8億3901万3368円――niconicoが動画制作に関わるクリエイターへの奨励金としてドワンゴが約2年間で支払った総額だ。2011年末に始まった「クリエイター奨励プログラム」はスタートから2年3カ月が経ち、年収1000万円以上の高額を手にする人も出てきている。配布額と人数をさらに増やしていくため、動画広告の導入も決めた。奨励金制度の現状と展望を、同社の伴龍一郎さん(プラットフォーム事業本部 本部長代行)に聞いた。
「クリエイター奨励プログラム」は、プレミアム会員収入の一部を原資として、投稿作品や制作に関わるツール、素材の制作者に奨励金を支払う制度。作品単位で登録し、現在は動画、静画(イラストや漫画)、「ニコニ・コモンズ」内の素材が対象で、プレミアム会員であれば基本的に誰でも登録できる。
ユーザーが生み出したコンテンツがniconicoの強みの根底であり、主体的な創作活動を支援したいという思いで2011年12月に始めたという。伴さんは「モチベーションの形は人それぞれなのはもちろんだが、金銭でのフィードバックはわかりやすい形の1つ。よりよい作品を生むための資金にしてほしい」と狙いを説明する。
スタートから2年以上が経ち、登録者数は7万6000人以上、登録作品数は16万6000以上に上る。総支払額は8億3901万3368円で、100万円以上を受け取ったユーザーは171人。500〜999万円は18人(直近12カ月では8人)、1000万円以上は11人(同3人)と、「これだけでご飯を食べていける程度」(伴さん)の収入を得る人も出てきている。2月における1再生あたりの支払額は0.388円となった。
プログラムの特徴は、単純な再生数が指標ではないこと。VOCALOIDで作られた曲が「歌ってみた」「踊ってみた」に派生し、CGを使ったミュージックビデオ、複数の楽曲でのマッシュアップ、イメージイラストにつながっていく――そんなniconicoならではの創作の連鎖を踏まえた指標「人気度」が使われている。
「人気度」の算出には、動画を投稿する際に元ネタにした作品や制作に利用した素材などを設定し「親作品」「子作品」として関係が明確になるコンテンツツリー制度が大きく関わっている。子作品が何らかの理由で再生数が伸びた場合、親作品のクリエイターにも還元される「子ども手当て」がその筆頭で、これまでの奨励金の総支払額の45%を占めるという。
niconicoの人気ユーザーというと「ボカロP」「歌い手」などを思い浮かべるが、「子ども手当て」制度によって、2次創作可能な背景素材やBGM、動画制作ツールなどを共有するサイト「ニコニ・コモンズ」のクリエイターにも金銭的な還元がある。動画ではなくツールや素材を中心に公開しているユーザーで、年間100万円以上を受け取っている人も複数人いるそうだ。
伴さんは「目立つユーザーだけでなく、創作を支援する側にも還元される仕組みであることを強調したい。今後対象を3Dデータなどにも広げていければ」と技術面のクリエイターにも積極的に奨励金制度を利用してほしいという。
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