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2019年7月3日(水)

気づかぬうちに被害者に… 広がるレイプドラッグ

気づかぬうちに被害者に… 広がるレイプドラッグ

「トイレに立ったあとの記憶がない…」食事に出かけた相手から飲み物などに薬物を混ぜられ、性的暴行を受ける「レイプドラッグ」を使った被害。婚活やマッチングアプリが急速に普及するなか、安易に薬を使って性交渉に及ぶ事例が多発している。使われるのは病院で処方される睡眠薬。不眠を訴えれば容易に処方される手軽さに加え、わずか一日で体外へ排出されるため証拠が残りにくく、多くの被害者が泣き寝入りし、明るみになった事件は氷山の一角だとする専門家もいる。一方、数か月たっても体内の微量な薬物を検出できる「毛髪鑑定」の技術が確立され、立件されるケースも増えてきている。広がる実態と対策について、具体的に提示する。

出演者

  • 大藪順子さん (性暴力被害者 フォトジャーナリスト)
  • 石井光太さん (作家)
  • 宮田裕章さん (慶應義塾大学教授)
  • NHK記者
  • 武田真一 (キャスター)

知らぬ間にお酒に薬が レイプドラッグ被害

性的暴行を行う目的で悪用される薬物。いわゆる「レイプドラッグ」。その多くは病院で処方される睡眠薬などの“身近な”薬です。

女性
「友達が飲み会で、お酒強い子なんですけど、最初の1時間くらいですごい酔っ払って、そこから先の記憶がないみたいな。」

女性
「そんな大して飲んでないのにもう記憶がとぶってことは、たぶん絶対何か入れてるなって。絶対何かしたよね、みたいな。」

明らかな犯罪。しかし、薬を使う人物に罪の意識は希薄です。

加害者
「(睡眠薬)入れてかき混ぜて、ぐっと飲ませれば気づかないですよ。起きないですね。」

加害者
「飲み過ぎちゃった、で終わってくれればいかなっていう程度でやってるんで。」

さやかさん
「自分って1人の人間としてそのときに見られてなかったんじゃないかなと思って、なんかたぶん、人形のようにしか思ってないんやろうなって思う。」

レイプドラッグを使う動機とはどういったものなのか。それを知るため、私たちは、複数の女性に性的暴行を行った罪で服役中の受刑者に話を聞きました。

受刑者
「出会い系サイトのアプリですね。女性と知り合って、薬とかを使って、相手が無抵抗な状態で性的な行為をしてしまって。」

被害者は、マッチングアプリで出会った女性。薬を使うことに、抵抗感はなかったといいます。

受刑者
「手軽にできるし、後腐れもなく、すごく簡単にできてしまう。安易な気持ちでちょっとやってしまった。暴力を振るって、相手がものすごく嫌がっている状況の女性を無理矢理レイプするとか、強姦する状況に比べたら、自分はまだマシかなという気持ちはあったかもしれない。」

安易な気持ちで繰り返される、レイプドラッグによる犯罪。事件化されたものだけで、去年(2018年)1年で47件。医師や看護師など睡眠薬を入手しやすい立場を利用した犯行もあり、表面化したものは氷山の一角と言われています。さらに取材を進めると、軽はずみな動機による犯罪が二重三重に女性を傷つけていることが分かってきました。
レイプドラッグを使った性的暴行を受けたさやかさんです。加害者の男は今、有罪判決を受けて服役中です。しかし、被害が立証されるまでの道のりは非常に険しいものでした。

さやかさん
「事件に遭ってから裁判が終わるまでしんどいっていう思いしかなかったんですけど、本当にいろいろ、壁を1つ乗り越えたらまた壁が出てきたり。」

被害に遭ったのはマッチングアプリで知り合った男と初めて食事をしたときのこと。異変は、さやかさんがトイレから戻った後に起こりました。

さやかさん
「残っていた飲み物を3口くらい飲んでたら、途中からすごく眠たくなって。 そこからはもう記憶が…。目を覚まして、一番目の前に飛び込んで来たのが自分の家の天井だった。よく見たら自分が裸になっていてベッドに横たわっていて。相手が上に覆い被さってきて。」

