「紙ベースの作業が異常に多い」――そんな保育士の労働環境を変えようと、業務改善に取り組んでいる保育園がある。千葉県内で10カ所の認可保育園を運営するハイフライヤーズ(千葉市)は、各園の書類管理のためにクラウドストレージ「Box」を導入。社員に社用のiPhoneも貸し出し、電子化した書類をチェックしやすくしている。対象は、7月時点では一部の職員とマネジャークラスに限定しているが、今後は全職員に広げる計画だ。
このほどBox Japanが開いたイベント「Box World Tour Tokyo 2019」で、ハイフライヤーズの石崎順帆さん(施設開発部長)が「前例に捉われない保育園を作りたい」と思いを語った。
2019年7月現在、同社が10カ所の保育園で抱える園児数は合計約450人。これとは別に、週に2〜3日だけ預かる「一時預かり保育」の利用者数は、年間延べ8000人(19年度)を見込んでいる。石崎さんは「15年に1カ所目の認可保育園を設立して以来、かなりのスピード感で事業を拡大してきた」と話す。従業員数は直近5年間で、5人(15年)から100人(19年)と20倍になった。
そうした中、課題になっていたのが、異常な量の紙ベースの作業だった。保育業界では、「メールだと容量が多くて気付きにくいので、(資料などを)FAXで送った方が効率的」「保育士は子どもと接する仕事がメインだから、PCを使えなくてもいい」といった考えを持つ人も少なからずおり、紙ベースでの作業がかなり多いという。
そうした風潮を変えるため、同社は17年ごろにペーパーレス化を決意。保護者に子どもの様子を知らせる「おたより手帳」を電子化し、スマートフォンアプリを通じて提供する取り組みを始めた。
当初は「手書きでないと保護者に温かみが伝わらない。保育士のやりがいでもある」などの反対意見も出ていたが、利便性の高さもあって徐々に浸透。「ピーマンを全部食べられた」「きょうはこんな遊びをした」などの園児の様子を写真付きで報告できるため、保護者からは好評を得ているという。
まず保護者とのやりとりをペーパーレス化し、社内の意識を改革したところで、同社が次に着手したのが園内の情報共有の仕組みづくりだった。従来、同社が運営する10カ所の保育園では、それぞれの園長が園児が登園・降園した時間などを紙に記録し、1カ所の保育園に集めて報告をしていた。10カ所の保育園から保育士が集まる会議では、書記が紙のノートに議事録を取り、会議後に共有していた。
しかし、紙ベースの資料を共有するために、保育園を移動するのは職員の負担になっていたという。資料には、園児の名前や顔写真、緊急連絡先などの情報も含まれるため、流出した際のリスクも高かった。議事録を手作業で記録するのは、内容をリアルタイムに把握できない他、書記に負荷がかかる課題があった。
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