話題「奇をてらわず、物流戦略の重要地に、必要な保管スペースとオペレーションに応える適切な仕様の倉庫を、利用しやすい賃貸料で提供することが、施設開発における私たちの1つの指針」。そう語るのは、三井物産コーポレートディベロップメント本部不動産事業部第一事業室の新井健資氏である。
大阪府茨木市の大型物流施設「LOGIBASE茨木彩都」はまさに、そんな施設開発を体現する物流拠点と言えるだろう。三井物産と長谷工コーポレーションが共同開発し、三井物産都市開発がプロジェクトマネジメント業務を担当する。三井物産グループの総合力と長谷工コーポレーションの豊富な物流倉庫建設・開発実績を活かし、利用者にとって使い勝手の良い物流倉庫を開発する。
立地、BCP対策など、物流戦略の重要地「茨木彩都」
まず、物流拠点としての最重要ポイントである立地から同施設を検証してみる。
LOGIBASE茨木彩都が立地するのは、大阪府茨木市において都市整備事業が進む国際文化公園都市・彩都の東部地区。大阪市と京都市という近畿の巨大都市の中間に位置する。大阪府内や市街地エリアへの高頻度配送に対応し、京都や神戸市など関西の巨大消費圏への配送にも適するなど、関西の拠点施設としての優れたポテンシャルを誇る。
施設から南に向かえば名神高速道路、北には新名神高速道路が延びており、東西への大動脈による広域配送においても利便性が高い。名神の茨木インターチェンジ(IC)まで車で13分、新名神へのアクセスに至っては茨木千提寺ICまでは1.5キロ、車で5分で接続可能な至近距離にあり、関西の中心地からの物流網構築において、対応エリアの広さと速さともに抜群の立地と言えるだろう。
周辺の状況からも、同地が物流要衝としての評価を確立していることがわかる。彩都の開発先行エリアでは、新名神に近いことを生かした工場や倉庫の建設が進み、大型物流施設開発も相次いだが、いずれも成約状況は順調のようだ。大手アパレルメーカーが本地域に物流倉庫を設けるなど茨木市を西の物流拠点に位置付けたことや、大手EC企業や大手メーカーの多くも自社物流拠点を茨木市内に構えたことなども、このエリアの物流における重要性を証明する。三井物産都市開発 開発事業本部開発事業推進部兼テナントリレーション室の井上治彦主任は、「施設から10キロ圏内には主要路線業者の拠点が10か所以上あり、急な荷物などにも臨機応変に対応し、集荷時間や荷物量などによって利用拠点を使い分けることも可能」な環境も大きなメリットであると言う。
また、「近年は、BCP(事業継続計画)対応を重視して彩都での拠点開設を問い合わせる例も多い」(井上氏)と言う。彩都エリアは大阪内陸部、北摂の丘陵地にあり、河川氾濫のダメージ等を受けにくい地域として一般的に評価されている。「BCPに強いエリアとして、『東の千葉県印西市、西の茨木市』などと称されることも。自然災害の激甚化による想定外の事態への備えも重要となっていることからも、データセンター事業の展開や事業継続でのリスク分散においても優位性のある拠点だと言える」(井上氏)
物流適地としての立地を生かした3PL事業や、日雑、アパレル、EC運用での問い合わせのほか、BCPを重視する精密機械系からの問い合わせなども多く、多様な業態からの関心を集めていると言う。「物流機能の再編などにおいて、多様な用途、課題ごとに、最適な機能を提案できる施設」だと井上氏は胸を張る。
LOGIBASEの開発貫く、「基盤作り」にこだわる思想
LOGIBASE茨木彩都は、来年25年1月の竣工を予定。敷地面積3万8543平方メートルに、6階建て、延床面積8万9967平方メートルと容積率を最大限に活用した設計で十分な保管スペースを確保するとともに、1階から5階まではシングルランプウェイから直接各階バースに接車できるなど機動力にも優れる。また、5階と6階はメゾネットタイプとなっており、積み下ろしの迅速なオペレーションだけではなく、保管効率を重視したフロア構成での物流構築も選択できる。
各階の有効梁下高5.5メートル、床荷重は1平方メートルあたり1.5トン(1階のみ2.5トン)と、あくまでも汎用性や標準的な仕様による使い勝手の良さにこだわる。また、自動車などでの通勤も多いと考えられることから、101台分の一般駐車場を整備している。