意識がもうろうとする中、抵抗することはできませんでした。

さやかさん
「時間がどれくらいたったのかちゃんと覚えてないというか。相手が用事があるから帰るって言って。」

いったい、何が起きたのか…。

(メールの文面)
“22時から翌日6時までの記憶が全くないのでその間のことをお聞きしたいです。”

さやかさんは真相を確かめるため、男に連絡を取ろうとしましたが、一切返信はありませんでした。翌日、さやかさんは警察に相談。捜査が始まりました。しかし、そこで、思わぬ事実をつきつけられます。見せられたのは、防犯カメラの映像。そこには、何も抵抗せず、加害者の男と一緒に自宅へ入っていく自分の姿が映っていました。

さやかさん
「すごい、なんか不思議な感じだったのと、衝撃。私が犯人に手をひかれながら歩いていたんですよ。記憶はないのに自分が立って歩いていて。」

そして、警察官から告げられたのは…。

さやかさん
「『睡眠薬を飲まされたら担ぎ込まれたりするのが普通やけど、立って自分の足で歩いて犯人についていっているから、これはもう合意とみなされても仕方ない。これは立件できません』って言われました。合意したつもりはないけど、もしかしたら記憶がない間に合意してたりしたら、ただの男女間のもつれみたいなだけだし、確信がない。」

さらにこの時、大事な検査が行われませんでした。それは尿検査。被害から数日以内であれば、睡眠薬の摂取を証明でき、立件の重要な証拠となりうるものでした。自分の不安や苦しみを、誰にも理解してもらえない。さやかさんは、追い詰められていきます。

さやかさん
「自分1人が強姦されたとかって言って騒いで、色んな人を巻き込んで迷惑をかけたというか。すごい恥ずかしくなりました。」

1週間後、さやかさんに一筋の光が差し込みます。性暴力被害者専門の支援センターの存在を知ったのです。4年前に開設されたこのセンターでは、医療・福祉・法律の専門家と連携し、被害者が必要とするサポートを行います。さやかさんは、ここで睡眠薬の特性として、意識がもうろうとしてもごく普通に行動しているように見えるということを知らされました。

さやかさん
「私の時と同じやって思って、今まで確かな情報とかなかったんですけど、それを目にして、私の言っていることは間違いないのかなって思いました。」

そして、弁護士とともに再び警察に相談したさやかさん。この時、警察が試したのは、新たな薬物の鑑定方法でした。

研究員
「髪の毛の中に含まれる睡眠薬を、髪の毛をつぶしてやることでそこからとりやすくなる。」

毛髪鑑定。この技術を使えば、どんな薬物を摂取したか、数年分さかのぼって検出できるといいます。

研究員
「被害にあった後にちゅうちょしたりとか、なかなか申し出るのに時間がかかるということもあって。申告が遅れた方でも、毛髪であればできると。」

そして、被害から4か月が経過していたさやかさんの髪の毛から、睡眠薬の成分が検出されました。

さやかさん
「自分が睡眠薬を飲まされたということに、ちゃんとその証拠が出た。だから自分は間違ってなかったんやって。とりあえずうれしかったです。」

加害者の男は逮捕され、他の女性たちにも同様の行為をしたことが分かりました。さやかさんの事件とあわせて、2件が起訴。性的同意はなかったとして、懲役7年の実刑判決が下りました。心に深い傷を残しながらも、こうした卑劣な事件を闇に葬りたくないと、さやかさんは声をあげました。

さやかさん
「自分の積み上げてきたことを一瞬で全部崩されたという感じがあって。自分って1人の人間としてその時見られてなかったんじゃないかなと思って。誰にも伝えずに自分の中で忘れてしまうのも1つの勇気だと思うんですけど、なかったことになってしまったら、やっぱりこういう犯罪ってなくならないと思うんですよ。誰か1人信頼できる人にでも、やっぱり話してほしいというか。きっとその話すことによって、やっぱり何か変わるんじゃないかなと。」

レイプドラッグ。被害者を救うには何ができるのでしょうか?

