聞き上手になるには賢さが必要なようです。ほとんどの人は「自分は平均以上の傾聴力(人の話に耳を傾けてしっかり聞く能力)を持っている」と思っていますが、残念ながら現実は違います。
傾聴は上達させるべきスキルです。最近、米ジョージワシントン大学で行われた研究により、傾聴力はリーダーのパフォーマンスに最大40%の影響を与えることがわかりました。
「聞く(listen)」という言葉と「沈黙(silent)」という言葉は全く同じ文字でできている。
──アルフレッド・ブレンデル(オーストリアのピアニスト)
職場では人の話を聞く機会はたっぷりあります。フィードバックを出す、仕事の指示をする、締め切りを伝えるなど、話す目的はいろいろあります。口から出た言葉からだけでなく、声の調子やボディランゲージから言外に読み取れる貴重な情報もあります。
言い換えれば、目と耳で常にしっかりアンテナを張っていなければいけません。
効果的な傾聴はもちろん習得可能です。注意深く人の話を聞くのは難しいと感じていたり、状況によっては人の話を聞くのは退屈だとか不愉快だと感じているからといって、人の話に耳を傾けるスキルを習得できないわけではありません。少なくともどんな努力をしたら良いか知っているべきですが、これからご紹介する方法を使えばうまくいきますよ。
1.集中する
ほとんどの人が犯しがちな過ちは、自分が次に何を言うか、あるいは、相手が言おうとしていることが自分にどんな影響を与えるかにばかり意識を集中させてしまうため、相手が言おうとしていることを聞き損なってしまうということです。相手の言葉は十分な音量ではっきりと聞こえているのに、言わんとすることを受け取り損なっています。集中するというのはシンプルなようで、言うほど簡単ではありません。人間の思考は信じられないぐらい散漫なのです。
2.携帯電話を遠ざける
人の話をしっかり聞きながら同時に携帯電話もチェックするのは不可能です。会話の途中でメール見ることほど相手を興ざめさせることはありません。ちらっと携帯を見ただけでも相手はムカッとします。人と会話をしているときはその会話に全身全霊で集中しましょう。会話に没頭すると、会話がもっと楽しくなり有意義にもなります。
3.うまく質問して相手の話に理解と興味を示す
人は相手が自分の話を聞いているか知りたいので、何かをはっきりさせるような質問をすると、こちらが傾聴していることを示すだけでなく、相手の話に関心があることも示すことができます。相手にうまく質問するだけで、どれだけ感謝され尊敬されるかわかるとびっくりするはずです。聞いたことを確かめるだけでなく、もっとそれについて知りたいという気持ちを示すような質問をしましょう。たとえば、「それでどうなったの?」とか「どうして彼はそう言ったの?」がこの場合は良い質問です。会話を別の話題に移すよりも、相手の話を理解する足しになるような質問をするのが鍵です。
4.「反映的傾聴」を実践する
「反映的傾聴(reflective listening)」は心理学者のCarl Rogers氏が用いた言葉で、聞き手が話し手の言葉を正しく理解したことを示すために、話し手が言ったことを別の言葉で置き換えるという技術のことです。反映的傾聴をすると話し手に自身の意図を明確にする機会を与えることになります。コツとしては、話し手の言葉をそのまま繰り返して言ってはいけません。自分の言葉で言い換えて話し手の意図をしっかり理解していることを示しましょう。
5.ポジティブなボディランゲージを使う
自分の身振りや表現や声の調子を認識していると人の気持ちをうまく引き付けられます。傾聴力が高い人が用いるポジティブなボディランゲージとしては、熱心な口調、腕を組まない、アイコンタクトを保つ、話し手の方に体を傾けるなどがあります。ポジティブなボディランゲージはEQ(心の知能指数)が高い証拠であり、会話に多大な影響を与えます。
6.自分の価値観を押し付けない
傾聴力が高い人は心がオープンです。心がオープンだと、声をかけやすい人とか面白味のある人だと思ってもらえます。自分の意見に固執して人の話に聞く耳をもたない人とは誰も話したくありません。オープンな心を持つのは職場では欠かせないことです。職場で人が寄ってきやすいということは、新しいアイデアが入って来やすく、人の助けも得やすいということです。先入観や批判的な気持ちをなくすには、他人の目を通して世の中を見る必要があります。これは、他人と同じことを信じろとか他人の信条を大目に見ろという意味ではありません。相手が言っていることを本当に理解するまでは、判断は避けるべきだという意味です。
7.自分の口は閉じておく
相手の言うことを理解できているか確認するときか質問をするとき以外は自分から話さないようにしましょう。自分は次に何と言うべきか考えると相手に向けていた注意がそれてしまいます。それだけでなく、会話を乗っ取ると、こちらの言いたいことのほうが重要であるかのように見えてしまいます。つまり、話し手の抱えている問題に対策を提案する形で関わってはいけないということです。人助けがしたいのは人間の生来の性質ですし、大切に思っている人が困っている場合はなおさらです。しかし、私たちの多くが気づいていないのですが、こちらからアドバイスや対策を提案すると相手を黙らせてしまいます。「OK。君の言いたいことはわかったよ。十分話は聞いたよ。」という言い方の方が社交上良いのかもしれません。
まとめ
人生は忙しく、日々その速度を増していくようです。たくさんのことを一度にしようとしていて、たまにはうまくいくこともあります。しかし、積極的に効果的な傾聴をするには忙しくバタバタしていては無理です。意識的に努力することが必要です。
7 Things Great Listeners Do Differently | Inc.
Travis Bradberry(訳:春野ユリ)
Photo by zoetnet/Flickr (CC BY 2.0).