然で、里崎指数もどんどん入れ替わる。巨人は大城卓、岸田、小林を併用しながら優勝し、パでは田宮が強肩強打を売りに、レギュラー争いで強烈な存在感を示した。

また、捕手の盗塁阻止率でも岸田、中村が4割超の好成績を収め、3割5分以上の坂倉、山本を加えると4捕手が走者にとって大きな脅威になっている。

一方のパでは、これまで甲斐キャノンとして高い阻止率を誇ってきた甲斐が2割8分4厘と3割を切った。若月が4割7分4厘と奮闘も、太田、甲斐、佐藤はセのような走者の脅威にはならなかった。

★盗塁数低調は寂しい

走る意欲を起こさせないことこそが、最強の盗塁対策という概念でスタートしたが、セのように捕手の盗塁阻止率が高く、里崎指数も全般的に高く、盗塁数が全体として低調というのは、寂しい。

里崎指数が高い中でこそ、果敢に挑む走者が各球団に出てくることで、さらにバッテリーと走者の進歩がある。ここは、来季以降、セの走者には一層の奮起を期待したい。もちろん、バッテリー間の盗塁阻止への共同作業は継続していく中で、ギリギリの勝負が見たい。(日刊スポーツ評論家)

 

<注>里崎指数=1盗塁企図に要したイニング数(イニング÷盗塁企図数)。該当捕手と組んだイニングが100イニング以上のバッテリーを対象。割合=同捕手とのイニングが全投球回に占める割合