レイプドラッグ 被害をどう防ぐか

ゲスト 大藪順子さん(フォトジャーナリスト)

武田:本当に体が震えるような怒りを感じます。何の落ち度もない人が薬を飲まされ、それまで積み上げてきた人生のすべてを否定されるような苦しみにさいなまれる。こうした犯罪を決して許すことはできません。
今夜は、性暴力被害の当事者で、ジャーナリストとして被害者の取材も続けられている大藪順子さんにお越しいただきました。こうした被害、いまご覧になって、どういうふうに率直にお感じになりましたか。

大藪順子さん:本当にひどい手口であり、人権侵害だと思います。本当に水面下にいる被害者というのはおおぜいいて、先ほどインタビューに答えられた方のように、裁判にまでいくというのは本当に氷山の一角であって、なかなかそこまでいかない。

武田:自分の積み上げたことがすべて壊されたという言葉、胸を締めつけられました。

大藪さん:そうですね。性暴力というのは、その人の根源にある性というアイデンティティーに傷が入ると思います。私もそうでしたけれども、それまで一生懸命積み上げてきた自分が、そこで、その1つの暴力で崩されてしまう。粉々になってしまう。本当に許せない。

ゲスト 宮田裕章さん(慶應義塾大学教授)
ゲスト 石井光太さん(作家)

宮田さん:相手の立場に立って、相手がどう思うかということに対する想像力を、全く欠いているということですよね。これが特にドラッグによって、睡眠薬によって相手が無抵抗に陥るというところで、あたかも罪が減じられてるかのようなことを考えているんですが、そんなことが減じられるわけでは全くない。尊厳を踏みにじる行為であるということを、われわれしっかり社会の中でも理解した上で、この問題と向き合わなくてはいけないのかなと思います。

石井さん:例えばマッチングアプリだとか、ゲームのチャットだとか、あるいは結婚の見合いサイトとか、そういったようなもので見知らぬ人間と会える。それゆえ加害者のほうも、自分の知らない人間を呼び出して、まるでゲームのように被害者に対して性暴力をして、何の罪悪感も抱かないまま、次、次、次というふうにいってしまう。いまの世の中にどうしてもそういったような犯罪が横行してしまうような空気というか、そういった社会システムがあると思うんですよね。

武田:レイプドラッグとして摘発される犯罪、氷山の一角というお話でしたけれども、取材にあたった小山さん、実は埋もれた被害、たくさんあるんですよね。

小山志央理記者(京都局):レイプドラッグに詳しい専門家の方にお伺いしたんですけれども、被害が埋もれてしまう要因として、薬の特徴があるんです。警戒心も低下してしまいますので、ふだんであればとらないような行動もとってしまう。さらに睡眠薬を飲んでしまうと眠り込んでしまって動けないんじゃないかなとイメージされる方も多いかと思うんですけれども、実はそうではなくて、普通に歩いたり、会話できたりしてしまうんです。

武田:最近は捜査の手法も改善されて、摘発もされるようになっているわけですよね。

小山記者:捜査機関のほうも対応を強化してきています。2017年に警察庁が全国の警察に通達を出したのですけれども、被害に遭ってから数日以内に尿検査をすれば、かなり高い確率でレイプドラッグ、睡眠薬などの検出が証明できます。ですので、レイプドラッグの使用が疑われる場合には、まず尿検査を積極的に検討するようにと指示しています。毛髪鑑定という新しい技術の導入も進みつつあって、期待も高まっています。

宮田さん:われわれの体の中に残った記録というのが、客観的に犯罪を証明してくれるようになってきている。今までは、犯罪があった、言う、言わない、その議論に巻き込まれるだけでもすごくつらかったところを、こういったテクノロジーによって示すことができるようになってきた。PCであったり、スマートフォンだったり、これ、すべて記録として残ります。

武田:小山さん、身を守るために何かできることはないのかと思うんですが、どうなんでしょうか。

小山記者:一般的に言われているのは、飲み物を飲みきってから席を立つこと。それと、最近では、酔い止めだというふうに薬そのものを渡して飲ませてしまうというようなケースもあるようなので、もっともらしい理由で薬を渡されても、それは飲まないということが考えられると思います。