「LOGIBASEとしては、ランプウェイを採用した施設はこれが初めて。これまではBOX型での開発に力を入れ、保管効率の良さと、テナントが安全・安心に運用しやすい環境作り、スケールと比較して利用しやすい価格設定などでノウハウを蓄積してきたが、茨木彩都は、機動力と保管性能などのバランスに応じた、最適な拠点編成をサポートできる施設とした」(新井氏)と言う。
LOGIBASEというブランド名には、三井物産グループの物流ネットワークを活用し、社会・産業・企業にとっての物流インフラ基盤「BASE」の整備・更新を通してよりよい社会の実現に貢献するという意味が込められていると言う。企業ごとの戦略に応じて施設戦略もさまざま、正解は1つだけではない。予め用意されたオプションに自社の物流計画を当てはめるのではなく、まずはしっかりとした基盤の上に、それぞれの目的に応じたオプションを積み上げて行けるような施設がLOGIBASEなのだ。
価格競争力も魅力、物流要衝・彩都からの拠点構築最後のチャンス
新井氏はLOGIBASE茨木彩都を、「物流要衝・彩都東部中央東地区で最後の大型物流施設」と表現する。「すでに大型物流施設に適した用地確保も難しく、今後建設コストの高騰や人材確保など、喫緊の物流課題に対応できるような施設をこのエリアに開発するのは難しくなるばかり。LOGIBASE茨木彩都は、西日本エリアの要衝から拠点再編戦略に組み込めるラスト・チャンス」(新井氏)として、物流拠点再編計画の切り札になるだろうと言う。
三井物産がこのエリアに、これだけの規模の施設を開発できたのは、この巨大用地がもともと三井物産の所有地だったことによる。20年以上前に確保していた土地が、社会環境の変化やインターチェンジ開設など周辺道路インフラの整備を経て、物流の重要地としての価値を高めたことが、今回の施設開発を進めるきっかけの1つだった。
「古くに取得した用地での開発であることが、賃貸料金にも反映している。このエリアでの拠点設置を検討しているならば、ぜひ他の周辺施設の募集価格とも比較してもらいたい。周辺の相場よりも圧倒的に利用しやすく、価格競争力にも優れる施設であることがわかってもらえるはず」(井上氏)
基本にこだわり、無駄なものは削ぎ落とした建設も、合理的な賃貸料設定につながっている。井上氏は、「賃料コストの削減分を、別の投資や賃金向上の原資とすることなども、施設再編における重要な視点となるのではないか」と語る。
三井物産グループの総合力で後押しする、最適な拠点運用
物流拠点としてのしっかりとした基盤を固めた上で、入居者それぞれの課題や目的に応じた運用でのサポートにも対応できるのが、三井物産グループとしてのチーム力である。「三井物産ブループとしての総合力として、もっとも活用してもらいたい部分」(新井氏)だと言う。
資源、エネルギー開発から、機械・インフラ、流通など生活産業まで、多様な領域で、国内のみならずグローバルな課題解決力を有する総合商社、三井物産だけに、その守備範囲もきわめて広い。LOGIBASEを冠した物流不動産事業にも、適切な用地での適切なタイミングでの開発など、三井物産グループの総合力が生かされて強みを発揮している。
目新しさや、奇抜さではなく、必要な場所に必要な施設を適切な価格で提供できる、本質を見極めた施設開発を求める声は大きい。基本にこだわり、三井物産グループでしか実現できないサポートで最適な運用体制構築をバックアップしていくことこそが、グループで目指す物流課題への貢献だと言えるのではないだろうか。
所在地:大阪府茨木市彩都はなだ2-3
用途地域:準工業地域
敷地面積:3万8543平方メートル(1万1659坪)
延床面積:8万9967平方メートル(2万7215坪)
構造・規模:RCS造(柱RC造・梁S造)/地上6階建て
環境認証:CASBEE Aランク認証取得予定
「LOGIBASE茨木彩都」紹介サイト
https://www.mbtk.co.jp/business/housinglist/logibase/saito.html