盛り上がるWebメールに対し、今ひとつ話題性に欠けるクライアント型のメールソフト。Thunderbird2は、Gmailライクな機能を搭載し、オフラインでもGmail宛のメールを読めるよう工夫した。
自分がどんなメールソフトを使っているか、意識したことはあるだろうか? Webブラウザのシェアに対する関心の高さに比べ、話題に挙がらることの少ないメールソフト。そんな中、オープンソースのメールソフト「Thunderbird」がメジャーバージョンアップを果たし、3月末に全世界で正式リリースされる。
「ThunderbirdはFirefoxの兄弟分。影が薄いというか、Firefoxのように派手な形ではないが、メールソフトの分野では有償ソフトにひけを取らないクオリティ、セキュリティを持っているプロジェクトだ」と、Mozilla Japanの瀧田佐登子代表理事は話す。
確かにInternet Explorerのライバルとして、利用者が急増しているWebブラウザのFirefoxに比べ、Thunderbirdの立ち位置は微妙だ。メールソフトの国内シェアに関する各社の調査によると、マイクロソフトのOutlook ExpressとOutlookを合わせると8割近いシェアに達すると見られており、残りを有償のメールソフトやThunderbirdなどが分け合っている状況。Mozilla Japanでも「Thunderbirdの利用者は全世界で1000万人以上」というに留まる。
マイクロソフトの寡占状態にあるメールソフトだが、その理由の1つは「メールソフトを開発してきて、メールの技術部分はある程度行き着いている」(瀧田氏)ことだ。Webブラウザに比べても、メールの基礎技術には大きな変化が少なく、どんなメールソフトを使っても機能面で大差がないのが現状だ。それぞれのメールソフトには熱烈な愛好者はいるものの、Firefoxのような大きな流れにはなりきれていない。
もちろん、ここ数年は、スパムフィルタ機能、フィッシングメール対策機能のニーズが増加している。Thunderbirdは「スパムフィルタを搭載したメールソフト」としばしば評されるように、スパムやフィッシングメールへの対策が評価されているのも事実だ。しかし本当のライバルは、今やOutlookなどのクライアントメールソフトではなくなってきている。実はGmailなどに代表されるWebメールがライバルだ。
「Outlook、Outlook ExpressやグループウェアがThunderbirdのコンペティター。しかしメールソフトのメーカーも勢いがない。Webメールの存在が大きくなってきている」(瀧田氏)
今回、Thunderbird2が最も意識したのはWebメール。特にGmailだろう。新機能を見ると、ユーザーインタフェース周りの強化がほとんど。しかも、「メールにタグを付けられる」「メールを見た順番に戻ったり、進んだりできる」といった、Webサービスで頻繁に使われる機能や、Webブラウザの操作体系を取り込んでいることが分かる。
「タグは、動画や写真の共有サイト、ソーシャルブックマークで使われている。それを取り入れた。Thunderbirdにはもともとラベルという機能があって5つまでキーワードを付けることができたが、今回、数の制限を取り払い、複数のタグ付けを可能にした」(Mozilla Japanの吉野公平氏)
Webメールで大規模にタグ機能を取り入れたのはGoogleの「Gmail」が有名。Gmailではタグではなくラベルという表現を用いているが、メールを管理するユーザーインタフェースとしては発想は同じだ。Thunderbird2では、タグと検索フォルダ機能を使うことで、Gmailと同様のメール管理が可能になったともいえる。
Mozilla Japanの資料でも、「フラグという用語をスターに変更したり、返信メッセージを返信元メッセージと同じフォルダにスレッドとして保存するオプションを追加するなど、Gmailの操作性を一部取り入れました」とうたっている。
Webメールサービスとの連携機能も盛り込んだ。Gmailと「.Mac」のメールアカウントを、名前とメールアドレスを入力するだけでThunderbirdに登録できる。ほかのメールソフトでもGmailの読み書きは可能だが、ポート番号など細かな設定項目が多く面倒なのがネックだった。Webメールを簡単に登録できるようにしたことで、「Webメールであっても、オンラインとオフラインの両方でメールを利用できる」と吉野氏は話す。
各種Webメールが盛り上がる中、“Web的”機能を取り込むことでThunderbirdは独自の立ち位置を築くことができるかどうか。メールソフトの動向に注目したい。
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