武田:人からもらった薬は絶対に飲まないということですね。

小山記者:ここ数年で、飲み物や食べ物に入れると、青く色が変わる睡眠薬というのも開発が進んでいます。こちらです。睡眠薬に青く色が付いています。錠剤を砕いたものを入れてみます。で、混ぜると。


小山記者:このように結構強い青色が出てきますので、もしも仮に飲み物や食べ物に混ぜられていたとしても、すぐに色で気づけるという、こうした取り組みも進んできています。

石井さん:企業としてある程度責任を持って、販売するのであればそういうことをやっていくべきですよね。そもそも睡眠薬というのはそういった危険をはらむわけですから、そういう犯罪を生む危険をはらんでいるわけで、そこは強く言いたいところですよね。

武田:企業も、これで莫大な利益を上げている会社があるわけですから。こうしたレイプドラッグによる犯罪、取材を進めると、信頼関係を逆手にとって身近な人をターゲットにする手口も明らかになってきました。その実態を伝え被害を防ぐため、私たちはあえて加害者本人の話を聞くことにしました。

レイプドラッグ 身近な人から狙われる?

私たちはインターネットで情報を交換しているという加害者に、取材とは伝えず接触することにしました。やってきたのは、ごく普通の30代、サラリーマンだという男。男は仲間からレイプドラッグの手口を教わったといいます。

加害者
「掲示板で知り合って出会った師匠がいるんですけど、いたずら歴もかなり長くて、疑問があると聞いたりしていますね。」

男はさらに、にわかには信じられないことを語り出しました。

加害者
「嫁はアルコール飲まないので、缶ジュース買って、それに(睡眠薬を)やるんです。」

男は4年間にわたって、自分の妻に対しても、薬を使って何度も性的暴行に及んできたというのです。それはなぜなのか。

加害者
「価値観が合わないのかもしれないんですけど、結構ぶつかることが多いですね。妻に普段怒られてばっかりですからね。(睡眠薬)仕込んだとき、みてろよっ。」

取材を進めると、30代独身だという男が、より狡猾な手口を告白しました。

加害者
「(ネットで)ご主人と相談して、実際に2人でやってみた。自宅に呼んでもらって。」

仲間の妻に複数で性的暴行を加えているといいます。身近な人ほど犯行が発覚するリスクが少ないからだというのです。

加害者
「ばれりゃ大変なことになるけど、優しく介抱してあげれば別に怪我もしないし、まあ好奇心的な感じで、お互い傷つかず、やっちゃったていう」

相手の尊厳を思いやる気持ちは感じられません。

加害者
「自分はいっさいその女性に対して責任を負わないので、ベストは奥さん。(妻は)ご主人のやっぱりモノじゃないですか。それを借りるだけ、こっちは。」

歯止めを失い暴走し続ける、レイプドラッグを使った犯罪行為。大切な人を守るためにどう向き合えばよいのでしょうか。

レイプドラッグ 大切な人を守るために

武田:こういった声を大藪さんに受け止めていただくことが、本当にいいのかという思いがするんですけれども。

大藪さん:本当にあほちゃうかと思います。でも、この加害者たちは、きっと生きている中で、育ってきた中で、人間の関係性とか、そういうもののゆがみというのが、どこかでそうなってしまっているのかもしれません。本当に軽い、あまりにも軽くて卑劣な行動というのは、本当に許してはいけないことだと思います。

武田:小山さん、これは確認ですけれども、全く罪の意識がないように見えましたが、これは罪に問えることですよね。

小山記者:もちろん、いくら夫婦間であったとしても、睡眠薬を飲ませて性的暴行を行うと、これは十分に犯罪に問われる可能性があります。最新の内閣府の調査によれば、無理やり性交等された被害経験のある女性のうち、加害者が配偶者または元配偶者というケースが、およそ3割というデータもあるんです。意外に見知らぬ人からの性暴力が多いんじゃないかというふうに考えられる方が多いかもしれないんですが、実は違うんだというような状況もあります。

