ニワンゴは6月18日、動画にコメントを付けられるサービス「ニコニコ動画」をリニューアルし、「γ版」から「RC版」に改名。新機能を追加し、月額525円の有料アカウント「プレミアム会員」の登録を始めた。
目ぼしい収益源がなく赤字運営の同サービスが、有料会員制の導入でビジネス化に向けて本格的に動き始めたようにも見える。だがニワンゴの取締役兼管理人・西村博之氏(ひろゆき氏、30)は「有料化は面白くするための試み。ビジネスに寄りすぎるとつまらなくなるから、ニコニコ動画を極端にビジネス寄りにするつもりはない」と語る。
RC版は、ユーザーインタフェースを一新したほか、動画に付いたコメントのうち好みのものを保存しておき、後で参照できる「マイメモリー」機能を追加した。自分のマイメモリーを公開したり、ほかユーザーが作ったマイメモリーをリストに登録することも可能だ。
プレミアム会員(カード決済なら月額525円、WebMoneyによる90日チケットなら1680円、6月中は無料)は、混雑する時間帯でも画質低下なく視聴でき、快適に動作する専用サーバを利用できるほか、限定公開中のモバイル版「ニコニコ動画モバイル(RC)」も利用可能だ。
オプション機能も一般会員向けより強化した。コメントのカラーバリエーションやマイメモリーの登録数、気に入った動画を登録する「マイリスト」の登録数、動画投稿サイト「SMILEVIDEO」のアップロード容量も一般会員より増やした。
プレミアム会員向けマイメモリー機能は6月22日から、あらかじめコメントを保存していなくても過去の時間を指定して再生できるようにする。モバイル版のテスト期間終了後は、HSDPA携帯なら最大15fpsで再生できるプレミアム会員限定機能「臨界突破機能」を追加する。
――「γ版」から「RC版」に改名し、機能も追加しました。新機能追加や改名の背景を教えてください。
「RC」に特に意味はないですが、有料の機能もつけるので名前ぐらい変えといたほうがいいんじゃないかというくらいで。
マイメモリー機能は、昨年のテスト段階から実装を考えていたもの。コメントは、ぼくが見たときは面白くても、3日後見たらあまり面白くなかったりするので、面白かった時のを残しておきたいと。
――有料版はなぜこのタイミングで導入したのでしょうか。
「赤字である」というのがそもそもあり、なんとかせねばならんと。「これだけユーザーがいるんだから、お金を払ってくれる人も何割かはいるのではないか」という淡い期待があります。
いままで通りのサービスは無料で利用できるから、お金を払う必然性はあんまりない。そこであえて、525円という“なんだか分からない金額”を払う人を集めておくとちょっと面白いことができるかなぁ、という。
愚にも付かないものにお金を払ってくれる人は、面白いものに対して投資を惜しまないタイプの人だと思います。そういうセンスのある人たちが、動画の評価をしたりしてくれれば、ユーザー全員に評価してもらうのとはまた別の結果になるんじゃないかなと。
「これは面白いけど負荷が高いよね」という企画を、有料会員限定で出すことができたりなど、サービスの選択肢も増えます。そういうのができる枠として、有料会員枠を作っておきたい。
――なぜ月額525円なんでしょうか。
深い意味はありませんが、某SNSのプレミアム会員よりは高くしよう、という意地があったみたい。あんまり安いとカード課金手数料割合が大きくなっちゃうとか……。
――どれぐらいのユーザーが有料会員になると見ていますか。
会社としては、ユーザーの5%、約6万5000人が有料会員になると想定しているようですが、さすがに東京ドーム(5万5000人収容)を埋めるのは難しいと思いますが。
たとえ5%入会したとしても、有料会員向け専用回線を引く、という投資も増えるので黒字になるというわけではありません。
お金が大事だというのは確かにそうなんですけど、面白いものをつくるために有料化しているというところを誤解してほしくないなぁと。別に払いたくない人は払わなくていいと思うんですよね。
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