着ると姿が見えなくなる透明マントを実現するかもしれない新技術を、米パデュー大学が開発した。
同校は前にも透明マント技術を開発しているが、今回の新技術は以前の設計よりもシンプルで、すべての可視スペクトルの色に対応し、これまでよりも大きな物体を隠すことができるという。もしかしたら「変換光学」の実用化につながるかもしれないと研究者は述べている。
これまでの設計は、「メタマテリアル」と呼ばれる人工物質を使用して、光の屈折率を1未満あるいはマイナスにすることで物体を透明化しようとしていた。メタマテリアルは複雑なナノファブリケーションが必要だが、新しい設計は、「テーパー状の導光板」を基にしたもっとシンプルなデバイスだと同校のウラジミール・シャラーエフ教授は説明する。導光板は通信機器などに使われている確立された技術という。
このデバイスは、金でコーティングされた平坦なシートと曲面レンズで構成される。研究者らは、このデバイスにレーザー光線を当てて、その中心にある直径50マイクロメートルほどの物体を透明化したとしている。物体に光を当てると通常なら反射されてしまうが、このデバイスでは、川の水が石の周りを流れていくように、光は物体の周りを流れて反対側に抜けるという。メタマテリアルと同様に、このデバイスも光の屈折率を変えるが、レンズの曲面に沿って屈折率をゼロから1へと徐々に増やす。
このデバイスではレーザー光の波長の100倍の面積を透明化できる。メタマテリアルを使ったこれまでの実験では、波長の数倍の大きさの領域しか透明化できなかった。透明化できる面積が大幅に拡大したため、これまでよりも大きな物体を隠せると研究者らは期待している。
またこれまでの透明化デバイスは1つの光の波長しか隠せないため、多くのデバイスを入れ子にする必要があったが、新設計は入れ子構造と同様の効果を発揮するかもしれないと研究者らは話している。
この新設計の詳細は、5月29日発行の「Physical Review Letters」誌の論文で解説されている。
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