武田:万が一、被害に遭ってしまったと気づいた場合、ご本人はどうすればいいんでしょうか。

小山記者:まずは、すべての都道府県にあるワンストップ支援センターというところに相談することができます。性犯罪被害者の方専門の支援センターを開設していて、この支援センターに行けば、妊娠だったり怪我が心配な場合には病院に付き添ってくれたりとか、心理カウンセリングを受けることができます。警察に行きたい、でもなかなか1人だと心細い、という場合に、警察に一緒に付き添いもしています。

武田:周りにいる人たち、家族や友人というのは何ができるんでしょうか。

大藪さん:まず受け止めるということでしょうか。例えば娘がそういう被害に遭って、お母さんに言ったと。そこでやはり、すごくお母さんもショックを受けると思います。すごく悲しいし、怒りっていうのもきっと出てくるだろうし。その感情っていうのは、私はもっと素直に共有するべきだと思います。とっさに出た言葉が、「誰にも言ったらだめよ」とか、「あなたどうしてそんな人と一緒に歩いていたの」とか、そういうのではなくて。

武田:本人を責めるような言葉になってしまいがちですよね。

大藪さん:はい。そうではなく、きちんと受け止めるということ。それが実際に起こってしまって、愛する人がいますごく悲しんでいて、苦しんでいるんだということをきちんと受け止める。きっと何を言っていいか分からないかもしれませんけれども、分からなければ何も言わなくていい。ただ一緒に悲しむ、一緒に怒る。そういう感情を共有することがとても大切だと思います。

武田:大藪さんがこれまで撮り続けてこられた、性暴力被害者の皆さんのポートレートをご覧いただきたいと思います。



武田:大藪さん、なぜ性暴力被害者の方々のポートレートを撮ろうと思われたんですか。

大藪さん:被害者だからかわいそうな人たちだったり、いつも怒ってるとか、その感情だけで被害者は生きてるわけではなく、その1人の存在があって、その人にはいろんな感情があって、ちゃんと名前があって、1人の人なんだということを見てもらいたいということがありました。どうしてその人たちが顔を出して実名で語りたいのか、なぜだろうって考えるんですよ。そこで共通していたことは、どうして私にこういうことが起こったのかという疑問の答えを、一生懸命見つけようとしていたことですね。

石井さん:僕自身もこういった人たちの話を、物語というか、1つの本にまとめたりもするんですけれども、彼女たちと話をしていて非常に思うのが、レイプの被害に遭った、性犯罪の被害にあった瞬間に、その人の人格みたいなものが、1回すべて壊れてしまうんですよね。壊れた人ってどうしなきゃいけないかというと、それを再構築していく必要がどうしても出てくるんです。同じような被害に遭った方が大藪さんのような方の活動を見た時に、考える選択肢になると思います。

宮田さん:先ほどのVTRで出てきた犯罪者、彼らはまさにその点の想像力が欠如していたと。自分は女性に生まれることはないので、そこに対する想像をしない。だからといってそれでいいということではなく、相手の立場に立った時に、その人がどういう人生を背負っているのか、そこにどういう痛みがあるのか。こういったことを考えながら共に生きていくことは、非常に重要ですよね。

大藪さん:私自身、自分が被害に遭うまでは、自分とは全く関係ないことだと思っていたんです。私は、みんなが安全だという場所に住み、夜中1人で歩くこともなく、服装だってきちんとしていたはず。先入観にがんじがらめになっていて、自分には関係ない話だと思ってた。それが、無関心でいることが、いかに加害者を野放しにする社会に加担していたのかいうことに気づいた時に、私も加害者側にいたんだなっていうのがすごくはっきりして、非常に大きなショックでした。

武田:私たちはこういうことが起きていることを、きょうまでしっかりと把握できなかったということがありますし、皆さんがどういうふうにして笑顔にたどりついてきたのかということさえも、なかなか分からない。そういう中で、私たち1人1人がどうあるべきか。こうした犯罪が起きないように、私たち1人1人が監視の目を光らせなければいけないし、何より許してはならないという決意を持つ。そういう責任があるんじゃないかと感じました。


クロ現プラスでは性暴力について今後も取材していきます。
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