5月20日に朝日新聞らが報じた、「若者のテレビ離れ」の記事。元はNHK放送文化研究所が20日に発表した、国民生活時間調査である。メディア側ではこれを「衝撃」と受け止めているが、ネットでは「いまさら何を」的な反応であった。
メディアが世間とズレている、と一刀両断してしまえば話は簡単なのだが、そこにはなかなか簡単にはいかない話がある。まず、こうしたニュースを拾って積極的に自分の意見を発信するネットユーザーは、毎日何らかの形でSNSと関わっている人たちで、そういう人たちは多いとはいっても、まだ「それが平均」とまではいかない。
メディアでは後追いで、若者のテレビ離れについてさまざまな分析記事を掲載しているが、どうも別の有識者に聞くというものばかりで、元データに当たったものが少ないように見える。元データを分析すれば、そこに回答は載っているのではないか。そう考えて、元データを引っ張り出して検討してみることにした。
この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年6月7日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから。さらにコンテンツを追加したnote版『小寺・西田のコラムビュッフェ』(月額980円・税込)もスタート。
「若者のテレビ離れ」記事の元になったデータは、これである。
元となった調査は、テレビに関する時間の使い方だけでなく、生活における時間の使い方を幅広く調査したものだ。
これは、1日のうちに接触したかどうかの調査であり、19歳以下の若者層でのテレビ接触率はほぼ50%ということになっている。この調査は5年に1度しか行われておらず、2015年の調査では、減少傾向は加速していたが、まだ5割を切るまでには至っていなかった。
各新聞社がこのデータを衝撃的と報ずる理由は、上のグラフで20代〜30代のいわゆるF1層を見ると分かってくる。いわゆる広告が一番効く層が含まれるのだが、ここの数値が20代ではインターネットに大負け、30代で均衡と、テレビ広告時代の終わりを示すには十分なデータだ。
そしてF1層予備軍の16〜19歳がこの数字では、あと数年で20代の接触率も下がるだろう。
日本の民放キー局は、新聞社資本である。稼ぎ頭であったテレビでは、もう広告は稼げない、と喉元に刃を突きつけられた。黙っていればバレなかったのに、その刃を突きつけたのが広告収入無関係のオノレNHK、という構図なのである。
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