ドコモは、2月2日に2023年から実施している通信品質の改善に関する進捗(しんちょく)状況を発表した。同社のユーザーが“パケ詰まり”をSNSなどで訴えるようになり始めたのは、2023年のこと。その声は日増しに増え、4月には対応策の発表を余儀なくされた。コロナ禍が終わった結果としての人流の戻りを過小評価していたのがその理由。増え続けるトラフィックに対し、キャパシティーの大きな5Gエリアの拡大も追い付いていなかった。
2023年7月ごろには東京都内の主要なターミナル駅付近で周波数分散や基地局ごとのカバー範囲の見直し、5Gエリアを拡大することで一定の改善効果は得られていたものの、トラフィックの増加と対策がいたちごっこになっていた感もある。2023年10月には、全国2000カ所の“点”や、鉄道動線などの“線”で品質を改善することを発表。2023年末に、その90%を完了する見込みを明かしていた。2日に開催された記者会見は、その答え合わせの場となった。
では、通信品質は実際、どの程度改善されたのか。ドコモの発表とともに、そこから見えてきた今後の課題も確認していきたい。
2023年4月ごろから通信品質の改善を進めてきたドコモだが、当初からその場所を約2000カ所と特定。10月の発表時には、その7割に対策を施していた。トラフィックが集中する場所での周波数分散を進めるというのが、その1つ。これは、800MHz帯などのカバー範囲が広いプラチナバンドに通信が集中するのを防ぐためだ。場所によっては、混雑が激しい場所では複数の周波数帯を束ねて高速化するキャリアアグリゲーションも、あえて解除するといった対策を取ってきた。
また、基地局ごとの負荷を平準化させるため、アンテナの角度や電波の出力を調整、電波の指向性も変更して、エリアをチューニングしている。これらはあくまで対症療法と呼べる措置だが、トラフィックが不足する場所に関しては、5Gや4Gの基地局を増設して、根本的に容量を増やしている。実際、東京都の渋谷駅近辺では、新たに5Gの基地局が設置され、5Gを単独で利用する5G SAも導入。スループットを大幅に改善した実績がある。
2023年末までに2000カ所の9割を対策するとしていたドコモだが、実際はどうだったのか。同社の常務執行役員 ネットワーク本部長の小林宏氏は、「12月の計画を若干超える進捗」と語る。目標値を超えたのは、数十カ所。「設備対応が短期間では難しいと考えていたところで、期間中にできた場所がある」(同)というのが、上積みの理由だ。実数にすると、1800カ所を超えるエリアの対策が終わった格好だ。
残る1割弱は、新規基地局の「設置対応が必要になるので、長期化すると考えていた」(同)。都市部における基地局は、ビルや電柱などに設置することが多く、地権者やビルオーナーとの交渉が必要になる。耐荷重などの制限もあり、ドコモの一存では設置できない場合もある。こうしたエリアに関しては、「引き続き設置場所のオーナーなどとの調整しながら、速やかに対応していきたい」(同)というのがドコモの方針だ。
9割の対応を終えたことで、平均スループットも一定程度向上したという。実際、最も混雑した時間帯でも、改善を施した場所に関しては1.7倍ほど速度が向上したという。また、東京都内だけでなく、大阪府の大阪駅や愛知県の名古屋駅でも、アンテナの位置変更や5Gの増設、エリアチューニングなどを行い、スループットが向上したという。例えば、大阪駅では最繁時でも5Gで70Mbps以上、名古屋駅では30Mbps以上の速度が出ているという。
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