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虜になった『ナイチンゲール』の異形、「モデラーを育てるのは家族の理解と模型仲間との絆」【連載第25回】
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MSの工業製品としての「武骨さ」や「色気」をガンプラで表現したい
すえぞう小学校時代にガンプラブームがあり、周りの友達がやってたのでその流行りに乗る形で始めたのがきっかけです。
――はじめて作成したキットは何でしたか?
すえぞう小学校時代に買った「シャア専用ムサイ」です(苦笑)。当時、サッカーをしていたので『ガンダム』が何かも分からず、パッケージに『ガンダム』の文字があったので買ったのを記憶しています。作り方も分からず、まともに作れなかったですね(笑)。
――では、ガンプラにのめり込むようになったきっかけは?
すえぞうしばらく模型制作から遠のいていたのですが、ふと入った模型店で見かけたMG(マスターグレード)のカッコよさに惹かれたのと、その時に開催されていたコンテストが刺激的だったことです。以降は、模型誌はもちろんですが、それに限らずにいろんな物を見て模型制作の参考にするようになりました。例えば、日常に溢れる工業製品の機構や注意書きなんかは、ガンプラ制作時のヒントになりますし、他のモデラーの方の作品からも刺激やアイデアをもらっています。
すえぞう工業製品やその機構については、一つひとつが「製品」として成立してるものです。それゆえに無駄がなく綺麗で、時に色っぽく見える点が僕の制作スタイルにリンクします。そうした「色気」だったり「機械的構造」をどうガンプラに落とし込むのかを日々考えています。
――では、代表作の「ナイチンゲール」にもそうした部分が影響しているわけですね。
すえぞう制作スタイルの拘りと言っていいのか悩む所ですが、「工業製品」としての“視点”を大事にしています。なので、フォルムの美しさはもちろん、あくまで「工業製品」としての武骨さをイメージできるように作っています。ただ、あくまでディテールはディテールなので、「ナイチンゲール」の持つ美麗なデザイン性を極力変える事なく、一目で「ナイチンゲール」だと分かってもらえるようにオリジナル表現の“誇張”加減には気をつけています。
――おっしゃる通り作品からディテールへのこだわりを感じます。制作にはどれくらいの期間がかかりましたか?
すえぞう途中、休み休みでの制作だったので3年近く掛かってしまいました(苦笑)。集中してやっていれば1年もかからなかったと思います。1日の作業時間としては3時間ぐらい。「制作に掛けた時間は裏切らない」と自分に言い聞かせていました。
自身の強みである「工業製品」的アプローチは続けたい
すえぞう『ガンダム』の生みの親である富野由悠季監督による小説版『機動戦士ガンダム逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン(ベルチル)』(KADOKAWA)に出てくる機体ですが、やはりシャア・アズナブルが最後に乗った機体であったり、その異形な形状であったりと魅力は尽きません。制作するにあたっても、僕のやりたいディテールを盛り込んでいける余白が数多くあったのが魅力です。
――『ベルチル』はアニメとして映像化がされていないため、モデラーとして妄想を加える余地が多い作品かと思います。
すえぞうそうですね。あと、『ベルチル』は映画『逆襲のシャア』の初期稿をベースとしているため、劇場版で描き切れなかった人間関係の部分やストーリーの背景が読めるので、映画とはまた違った解釈も出来るのでおすすめです。
――『ベルチル』でアムロが乗る「Hi-νガンダム」と、シャアが乗る「ナイチンゲール」はそれぞれ人気が高いですね。
すえぞう映画版と小説版で「ナイチンゲール」と「サザビー」がそれぞれ登場しますが、僕の中では同一機体の認識でいます。なので、以前作った際も一部共通の意匠を盛り込んでいます。「サザビー」には人型MSとしての、「ナイチンゲール」には異形なMSとしての魅力がそれぞれにあると思います。共通しているのは、シャアが最後に乗り、ネオジオンを象徴するMSだったという事でしょうか。
――ガンプラ制作における、自身の強みや得意な技術を教えてください。
すえぞう強みとして実感しているのは、なによりもまず同じ趣味を持つ多くの友人に恵まれた事と、家族の理解がある事だと思っています。そのお陰で今の僕があるのは間違いないです。得意とする技術については、MSが持つ元々のラインを尊重して、その上で構造や機能を想像出来るようにプロポーションやディテールからデカールまで、オリジナルの要素として落とし込んでいく事です。
――その技術を習得するためにどんな努力をしましたか?
すえぞう数多くの失敗を乗り越えて毎回試行錯誤しながらも作ってます。気をつけているのは、仕上がった段階で違和感がない事。キットラインに馴染んでるように追加工作部分は特に丁寧に処理していて、これが努力と言えばそうかもしれないですね。常に自分なりの「カッコいい」をガンプラで表現出来るよう、これからも「工業製品」のアプローチは突き詰めていきたいです。
――最後に、自分にとってガンプラとはどんな存在ですか?
すえぞう間違いなく、自分を形作る1つだと思ってます。たかが模型だと思われてしまうかも知れないですが、そこから友人や親友も数多くでき、年齢性別や社会のしがらみを抜きにひたすら語り合える仲間ができたのはガンプラがあったからこそだと感じています。今となっては切っても切れない存在です。
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