今や老若男女を問わず、愛されるようになったアニメーション。「日本のアニメーションは世界にも受け入れられている」と言われることもあるが、ビジネスとして健全な成功を収められている作品は決して多くない。この連載では現在のアニメビジネスについてデータをもとに分析し、持続可能なあるべき姿を探っていく。
2011年に刊行した拙著『もっとわかるアニメビジネス』で「2006年以降パッケージ売上が小傾向にある中(ただし、2008〜2011年にかけての4年間はほぼ横ばい)、ファーストウィンドウから収益が上がる劇場アニメが有望な市場となるであろう」と述べたが、今年の状況を見るとやはりその現象が如実に出つつあるようだ。
今年はジブリ作品がないが、秋から冬にかけて有力作品が次々と登場し、今までにない熱いシーズンとなりそうなので、今回はその辺りの事情について述べてみたい。
映画興行シーズンを繁忙時期に沿って大きく3つに分けてみたい。1つは3〜5月の春休みからゴールデンウイークにかけて。次が7〜9月の夏休みとシルバーウイーク。そして、10月から始まるかつて映画業界が提唱したところのシルバーウイーク(文化の日を中心とした10〜11月の連休)から12月の年末までのシーズンである。観客動員を見込めるこの3つのシーズンが映画興行にとってポイントとなっているのだが、アニメに限って言えば10〜12月シーズンが弱いという状態が続いている。
次図は過去5年のその3シーズンにおける劇場アニメの興行収入をまとめたものである。見て分かる通り、春は一貫して安定基調、夏は年によって上振れするものの安定している。秋冬は低調といった感じだ。なぜ春が安定しているかというと3月に『ドラえもん』『プリキュア』、4月に『コナン』『クレヨンしんちゃん』という「鉄板作品」が毎年投入されているからである。
一方、夏はテレビアニメの劇場版としては一番の興行収入を誇る『ポケモン』と、例年10億円前後の安定した興行収入を上げる『NARUTO』があり、そこにジブリ作品(2008年『崖の上のポニョ』、2010年『借りぐらしのアリエッティ』)があると一気に跳ね上がるといった状況なのである。
秋冬シーズンについてはここ数年、年末の『イナズマイレブン』劇場版が定着しつつあるものの、春夏並みの興行収入を上げるテレビアニメの劇場版がないため安定していない。2009年が例外的に高いのは、12月に『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』が公開されて大ヒットしたためであり、2011年に50億円を突破したのは12月に『映画 けいおん!』(16億8000万円)と『friends もののけ島のナキ』(15億円)があったからだ。このように10〜12月のシーズンは年末の正月作品がヒットしない限り低調に終わるというのが常態となっている。
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